木次線「奥出雲おろち号」の旅! お供にしたい駅弁は? 松江駅弁・一文字家:松江「島根牛すき焼き煮切り丼」(1230円)(1/2 ページ)
木次線が走る奥出雲は「たたら製鉄」の繁栄とともに出雲の食文化を支えてきた地域。名物列車・奥出雲おろち号でいただきたい駅弁とは……?
【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
島根と広島を結ぶ唯一の鉄道路線となったJR木次線。観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」は人気列車ですが、車両の老朽化により2023年度で運行終了が決まっています。そんな木次線が走る奥出雲は、「たたら製鉄」の繁栄とともに出雲の食文化を支えてきた地域です。出雲にはどんな食文化があり、どのように守っていきたいのか? そして日本の駅弁のこれからは? 松江駅弁・一文字家、景山社長インタビューの完結編です。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第30弾・一文字家編(第6回/全6回)
山陰本線の宍道駅(松江市)と、芸備線の備後落合駅(広島県庄原市)を結ぶ木次線(きすきせん)。人気列車は、週末や観光シーズンを中心に運行されているトロッコ列車「奥出雲おろち号」です。国鉄生まれのDE10形ディーセル機関車が、改造された2両の12系客車を押したり引いたりしながら、奥出雲ののどかな空気のなかを、ゆっくりゆっくりと進んで行きます。
機関車が引っ張るのではなく「押したり引いたり」としたのには理由があります。木次線の出雲坂根〜三井野原間には、急勾配を上り下りするためのスイッチバックが、いまも健在なんです。このとき進行方向が変わりますから“押したり引いたり”となります。出雲坂根駅構内には「延命水」と呼ばれる湧水がある他、三井野原駅は、標高726mでJR西日本の駅では最も高い場所に位置しています。
木次線は、奥出雲のたたら製鉄で財を成した絲原家が尽力して開通にこぎつけた路線。奥出雲の文化発展、継承に大きな役割を担ってきたと話すのは、松江駅弁・一文字家の景山直観(かげやま・なおみ)代表社員です。6回シリーズでお届けしてきた「駅弁屋さんの厨房ですよ」の第30弾・一文字家編もいよいよラスト。今回は出雲が育んできた文化、日本の駅弁のこれからについて、たっぷりお話しいただきました。
「島根牛みそ玉丼」を作った理由は?
―景山社長が就任されてから肉駅弁が増えたと感じていますが、最初の肉駅弁は?
景山:「およぎ牛(うし)弁当」が肉駅弁の先駆けとなりました。「およぎ牛」は私が名付けました。隠岐の島前に小さな島が点在する地域があって、牛を放牧しているんです。まだ小舟に乗れるくらいの牛を小さいうちに出荷するんですが、当時は大きな島までは海を泳がせていたんです。しかし、隠岐産の島根和牛の高騰で、駅弁としては厳しくなってしまったんです。
―そして、あの奥出雲の味噌に出逢って、「島根牛みそ玉丼」となったわけですね。
景山:「島根牛みそ玉丼」を作ろうと思ったきっかけは、関東圏の味が「濃い味」だと感じていたことです。じつは出雲地方も「甘辛」の味わいが好きなので、首都圏の皆さんにも“出雲の味”が合うだろうと思っていました。そんな折、ちょうど京王百貨店の方から「およぎ牛弁当の後継となる新作を開発されていませんか?」とオファーをいただき出店しました。1年目はまずまず、2年目に大ブレイクしまして、大変ご好評をいただき、大ヒット商品に成長しました。
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