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スーパーファミコンの「らんま1/2 爆烈乱闘篇」はキャラクターもの格闘ゲームの一つの完成形だ、という話今日書きたいことはこれくらい

EVO Japan 2018のサイドトーナメントの種目に選ばれて話題になったりもしました。

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 みなさん、高橋留美子先生の漫画、好きですか? 私はとっても好きです。

 古くは『うる星やつら』や『めぞん一刻』、新しくは『境界のRINNE』や『MAO』まで、40年以上に渡ってヒット作を生み出し続けている高橋留美子先生、本当にものすごいですよね。

 1作ヒットを生み出すだけでも至難の業、2作ヒットを生み出せば大御所と呼ばれてもおかしくない漫画業界で、何かの冗談かと思うような人気漫画の作品数を誇る高橋留美子先生が、大御所を通り越してもはやS級漫画妖怪の領域に踏み込んでいることは間違いないといえるでしょう。うる星やつらとか、今読んでも「この漫画力(まんがぢから)は一体何を食べたら身につけることができるんだ……!? 人魚の肉か……!?」と戦慄(せんりつ)するほど面白いです。


ライター:しんざき

しんざき プロフィール

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ、三児の父。ダライアス外伝をこよなく愛する横シューターであり、今でも度々鯨ルートに挑んではシャコのばらまき弾にブチ切れている。好きなイーアルカンフーの敵キャラはタオ。

Twitter:@shinzaki



 ちなみに私自身は、るーみっく作品の中でも『1ポンドの福音』が特に好きです。シスターアンジェラかわいい。あと人魚シリーズはマジで名作しかない。湧太と真魚のコンビ大好き。

 さて、ここに『らんま1/2』という漫画があります。

 「水をかぶると女になるが、お湯をかぶると男に戻る」という極めてお手軽な性転換属性をもたされた主人公の早乙女乱馬が、女になったり男に戻ったり、居候先である天道家の三女天道あかねとケンカしたり恋愛模様を織り上げたりしつつ、周囲も巻き込んでさまざまな騒動を展開する格闘恋愛ドタバタコメディー。

 超面白いですよね、『らんま1/2』。しんざきが一番好きなエピソードは格闘ディナー編で、一方個人的な推しキャラは雲竜あかりさんです。




 私、高橋留美子先生の最大の武器って「恐ろしいほどのキャラクター造形力」だと思っていまして。

 るーみっく世界に出てくるキャラクターって、主人公からサブキャラ、下手をするとその辺のモブキャラに至るまで、とにかくどのキャラも「キャラ立ち」しまくっているんですよ。「独自の立ち位置」を持っていないキャラが、本当にほとんどいないんです。

 細部まで特徴づけがちゃんとなされていて、しかもキャラクターの行動も丁寧にその特徴づけにのっとって描写されているんで、一見目立たないキャラでもきちんと作中世界の大事な一員になっている。奇想天外な設定のキャラも山ほど出てきて、一見ごちゃごちゃしているように見えるのに、全体通してみるときちんと世界観が統一されていて、『らんま』界の大切な構成員として違和感なくまとまっている。

 乱馬やあかね、天道家や早乙女家の面々や、シャンプーや右京のようなサブヒロインたちは言うに及ばず、良牙や九能やムースのようなライバルキャラ、五寸釘や八宝菜やコロンや校長のようなサブキャラ、雲竜あかりや東風先生のような準レギュラーキャラまで、一人残らず全員が「その人にしか出来ない役割」を持っているんですよね。『らんま1/2』世界の中で、きちんと独自の立ち位置を占めていて代わりがいない。

 これだけキャラクター数がいるのに全くごちゃごちゃせず、きちんとキャラクターの役柄や特徴を描写し分けるの、本当人間技じゃないと思います。高橋留美子先生ものすっごい。


ゲーム化に恵まれていた『らんま1/2』

 漫画のゲーム化の話をします。

 今更いちいち言うまでもなく、漫画とゲームというのは非常に相性が良いカルチャー同士でして、ゲーム化された漫画というのは無数にありますし、名作良作奇作怪作とバリエーション豊富です。ゲーム化に恵まれた作品もあれば、いまいちゲームと相性が良くなかったかなあ……という漫画シリーズもあります。

 あくまで個人的な印象として、週刊少年サンデーの漫画作品はジャンプほどにはゲーム化に恵まれていないような気もするのですが、それでもるーみっく作品はもちろん数々ゲーム化されております。

 例えば、PC-88やPCエンジン、ファミコンなど数々のプラットフォームで発売された、「めぞん一刻 〜想いでのフォトグラフ〜」。アドベンチャーゲームというジャンルと漫画作品の相性の良さを示した良作でした。

 例えば、「モモコ120%」のキャラを乗せ換え、どたばたアクションテイストに仕上げられた「うる星やつら ラムのウエディングベル」。うる星はゲームボーイやメガCDなんかでもゲーム化されてましたよね。

 そんな中でも、恐らく『犬夜叉』と並んで、『らんま1/2』はゲーム化に恵まれた漫画作品です。SFCを中心に、メガCDやらPCエンジンやら、RPGやら格闘ゲームやらアドベンチャーやら、『らんま』はいろんなプラットフォーム、いろんなジャンルでゲーム化されました。「とらわれの花嫁」のオープニングのアニメーションめちゃ好き。


動画が取得できませんでした

 で。

 そんな数ある「らんまゲー」の中でも、私が特に偏愛していて、今回の記事で激推ししたいと考えているのが、SFCの格ゲーシリーズの第2作目、「らんま1/2 爆烈乱闘篇」だ、という話なのです。


らんま1/2 爆烈乱闘篇 らんま1/2 爆烈乱闘篇(画像は駿河屋サイトより)

らんま1/2 爆烈乱闘篇

『らんま』の格ゲー化として完璧だった「爆烈乱闘篇」

 「らんま1/2 爆烈乱闘篇」。格闘ゲーム。1992年12月、メサイヤより発売。

 SFCのらんま格ゲーシリーズは3作ありまして、「町内激闘篇」「超技乱舞篇」に挟まれた2作目が「爆裂乱闘篇」です。EVO Japan 2018でサイドトーナメントの種目に選ばれて話題になったりしました(4Gamerのレポート)。

 メサイヤというメーカーは良作しか作らないことで俺の中で有名でして、特に「重装機兵ヴァルケン」は常識では考えられないほどの名作ロボットゲーなんですが、らんま格ゲーシリーズもすごーく出来がいいんですよ。とにかく操作しやすいし、しかもキャラクターを動かしていて気持ちいい。

 1992年っていうと、「ストII」が出た1991年の翌年でして、ゲーセンでは「ストII'」や「龍虎の拳」「餓狼伝説2」なんかが姿を見せて、対戦が大盛り上がりし始めていたころです。もともとが「格闘コメディー」だったらんまが、格闘ゲームとしてゲーム化されるのはごく自然な流れだったと言っていいでしょう。

 とはいえ1作目の「町内激闘篇」は、まだキーコンフィグができなかったりしまして、若干遊びにくい部分もないではなかったんですが(ガードがキー操作でしか出来なかったりとか)、「爆裂乱闘篇」はまさに正当進化、遊びにくい部分を全て廃して、「らんま格ゲーの決定版」と言っていい、素晴らしいゲームに仕上がっていました。

 「爆烈乱闘篇」のすごいところって、まず何よりも「キャラクターのグラフィックや動きがものすごく『らしい』こと」だと思うんです。アニメや漫画のるーみっく世界を、ゲーム内で実に的確に捉えている。

 例えばこれ「爆烈乱闘篇」のゲーム画面なんですけど。


らんま1/2 爆烈乱闘篇

 プラットフォームはスーパーファミコン。当時はまだまだハード進化の過程だったとはいえ、立ち姿から動きから、グラフィックがちゃんと「らんま」キャラクターにマッチしていて、まさに「漫画の中に入ってキャラクターを動かしている」気分にさせてくれるんですよね。あかねの勝ちポーズとかもうめちゃかわいいですし。


らんま1/2 爆烈乱闘篇

 ダメージを受けてるときなんかも、「あーこのキャラこういう顔する!」「漫画でもこういうコミカルな場面あった!」というのが、一枚一枚本当に丁寧に描かれている。再現度激高。


らんま1/2 爆烈乱闘篇

 歩いているときの姿から立ち姿、勝利ポーズや必殺技のポーズまで、何から何まで『らんま』世界観にきちんと統一されているんです。ゲームを遊んでいるだけで、『らんま』世界が体験できる。これ作った人絶対『らんま』めっちゃ読み込んでる……! って思いましたよ、当時。

 キャラゲーを遊ぶプレイヤーって、もちろんその作品のファンですから、なにより「その作品のキャラを実際に動かしてる感」ってすごーーーく大事なんですよね。作品内に入ったつもりになれると、ゲームの楽しさが一気にどかーんと上がる。テクモの「キャプテン翼」しかり、ナムコの「幽遊白書」しかり。

 その点、まず「爆裂乱闘篇」は、「格闘ゲーム」という忙しいプラットフォームでありながら、きちんとプレイヤーを「漫画の中に入れてくれる」という点で完璧な出来でした。

 しかも、ただ「漫画やアニメそのまんま」というだけではなく、格闘ゲームとしてきちんと気持ちいいし、すっごくよく考えて作られているんです。

 攻撃を相手に当てたときの手応え。技の判定、リスクとリターンのバランス。連続技や投げ受け身の存在。キャラクターそれぞれの格ゲーキャラとしての個性付け。

 例えば、遠距離からけん制主体で動ける右京とか、突進技と対空を兼ね備えたあかねとか、二段ジャンプで攻められるシャンプーとか、投げキャラの玄馬とか。

 「誰を選ぶか」によって求められる動きが全然違って、キャラごとの戦略もあるし、それによってちゃんと駆け引きや相性が発生するんです。

 さらに、「ちゃんと通常技での差し合いがある」という点も特筆すべき点かなーと思っていまして、派手で漫画的な技以外にも、大攻撃と小攻撃を組み合わせた普段の差し合いで間合いを測りつつダメージを稼いでいくのも非常に重要で、かつここでもちゃんとキャラごとの有利不利があり、メリハリがあります。

 この辺、純粋に格闘ゲームとして見ても十分完成度高くて、EVOに選ばれるのも納得いくわーと思う他ないんですが。

 「爆裂乱闘篇」の開発スタッフであるありがひとしさん@ariga_megamix)はTwitterをなさっていて、「爆裂乱闘篇」の開発についてのお話をされています。例えば操作系についても、


操作系はシンプルにこだわる
攻撃を大攻撃、小攻撃にまとめる
必殺技は複雑なコマンドにせず、同時推し、連打、タメ→解放
これを全キャラ共通とする
防御も上下防御にしないでひとつに
ボタンコンフィグでカスタマイズ可能
投げられても受け身が取れる
等々…


 このようにおっしゃっていまして。当時既に「必殺技を出せるか出せないか」で結構な格差が発生していたところ、誰にでも遊びやすく操作系設定されたのって、本当に慧眼(けいがん)だと思うんですよ。遊びやすくて、入り込みやすい。

 キャラゲーの一義的な役割が「その漫画の中に入った気分になる」ことであり、漫画ファンの中には十分ゲームに習熟していない人も多い以上、キャラゲーにおいて「ストレスなく遊べる」ってめちゃくちゃ重要なんです。

 漫画ファンの少年少女たちが、操作系で苦労することなく、ごく簡単にゲームに入り込み、漫画さながらの動きを再現させることができる。漫画のファン層にマッチした、素晴らしいバランシングだと思う次第なんです。


五寸釘と博打王キングを選ぶ「キャラ選びの妙」

 ところで。

 私が爆裂乱闘篇を激推ししている理由のもう一つは、ずばり「キャラ選び」にあります。

 爆裂乱闘篇の登場キャラは、通常10キャラ、隠しで3キャラです。これ自体結構なボリュームだと思うんですが、


らんま1/2 爆烈乱闘篇

 これ。このゲーム、乱馬や良牙、シャンプーやムースといった如何にも「格闘向き」のキャラ以外に、「そうくるか」というキャラが含まれているんです。

 そう、まずなによりも、五寸釘博打王キング。これ。この2人のチョイスが素晴らしい。

 上記、ありがひとしさんはTwitterで、五寸釘については「誰がどう見ても弱いキャラが必要と思った」、キングについては「五寸釘と同じ感じの立ち位置&玄人好みっぽいキャラが欲しかった」とおっしゃっていますが、それでもこの2人の起用ってものすごい発想だと思うんですよ。

 だって原作『らんま1/2』で、あれだけ格闘が繰り広げられているのに、この2人ってそもそも格闘キャラじゃないですよ? 五寸釘は1回、通販で「着ただけで強くなる」ヨロイを着てらんまと決闘したことがありましたが、それ以外は基本陰でこそこそ暗躍しているキャラですし。キングに至っては、格ゲーで使えそうな動きをジョーカーシャワーくらいしかしていない、完全に非格闘キャラです。そもそも格闘キャラとしての情報がほとんど存在しないんです。

 なのに、この爆裂乱闘篇で出てくるこの2人、他のキャラと同等かそれ以上に、動きが「らしい」んです。「ああ、確かに、こいつらが作中で戦うとしたらこう動くよな……」という動きしかしない。五寸釘の逃げながらの後ろ蹴りとか、キングの点棒アローとか、ちゃんと『らんま』世界の中に落とし込まれている。


らんま1/2 爆烈乱闘篇

 これが、まさに高橋留美子先生の「サブキャラでもきちんと立っている」というキャラクター造形そのまんまのように思えまして、当時本当に「こんなヤツらまで動かせるのかよ……!!」と感動した、という話なんです。

 つまり爆裂乱闘篇は、ただ「キャラゲーとしての再現度が高い」というだけの話ではなく、ある面では「元のるーみっく世界を広げてさえいる」。このタイトルが、キャラゲーとして特筆すべき完成度を誇っているゆえんとして、そういう部分もあると私は考えているわけなんです。

 ちなみに、今回私自身ありがひとしさんにお声をかけてみたら気さくにお答えいただきまして、当時検討された他の候補についても教えていただきました。


30年近く前なので段々記憶が曖昧になってきてますが
他候補には中華まんたち(4人組の)がいた気がします
容量の都合だったり、プレイヤーが使えるかどうか諸々考えて候補から外れたかと
容量で言えば道場破りも諦めたキャラでしたね…


 中華まん4人組って「龍の髭(毛生え薬)」の争奪戦で出てきたヤツですよね。あれを格ゲーで動かすのはすごく難しそう……けど見てみたい気もする……。ちなみに道場破りは、没キャラとはいえ動きもいろいろとあって大変面白そう。上記引用ツイートでスケッチも参照出来ますね。

 私が、「キャラクターのバランスがとれていればゲームが面白いというわけでもないんだ」ということを知ったのも、一つにはこの「爆裂乱闘篇」の影響が大きかったかも知れません。「明確に弱い」五寸釘の存在。一方、「明確に強い」隠しキャラのパンスト太郎や八宝菜の存在と、それを使って友達とわいわい遊ぶ楽しさ。腕も違えば作品に対する思い入れも違うけれど、でも一緒に楽しく遊べる。

 「爆裂乱闘篇」の楽しさって、そういうところにもあったんじゃないかなーと思う次第です。


まとめ

 長々と書いて参りました。

 最後に簡単に私が書きたかったことを簡単にまとめますと、

  • 高橋留美子先生の漫画力はS級妖怪なみ
  • 遊びやすくて、しかも格ゲーとしてもちゃんと作り込まれている爆裂乱闘篇は「キャラクター格闘ゲーム」としての一つの完成形
  • 五寸釘と博打王キングがちゃんと格ゲーキャラとして『らんま』世界的な動きしてるの本当にすごい
  • 右京役の鶴ひろみさんが亡くなってしまわれたのすごく悲しい……
  • 全然関係ないけど雲竜あかりさんがかわいい
  • 未読の方はぜひ今からでも『らんま』読みましょう面白いです

 以上です。よろしくお願いします。

 今日書きたいことはこれくらいです。


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