「とにかくユーザーを楽しませたい」という意思が随所ににじむ快作 Switch「刀剣乱舞無双」が想像以上に楽しかった:モバクソ畑でつかまえて
「簡単モード」を考えた人を絶賛したい。
今回は番外編ということで、想像以上に快適かつ楽しませてもらっている「刀剣乱舞無双」(公式サイト)についてご紹介させていただこうかと思います。
タイトル通り「刀剣乱舞」の登場キャラクターである刀剣男士たちを操作して戦おうという無双シリーズにいくつかあるコラボ作品の1つ。コラボ作品への配慮のためか、難易度や操作性の簡易化の結果、無双シリーズ復帰者にとっても快適に遊べる作品となっていました。
ライター:怪しい隣人
出来の良くないソーシャルゲームを勝手に「モバクソゲー」と名付けて収集、記録、紹介しています。モバクソ死亡リストは500件を超えました。年々ソーシャルゲームが複雑になり、ダメさを判定するのに時間がかかるのが最近の悩みです。本業はインフラエンジニア。そのためソーシャルゲームの臨時メンテは祭り半分胃痛半分な気分です。
今さらお話しするまでもないかもですが、「刀剣乱舞」は日本刀を擬人化した「刀剣男士」をプレイヤーである審神者(さにわ)が指揮し、日本の歴史を改変しようとする時間遡行軍という敵と戦うゲームです。
無双シリーズとの付き合いはPS2の「真・三國無双2」からPS3の「6」あたりまででしょうか。初期は楽しくプレイしていたのですが、煩雑になっていくシステムに飽きが来てしまい、離れてしまっていました。最新作であるSwitch版の「戦国無双5」でも「久々にやってみるか」という気分にまでは至らず。
一方「刀剣乱舞」はリリース当時に「艦これの女性向け版か〜」程度の認識でアカウントを作ってほぼそれっきり。アニメの「活撃刀剣乱舞」と劇場版の実写映画は見ている程度です。その状況でなぜこのゲームを購入しようとしたのか。その理由は、熱心なファンの友人が発売発表から盛り上がっており、体験版が公開された際にSwitchを購入していたためです。久々に手を出してみるか、と思ったのですが、これが想像以上に快適な作品となっていました。
まずゲームをスタートするとおすすめされるのが「簡単モード」でなんとなくそれを選んでみたところ、このモードが大変素晴らしい。本来はSwitchのABXYのボタンが通常攻撃、強攻撃、回避、必殺技に割り振られているのですが、かんたん操作にすると通常攻撃のYボタンが通常攻撃兼強攻撃兼回避になります。
これがどうなるかというと、Yを押しているだけで敵に通常攻撃コンボを決めた後敵が反撃してくると回避し、また攻撃を再開するという動作が可能になります。これが大変便利なだけではなく、うまく戦っているように見えるのです。ボタンを連打しているだけで刀剣男士たちが華麗に戦っているように見えるのは普段あまりアクションゲームをプレイしない人にとってとても重要なことだと思いました。この操作系を導入した人を絶賛したいです。デフォルトの難易度も「易しい」推奨なのでこれも相まってゲームは簡単に楽しめます。
キャラクターの強化はレベルを上げるだけではなく、資材を追加して能力値の上昇や強攻撃の追加、変更が行えるようになっています。これも戦い方のカスタマイズという上級者向けの要素であると同時に「なんか難しいな」と思ったらキャラクターを強化することで先に進みやすくなるという初心者向けの要素を兼ね備えています。
無双シリーズといえば広いマップで戦場を駆け巡る、という印象があるかと思いますが、今回1つのマップはコンパクト。1つの戦場が3マップ程度に分かれており、複数のマップを転戦する形になります。過去の無双では目標1をクリアしたら別のところにある次の目標へ、みたいな感じでしたが、それを別々のマップに分割しているイメージでしょうか。そのため1マップの時間は5分もかからず、忙しい人にもありがたい仕様となっています。
戦闘といえば、本家でもある程度のダメージを受けるとダメージ状態になり傷ついた姿へとグラフィックが変わるのですが、同様の要素が刀剣乱舞無双にも存在しています。ある程度ダメージを受けるとセクシーな姿が拝めるのですが、このダメージ量もかなり控えめなもの。3割ぐらい削れたら脱げるんじゃないでしょうか。
ただ、かんたん操作で回避しまくっているとそのダメージすら受けずにクリアしてしまうことがほとんど。じゃあどうやって脱がせばいいのか、と心配される方もいるでしょうが、ご安心ください。敵の攻撃には「これを食らうと確定で脱げる」ものが存在しています。逆に言えば「脱がしたくない!」という人はそれに注意しないといけないのですが。
個人的に無双シリーズから遠ざかった理由の1つである「キャラが多いと育成が大変」という要素については、今回本丸と呼ばれる本拠地に複数のキャラを配置することで、配置したキャラには相応の経験値が入ります。それにより、このキャラの話が終わったら次はこのキャラだけどレベル1からか……というげんなり感がなくなっています。前の話で稼いだ資材を利用してキャラクターを強化することが容易になっているため、レベル上げや資材稼ぎのために既存マップを走り回る、ということもしなくて済んでいます。
本丸では戦闘をクリアするごとにミニゲームをプレイでき、キャラクターの育成に必要な資材やお金を稼ぐことも可能になっています。このミニゲームも無理にプレイする必要はありません。また、戦ったり本丸で過ごしたりする刀剣男士たちのさまざまな姿をスクリーンショットに収める機能も充実しています。カメラモードを起動するとアングルの変更、輝度や彩度の変更、セピアカラーなどへの変化や被写界深度の変更、ステッカーやフレームの変更など、多彩な機能が付随しており、短い戦闘画面も相まって画像を撮影する時間のほうが長い人もいそうです。
キャラクターを眺めるだけではなく、ストーリーも大変楽しめる物となっています。本家のゲームにはストーリーやキャラクターの絡みがほとんどない、という話を既存プレイヤーからよく聞いていました。ですが、刀剣乱舞無双には各刀剣男士たちのバックグランドを踏まえたストーリーが存在しています。
刀剣乱舞無双に登場する刀剣男士は16振り。いずれも戦国時代の刀剣となっており、それぞれが関係ある武将のステージで戦うこととなります。例えば、伊達家の刀剣とされている鶴丸国永や大倶利伽羅、燭台切光忠が部隊を編成し、伊達正宗を巡る物語を体験する――といった具合。ただ歴史の追体験だけではなく、歴史改変を目論む敵との戦いのため歴史の「もしも」な物語が展開されていき、ついつい引き込まれてしまいます。ストーリー部分はコーエーテクモで「アンジェリーク」などのシリーズを手掛けるルビーパーティが担当しており、力の入れようが伺えます。また、刀剣男士たちは同時出撃させることで絆が増えていき、2人同時攻撃などを行う強化要素や、合間合間に会話が増えたりする楽しみも存在しています。
全体的に「とにかくユーザーを楽しませたい」という意思がいろいろなところから伝わってきて、大変好感が持てる作品でした。その分、ゲームを極める、難しいものをクリアする楽しさが味わいたいという人には向いていないかもしれません。個人的には「簡単に楽しみたい派」なのでこの作りには好感が持てました。もちろん、レベルを最高まで上げたりパラメーターを最大にするという意味でのやりこみはあると思います。少なくとも私にとっては、こういうシンプルで爽快なゲームがやりたいという意味で無双シリーズを遊んでいたというよさを再体験できるゲームでした。そういう意味でも「昔やったなあ無双シリーズ」みたいな人にもおすすめできる作品かと思います。
最後になりますが、このゲームには初回限定の豪華版が存在しています。これにはドラマCDがついているのですが、中身にストーリー的なネタバレがあるというかアフターストーリー的なお話になっているらしく。できればこういう「聞けると本編がもっと楽しくなりそう」な付随要素はDLCなり何なりという形で全員が聞ける形にしていただけるとありがたいな、とは思いました。
総じて刀剣乱舞世界への入り口としてはとても良くできていると思われる作品。先のプレイヤーの友人から「これが楽しめて映画が楽しめたならこっちもイケるはず」と舞台劇を勧められているので、そちらの方にも手を出してみたいと思っています。
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