ウザくて、かわいくて、SUGOI DEKAI! 「宇崎ちゃんは遊びたい!」(原作/アニメ)は、マイペースで一人の時間が好きな桜井真一(さくらい・しんいち)と、彼にまとわりついてくるキュートだけどちょっとウザめの後輩・宇崎 花(うざき・はな)の、ニヤニヤな距離感を楽しめるキャンパスコメディーです。
夏といえば海回! 6話では大学生たちの明るく健全極まりないサマーライフが描かれます。桜井と宇崎ちゃんだとなんの間違いもなさそうなのが、いいのかわるいのか。
宇崎ちゃんのアルバイト
桜井が宇崎ちゃんの攻撃から離れ、静かに心落ち着けて働くことができた喫茶店。そこに宇崎ちゃんがバイトにやってきました。安寧の場所、崩壊。宇崎ちゃんは桜井にいたずらする気まんまん、彼女を採用したマスターと亜実の親子は、二人のわちゃわちゃを見るのが好きなので満足。桜井だけ不満が募ります。
桜井をおちょくるために宇崎ちゃんと亜実さん(マスターもか?)がこっそり手を組んでいたのは、さすがに「なんだそりゃ!」以外のツッコミが出ない。桜井と宇崎ちゃんの関係の進展に興味津々なマスター親子。基本動くのが宇崎ちゃん側なので、どうしても手を貸すのは彼女の方になってしまいます。
なんせ、今回の宇崎ちゃんの動機を聞いたら、採用しない手はない。
宇崎ちゃんがバイトを始めたのはお金を稼ぐためではあるんですが、その前に「まあ先輩の嫌がる顔が見たくて来たというのもありますが」としれっと語ります。
桜井からしたら嫌みに聞こえるかもしれない。しかしこんなの、他の人からしたらノロケにしか聞こえません。要約したら「先輩がいるから来た」わけで、そんなん雇いますよ、雇ったら「嫌がらせる宇崎・嫌がる桜井」の追いかけっこを見られるの確定。二人を見ながらご飯何杯でも食べれちゃう。
宇崎「じゃあ先輩! 私と海に行きましょう! もしくはプール!」
こういうことをなんのためらいもなく言えてしまうから、宇崎ちゃんは強い。水着デートじゃないですか。それは付き合っていたとしてもハードルがなかなか高いじゃないですか。「私と」って発言がキラーワードすぎませんか。
でも宇崎ちゃんのこの発言、恋愛要素ゼロだったりします。彼女はアニメ一話で出てきたように、桜井を構うのはぼっちだとかわいそうだからです。あくまでも自分が桜井をリード「してあげている」というスタンスは、ずっと変わっていません。今回の海行きも、桜井を引きこもらせないための施策としてあげた案。そもそも二人とも高校時代は水泳部でした。
こういうときの桜井はことごとく鈍感。元水泳部として身体を動かしてない、とツッコまれてすぐに行く気になりました。第三者から聞いたら完全にデートのお誘いでしかないこともあり、マスター、亜実、そして桜井の友人榊(正確には木へんに神)が注目してしまうのも無理はない。5話に続き、桜井・宇崎ちゃんの行方見守り合戦が始まります。
恐怖、海の天然男
海だ! 水着だ! SUGOI DEKAI! 普段はぶかぶかな服を着ている宇崎ちゃん、さすがに水着になると、SUGOI DEKAIが兵器なのが分かってしまう。でもそんなにスケベじゃなくて、健康的な描き方だったと思います。
そして予想通り、宇崎ちゃんに対してのラブコメおなじみラッキースケベイベントが桜井に発動します。家電量販店のときといい、宇崎ちゃんに対してのみイベントが発生するのが桜井という男。そして最後までラッキースケベイベントだと分からないのが桜井という男。宇崎ちゃんもまれ損。
海には結局、亜実と榊もついてくることになりました。桜井も宇崎ちゃんも、別に二人きりで行きたかったわけではないので普通に大喜び。亜実としては「二人きりにさせるべき」という思想だったようですが、榊いわく「安心して送り出せます? 二人だけで行かせて後悔ありませんか?」とのこと。過保護でありつつ、見届けたい気持ちもありつつ。傍観者組もいろいろ考えているようです。
もっとも榊の発言は、宇崎ちゃんのこのカットで実証されてしまっています。桜井は海で身体を動かしたらテンションがあがってしまって一人でガチ泳ぎ。宇崎ちゃんは遊びの準備に夢中で周囲を全く見ていない。気が付けば宇崎ちゃんの周りには、男たちの視線が。SUGOI DEKAIが目を引くのはまあ仕方ないとはいえ、この囲まれている構図、狼の群れに放たれた子羊のようで危険すぎる。あまりにもこの二人、安心して送り出せない。
周りを客観的に見られていない、時々視野狭窄(きょうさく)になりがちな宇崎ちゃんですが、彼女は桜井のことしか見ていないのでまだ安心。問題は天然をこじらせた桜井のほうです。
桜井に、女の子に対して男は海でどうあるべきかを説いた亜実。桜井はそれをうのみにして、亜実をくしくも口説いてしまう形になりました。もちろん口説く気はないですが、勘違いしかねない。
桜井は無自覚天然たらし。宇崎ちゃんにもたらし行動を取ることがありますが、それと同じことを無関係な人に、考えずにやってしまいがち。ここはある程度自分を客観視してブレーキを踏む努力をしてほしいところではあるものの、それでも実際は桜井が宇崎ちゃんだけを無自覚に見ているのが、次の肝試しの話で分かります。
余計なお世話なのは分かってますけど
夜、榊の発案で行われた肝試し。発案理由は宇崎ちゃんが桜井を頼るんじゃないかとイメージしたからです。ところが桜井が怖いのが苦手で、宇崎ちゃんは平気。逆でした。桜井、かわいい。
気になるのは榊の方です。今回彼が海に来た様子を見ていると、ほぼボランティア状態で桜井と宇崎ちゃんのフォロー行動にまわっています。その割に二人にちょっかいをかけるわけでもない。
このあたりは前回の亜実との言い争いと、桜井への思いが入り交じって、少しだけ榊は空回りしています。
榊は桜井の友人で、以前は宇崎ちゃんとの間に自らが介入して、くっつける気満々でした。しかし亜実は榊の介入に大反対。放っておいても二人はうまくやるのだから、見守るだけにするべきだと訴え、5話ではこの問題で二人はもめてしまいました。
今回榊は、亜実の忠告を受け入れつつ自分の意志も混ぜた結果、「手は出さない」「状況だけ用意する」という手段を取りました。海に4人で行くこと、スイカ割りなどの準備、自身の別荘に招待、バーベキュー、肝試し。ぶっちゃけ今回、桜井・亜実・宇崎ちゃんは榊に乗っかるだけで何もかも準備してもらっている状態です。
榊「でもあいつらは ことごとく予想外の動きするんですよね…上手くいかないもんですね」
桜井と宇崎ちゃんは、二人でいるとミラクルなくらいうまくいきます。亜実やマスターが距離を置いて見守っているのは、そこを理解してミラクル自体を楽しんでいるから。榊が友人の立場として、なにかしてあげたいというのは大いに分かります。でもおぜん立てしても、ことごとく予想外の動きをする。二人の不思議なきずなには、既に外部の影響が入り込めなくなっています。
榊「サクはいい奴なんだけど クソ真面目で不器用で友達作るのが下手で 独り好きときてる サクからしたら余計なお世話なのはわかってますけど」余計なお世話だと分かっていたようです。二人のため、というよりも、桜井に大学生活を楽しく送ってほしい、だから宇崎ちゃんといい仲になってほしい、という桜井を優先する考え方。ここも亜実と決定的に違います。
あまりにも榊が桜井のことを好きすぎるのですが、問題は「あとはまあ…いろいろです」という一言。榊のまだ明かされない謎の部分が出てきます。
思いやりのあるいい人ムーブと、自身の興味で動くゲスムーブが入り交じる彼、物語のスパイスとして今後もいい立ち回りをしてくれるはずです。
ところで宇崎ちゃんと桜井はというと、アニメでは原作以上のミラクルを起こしていました(原作では手をつないで帰るところまでです)。ソファで寝ていた桜井に、宇崎ちゃんがいたずらをしようと近づいたところ、寝ぼけた桜井が宇崎ちゃんをギュッと抱きしめてしまう! 宇崎ちゃんのSUGOI DEKAIに顔を押し付ける!
別にセクシャルな目的ではなく、子供が甘えているような状態。怖がらせた負い目もあって、宇崎ちゃんも「…今日だけ今日だけ…」と桜井の頭を優しくなでます。
こんな展開、榊も亜実もしていないはず。これが桜井・宇崎ちゃんペアの魔力。はたから見ると「もう付き合っている」と感じてしまう二人ですが、この様子を見ていると「付き合っている」という単語では表せない、特別な関係性を感じてしまいます。それがこの「宇崎ちゃんは遊びたい!」という作品の、繊細な魅力です。
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