ゲーム機、衣服、トレカ、ライブチケット……あらゆる人気商品に群がる転売業者たち。中には「商品が完売しているのだから小売は損していない」と自らの行いを正当化する転売ヤーも存在します。
そんな詭弁を真っ向から否定するように、家電量販店「ノジマ」が行っている苛烈なまでの転売対策をご存知でしょうか。
「PS5の抽選販売から転売ヤーを1件ずつ目視で排除した」「iPhoneの販売時に電波の使用状況を調査する」。執念じみたものが感じられる取り組みの数々は、たびたびTwitterで話題の種になっています。
なぜノジマは「転売撲滅宣言」を掲げるのか? 転売対策をけん引する担当者に取材しました。
「売らない」判断を現場に任せる、後手に回らない環境づくり
――いつごろから転売対策に力を入れ始めたのでしょうか?
ノジマ 転機は2020年に開始したプレイステーション5の抽選販売でした。PS5は「抽選専売」という珍しい販売形態を取っていたのですが、そのためにシステムを一から構築する必要があり、かねて問題視していた転売への本格的な対策を導入しました。
――「目視で転売ヤーを落選させたから結果発表が遅くなった」あれですね。謝罪のツイートを投稿されていましたが、むしろ「すごい!」「がんばれ!」と応援する反応の方が多かったように見えました。
ノジマ その節はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした……。あのツイートを投稿してから「転売目的だけど買えました!」といったリプライも届くようになり、そのたびに気を引き締めております。
――実店舗での取り組みがTwitterで話題になっている様子もお見掛けします。直近では「購入した商品にマジックペンで名前を書いてもらう」取り組みがTwitterでバズっていました。あれはどのような狙いが?
ノジマ 購入した商品に記名いただく施策は海外への流出を防ぐためのものです。お客様の声などから、名前が記入してあるだけで買取価格が1万円前後下がる場合があるとわかりました。大量購入するような本気の業者はある程度けん制できるのではないかと考えています。
――やはり各店舗にも“転売撲滅”の意識を共有しているのでしょうか。
ノジマ そうですね。むしろ、現場にいるからこそ感じるものもあると思います。私も私服で店舗の調査に赴いた際、人気商品が手に入らず泣いているお子様を店頭でお見掛けし、非常に申し訳ない気持ちになったことを覚えております。すぐにフリマサイトを調べると、メーカー小売価格をはるかにオーバーする金額でその商品が販売されていました……。
密にやりとりを重ねたうえで「怪しい方には販売をお断りする」といった判断は各店舗に任せています。いちいち本部の許可を求めていては、どうしても後手に回ってしまいますから。
――「転売目的だろうと売れればいい」わけではないのですね。
ノジマ 商売としては成立するかもしれませんが、本当に欲しい方が商品を購入できないなどということが許されていいはずがありません。ノジマではこれからも転売対策を続けてまいります。
その結果、抽選に時間がかかるなど、一般のお客様にはご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません。なるべく早くお手元に商品を届けられるようなシステムを構築しておりますので、今しばしお待ちいただけますと幸いです。
転売業者と戦う小売の裏にあるのは、利害を超えた“思い”です。人気商品を「本当に欲しい人」がいるように、それを「本当に届けたい人」がいる。そんなドラマを感じさせるからこそ、ノジマの取り組みは注目を集めるのかもしれません。
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