軽自動車界のカリスマ、鈴木修語録(前編)(1/2 ページ)
あるときはユーモラスに、あるときは人生訓を。43年間スズキのトップに君臨した軽自動車界のカリスマ、鈴木修氏の取材を通して得た修節・名言まとめをどうぞ。まずは前編です。
「軽自動車界のカリスマ、鈴木修語録(前編)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、6月25日の株主総会で退任が承認された、鈴木修氏について──。(初出:2021年7月9日)
今回はまずクイズです。昨年(2020年)、日本国内で自動車を最も売ったメーカー、これはトヨタ自動車ですが、では2番目、NO.2はどこでしょうか?
ホンダでしょうか、日産でしょうか?……いえいえ、正解はスズキでした。
日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会の集計では、2020年の国内メーカー年間販売台数は、乗用車メーカーではトヨタ自動車が145万4524台、スズキが63万842台、ホンダが61万9132台、ダイハツが59万2346台、日産自動車が46万8544台、マツダが17万7087台、スバルが10万5540台、三菱自動車が7万281台という結果でした。
新型コロナウイルス感染症が拡大するなかでも、スズキは軽自動車やコンパクトカーを中心に、日本人に合ったクルマをつくり続けたということだと思います。そのスズキは、6月25日の株主総会で、鈴木修会長の退任が承認されました。
鈴木修さんは、1930年1月30日生まれの91歳。1978年の社長就任以来、43年にわたり、トップとしてスズキの経営のかじ取りを続けて来ました。
社長就任当時は排出ガス規制の対応の遅れが指摘されていたスズキですが、1979年に47万円という衝撃の価格で軽商用車「アルト」を大ヒットさせ、1993年には「ワゴンR」で背の高い軽の「ハイトワゴン」というジャンルを確立。また、インド市場でも確固たる地位を築き、スズキを年間売上3兆円の企業に押し上げました。
私がスズキの取材を始めたのはかれこれ10年前、東日本大震災の発生直後になります。スズキの決算会見、新車発表会はその決算やクルマの内容もさることながら、修会長が何を言うのか……私は正直、それを楽しみに足を運んでいました。
あるときはユーモラスに、あるときは人生訓を教えられるようなこともありました。今回はそんな数々の発言=「修節」を集め、前編と後編に分けてお伝えして行きます。
なお、鈴木修さん、現在は相談役ですが、小欄ではあえて「修会長」とお呼びします。
日本は贅沢に慣れ過ぎている
「日本の国民生活は、贅沢に慣れ過ぎているのではないか。節電というより、エネルギーに対する生活を切り詰めるということが必要ではないか。テレビだって夜中じゅう必要ではないと思う……」(2011年5月・決算会見)
スズキは前述の通り、いまや年間3兆円を売り上げる企業ですが、修会長は常日頃から自分を「中小企業のオヤジ」と言っていました。その中小企業が生み出す軽自動車はまさに庶民の足です。この発言は、軽自動車の「真髄」を突くものと感じました。メディアには耳の痛い言葉もありましたが……。
辺鄙(へんぴ)なところでお許しいただきたい
新車発表会では、「ツカミのあいさつ」で場を和ませることもしばしばでした。
「会場がいつもと違い、こういう辺鄙なところとは言えないかもしれないが、わかりにくいところで大変恐縮。もたもたしているうちに予約でいっぱいだそうで、ここだけが空いていたということでお許しいただきたい」(2013年12月・新車発表会)
年も押し詰まった発表会場は、都心の貸ホール。やや駅から遠い場所でしたが、「辺鄙」という言葉に場内は爆笑になりました。
話のペースやその表情から、修会長は「好々爺」のイメージですが、怒らせると怖いというのは私ども報道陣にとっても定説で、さまざまな問題に対して毅然と対応したのが修会長でもあります。
負けると思って相撲は取らない
タフ・ネゴシエーターで有名なのは、ドイツのVW=フォルクスワーゲンとの提携問題です。傘下に収めようとするVWに対し、経営の独立性をめぐって頑として譲らず、決着は国際仲裁裁判所の場に持ち込まれました。
「(仲裁の事業への影響は?)皆さんにしょっちゅう取り込まれるよりは、すっきりして経営に専念できるのではないか。(勝算は?)相撲を取るときに、負けると思って相撲取っとるわけはない」(2011年11月・東京モーターショーのプレスブリーフィング後、記者団に対して)
思えば2011年は、八百長問題で相撲界が大揺れに揺れた年でもありました。
モーターショーではスズキのブースの前にVWのブースがありました。両社の提携は4年近く経った2015年、スズキがVWから株式を買い戻すことで決着しました。
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