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身近にあるかもしれない「長大地名」 日本全国の長い地名をまとめた同人誌『日本長大地名事典』が興味深い司書みさきの同人誌レビューノート

消えゆく地名の記録にもなりそう。

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司書みさきの同人誌レビューノートのサムネイル

 日本で一番長い地名、それは「25文字」だという説が世の中では広く親しまれているようです。そんな中、今回のご本に掲載されているのはすべて「25文字以上」の地名です。こんなにたくさんあったんだ! と驚くほど内容が充実した同人誌をレビューします。

今回紹介する同人誌

『日本長大地名事典 増訂第二版』B5 62ページ 表紙・本文カラー

著者:ひめ


同人誌『半分寝ながらでも作れる限界飯』
表紙にも文字、文字、文字

長い「25文字」を超える地名たち大集合

 地名が長い順に掲載されているので、めくると最初からクライマックスかのごとく、どーんとご本で一番長い土地名が登場します。その文字数は「34文字」。新潟県南魚沼郡と福井県大野市の地名が挙げられています。しかし、それ以降も30文字超えが多数続き、総掲載数はなんと76項目。こんなにあるんですね!

 冒頭には採録方針があり、調査はWeb上でなんらかの証跡を見つつ裏付けに登記情報サービスを使っていることや、区分を色別で表記しているなどの本書の読み方、このご本では「都道府県から小字までの文字数が25文字」以上を採録したことなどのルールが分かります。

同人誌『半分寝ながらでも作れる限界飯』
5文字ごとに線が引かれ、文字数が直感的に分かりやすくなっています

あなたの側にも長大地名があるかも? 文字から立ち上るお楽しみポイント

 まずは「こんなに長い地名が」「こんなにたくさん」と、めくってもめくっても現れる長い地名の文字列に気おされます。しかし、ゆっくりと読み解いていくと、「実在が確認できる最長の大字」「実在が確認できる最長の小字」といった、区分ごとの特徴が見えたり、作者さんが添えたコメントにより「砂利等の採取に関する規制計画に現れる地名」「佐賀県立図書館がパブリックドメインで公開する字図」などの参考資料の手広さに感嘆したりと、お楽しみポイントがたくさん現れてきました。

 「地名が長い」というだけの視点で集められた地名は、北から南までさまざまな場所にあります。名前がついているということは、そこには住んだり、通ったり、歩いた人がいるわけで……。知らなかった地名、きっとここで取り上げられなかったら出会わなかった土地がずらりと並びます。昨日まで気にも留めなかった近くの町の名前が、明日からは急に気になる地名になるかも……そんな視点の面白さが感じられます。

同人誌『半分寝ながらでも作れる限界飯』
作者さんのひとことが、「どんな場所かなぁ?」と知りたいきっかけを呼び込みます

残る地名、消えゆく地名……土地の記録を残すこと

 ご本には実在する地名が載っていますが、その中には今はもう使われなくなったものも。土地の名前が変わるのには、さまざまな理由があることでしょう。合併や区画整理、新しい街自体が出来上がったりするのは、前向きに変わっていこうとする表れかもしれません。

 しかし、地名が消えてしまったらその変化すらたどることが難しくなるのではないでしょうか。過去を消し去らず、未来につないでいくために、地名を記録する意味は大きいように思います。それを「長大地名」という独自の切り込み方で、こんなにも多数をこつこつと調査、検証され、しかも初版から情報を追加して増訂文字版を出されたとは! 圧倒と一緒に、地名を知る楽しさもにも思いをはせるご本です。

同人誌『半分寝ながらでも作れる限界飯』
名前は消えても場所はいまもそこにあり続ける、そんなことも浮かんできました

サークル情報

サークル名:日本長大地名事典刊行会

Twitter:@sarasvati635

入手できる場所:BOOTH


今週の余談

 すてきな図書館を知ったときにそのサイトを見ると、住所表記が「○○市」などから始まって、「都道府県」が省略されているところに意外とたくさん出会います。そこにお住いの方には書くまでもなく当然、というほどのなじみ具合なのかしら! となんだかほのぼのするのと同時に、遠方から貴館を知りたい者のためにぜひ都道府県からの表記を……ともどかくしもあるのでした!

みさき紹介文

 図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。

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