ウザくて、かわいくて、SUGOI DEKAI! 「宇崎ちゃんは遊びたい!」(原作/アニメ)は、マイペースで一人の時間が好きな桜井真一(さくらい・しんいち)と、彼にまとわりついてくるキュートだけどちょっとウザめの後輩、宇崎 花(うざき・はな)の、ニヤニヤな距離感を楽しめるキャンパスコメディーです。
9話では宇崎ちゃんのお母さん初登場。宇崎ちゃんとは全く異なる性格なれども、ある意味この作品らしい、もっと言えばこの作品でもっともセンシティブ思考で萌えキャラポイントの高いママさん。とってもキュートなアラフォーの登場です。
妄想暴走宇崎ママ
宇崎ちゃんのお母さん、宇崎 月(うざき・つき)が今回から登場するのですが、年齢43歳にしてこの若さ! 25歳年下の青年と付き合う女性のドラマを見て月さんがドキドキするシーンがあるのですが、月さんなら全然ありむしろ月さんでお願いしますという感じじゃないですかね、20代前後の男子なら。
中身も割とピュア少女っぽい性格の月さん。桜井の目つきが怖いからとおびえちゃって、その上宇崎ちゃんの「玄関で立ち話なんかしてないで、上ってくださいよ」という一般的友人の発言に対してモノローグで「ええ〜上げちゃうの?」と言ってしまうほど。このへんのナチュラルに失礼な幼さは、娘に引き継がれている気がします。あと低い身長とSUGOI DEKAIも。
それでいてちゃんと「お母さん」している描写が入っているさじ加減がうまい。宇崎ちゃんが桜井の家に転がり込んで泊まっていた話(7話で泥酔して桜井の家にあがりこみ、布団に吐いた件)を問い詰めたとき、娘の素行から推測してちゃんと察しつつ、バランスのいい注意をしています。「花にとって桜井君は、いい先輩であり、いい友人なのね」「一見怖そうだけど、真面目そうな子で良かったわ…心配し過ぎね」
朗らかでフワフワしつつも、娘のことを心配しつつ、それでいて理解もあり、信じて自由を与えている。とてもいい母親だと思います。ここまでは。
問題は、誤解と妄想の度が過ぎていること。猫好きの桜井は月さんの抱いていた猫をじーっと見つめるのですが、何を勘違いしたのか月さん、自分の胸を凝視されていると勘違い。そこからまたたく間に変なフラグが立ってしまいます。
序盤はセクシーなネタもちょいちょい入っていたこの作品ですが、全体的には割と健全めで無邪気。際どいネタはそんなにない、と思います。SUGOI DEKAIを手でもむハプニング程度。
月さんが出てきてからは、全く色気のない状況なのに勘違いと妄想が働いて色っぽくなる場面がチラホラと出てきます。お母さんが出てくる回は、作中妄想として「期待していい」と言いたい。「宇崎ちゃん」ならではの観察者の一人ではあるのですが、今まで出てきたキャラクターとは視点が全く別の存在です。
なお勘違い内容は、桜井が自分と娘を狙っている、というもの。ハラハラとドキドキとが混じった思考は、やっぱり宇崎ちゃんの母親というべきか。この敏感さ、誰よりも思春期しています。奥さん、お若いですね。
宇崎ちゃんの成長と妄想の肥大化
今までは「宇崎ちゃんから見た桜井」「桜井から見た宇崎ちゃん」「マスター・亜実から見た2人」という視点がメインでした。ここに「母親」が入ってきたことで、桜井と宇崎ちゃんの見え方はまた角度が変わってきます。
今回大きく目立つのは宇崎ちゃんの長所。今まではどうしても桜井視点で「面倒くさい後輩」の面ばかり目立っていました。いや勝手に人が頼んだ唐揚げを全部たべる後輩は、そりゃ面倒に見えても仕方ないんですが。
親に喫茶店に連れてこられた子供は、暇になりがち。そこで宇崎ちゃん、何も言われていないのにスッと子供に近づいて声をかけ、世話をするワンシーンが見られます。これはやすらぎたいお母さんたちにも最高にありがたい。
このシーン、宇崎ちゃんがちゃんと子どもたちの視線の高さにしゃがんでいるのが素晴らしい。大人目線で子どもを「構ってあげている」のではなく、ちゃんと「一緒に遊んでいる」のを体現しています。彼女のキラキラした笑顔も、子どもたちに取っては安心できるものです。
以前桜井はこの喫茶店を「安らぎの場所」と語っていました。一人になって静かに過ごすのが好きな彼にとっての褒め言葉です。今は宇崎ちゃんもバイトに入ったことで、子どもたちやお母さんたちなど、あらゆるニーズの人にとっての安らぎの場所になりつつあります。
亜実「接客業とはつまるところ『お客さんにファンになってもらう』のを理想としてます。ファンなら足しげく通ってくれますからね。その理由になれているのは大きな強みですよ」
宇崎ちゃんも桜井も、客観的にはかなりよくできた子の様子。宇崎ちゃんがバイトをはじめたときはもめましたが、真面目な桜井、フレンドリーな宇崎ちゃん、二人のスタイルは喫茶店のニーズにばっちりのようです。
宇崎ちゃんも女ですから
ところで桜井はお母さん月さんをどう見ていたかというと、さすがに月さんが考えていたような性的な目では見てはいませんが「母親はお淑やかで優しそう」というかなりの高評価です。
これは桜井が「そういう女性が好き」という意味ではありません。売り言葉に買い言葉、宇崎ちゃんが悪辣(あくらつ)な行動と発言で桜井をいじりに来ていたからこその、反撃のセリフです。しかし、宇崎ちゃんの中の「女」を刺激するには十分すぎた。
いわゆる「お淑やかで優しそう」を演じ始める宇崎ちゃん。意外にもこの言動、一切崩れることなく貫き通しています。つまり「できますが?」という威圧。
今まで宇崎ちゃんは割とゴリ押しで桜井に迫っていたのですが、今回は黙っていられず女の武器を出してきました。駆け引きをするのは彼女にしてはかなり珍しい。桜井が言ったときに怒って殴り掛かることもできたのですが、彼女は喫茶店にいるみんなの前(含むお客さん)で、「お淑やか」攻勢に出ます。
ここまで怒っている宇崎ちゃんは、初めてかもしれない。やはり母親と比較された、というところが問題だったのでしょう。あんまりプライドとか表に出さないピュア感のある彼女ですが、今回はオーラ全開です。
一切反撃のできない宇崎ちゃんの珍しい攻めに、桜井完敗。そもそも人を比較すること自体失礼なので、真面目な彼は自らの問題点を理解もできているはず。
にしても、宇崎ちゃんの意外な特技が見えたエピソードでもあります。亜実が彼女の行動を見て新しいサービスのひらめきを得るのも納得。元気な子のおとなしいギャップって、先ほどの「接客業とファン」理論でいうと思いっきりありです。
宇崎ちゃんと桜井の仕事の頑張りが描かれたあとに、即二人のキャラ性を生かしたサービスを考える亜実。以降、暴走に歯止めがきかなくなっていきますが、それは原作でチェックしましょう。
ところで宇崎ちゃんが演技と女の武器を使う器用さを見せた後、不器用極まりない桜井はというと。
ストレートな天然攻撃で宇崎ちゃんを一撃ノックアウトしました。これをマスターと亜実親子の前でやっちゃうんだから、そりゃニヤニヤ見守りたくもなります。
さて、ここまで来ると一つ巨大な命題が浮かびます。桜井は言動全て真っすぐで裏表なし。では宇崎ちゃんは、本当のところどこまで素なんだろう? 今まではっちゃけて鬱陶しさを見せていたように感じられたし、それは間違いなく彼女の一面だけど、酔った時の絡み方とか、抱きつきクセのある桜井が寝ながらしがみついてきた時とか、彼女なりにラインが揺れているようにも見えます。
ここについては、原作では以降で描かれる“ある部分”で、片りんが見えます。
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