国内ほとんどの鉄道会社は社名に「鉄」の字を用いています。JR東日本は「東日本旅客鉄道株式会社」、小田急は「小田急電鉄株式会社」、名鉄は「名古屋鉄道株式会社」、近鉄は「近畿日本鉄道株式会社」、西鉄は「西日本鉄道株式会社」。鉄道を運行している会社であることを示す文字ですから、あたり前のことですよね。
しかし、鉄はテツでも旧字体の「鐵」を用いる会社もあります。例えば、SL運行で知られる静岡県の「大井川鐵道」や栃木・群馬県の「真岡鐵道」、ねこ駅長がいる和歌山県の「和歌山電鐵」、滋賀県の「信楽高原鐵道」、千葉県の「小湊鐵道」、群馬県の「わたらせ渓谷鐵道」などがあります。
旧字体は「古い会社で、昔から使い続けているからでしょ」と思うかもしれません。しかし、信楽高原鐵道は1987年設立、和歌山電鐵は2005年設立と、かなり最近にできた会社もあります。
「金を失う」は嫌だ! そんな願いを込めた「鐵」の文字
社名に旧字体の「鐵」を用いる理由、それは「金を失う」と表記する「鉄」の文字を嫌った縁起担ぎとされています。鉄道は「お金を失う道」となってしまいます。
「鐵」を用いる鉄道会社の多くは、国鉄や私鉄の赤字ローカル線を引き継いだ第三セクター鉄道会社。「困難に負けず頑張るぞ」そんな気概がガツンと表れているのです。思わず応援したくなってきます。
JR各社も縁起担ぎで「鉄」を使わない
そんな縁起担ぎの有名どころをもう1つ。試しにJR九州(九州旅客鉄道)のWebサイトにアクセスしてみてください。
左上にある「九州旅客鉄道株式会社」社名ロゴをよく見ると、実は見慣れない漢字を使っています。「鉄」を「金」と「矢」の組み合わせで表しています。
これはJRグループ各社、JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、鉄道総合技術研究所などのロゴも同じ。「金」と「矢」の組み合わせです。これも国鉄から分割民営化し、「金を失う道」を嫌ったがゆえの縁起担ぎとされています。
しかし、なぜかJR四国のWebサイトはそのまま「鉄」です。ハテ。
なお、各社登記上などの表記や文字として記載・入力するときは常用漢字の「鉄」を使いますが、「金」と「矢」のテツも、JIS漢字コードの「第3水準文字」として、JISコード「7D2B」、Shift JISコード「EF4A」、Unicode「9243」で割り当てられています。
筆者はこのことを知った小学生のころ、漢字テストで「金」に「矢」と書いたら見事にバツになりました。漢字テストとしては間違い。でも、「間違いではない」「意味がある」ことを学びました。
新田浩之(にったひろし)
1987年神戸市生まれ。関西大学文学部卒、神戸大学大学院国際文化学研究科修了。主に鉄道と中欧、東欧、ロシアの旅行に関する記事を執筆。2018年からチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」を務める
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