通りで変な老人とガスマスク女が食事してた――。そんな投稿がTwitter上で話題になっています。謎の2人組の正体とは一体……?。
話題のきっかけとなったのは、Twitterユーザーのおったつさん(現在アカウントは非公開)が、「なんか久しぶりに街歩いてたら角マに変な老人とガスマスク女が食事してた…」というコメントと共に投稿した写真。
角マ(角マック。マクドナルド熊本新市街店の通称)の通りに突如現れたちゃぶ台を前に、靴を脱いで正座するガスマスクの女と老人が写っています。2人はどうやらちゃぶ台の上のご飯を食べている様子。どういうことなの……?
この投稿に対してネット上では、「異世界で食事してたら突然地球にワープしたんやろなぁ…」「新手のSCPかな?」「エア夜食じゃん」「東側陣営のガスマスクじゃないか」といった考察や、「え…怖い」「世の中のこういう違和感って好き」などの感想が寄せられました。この2人はいったい何者……?
その正体は、熊本市によるアートイベント「STREET ART-PLEX KUMAMOTO」における、演劇集団「ゼーロンの会」代表の上村清彦さんらによるパフォーマンス。上村さんとガスマスクを装着した桐野(仮名)さんが、3月12日に熊本市内の下通りで行った「飯食う男は電気羊の夢を見るか」という演目です。
編集部では上村さんに、このパフォーマンスについて話を聞きました。
――STREET ART-PLEXでこの演目をすると決めた理由を教えてください
上村さん STREET ART-PLEX KUMAMOTOの実行委員長から依頼を受けた際、ほふく前進あるいは五体投地によるアーケード街の通過、アーケード街の路面をなめつづけるなどの候補は思い浮かびましたが、ひらめきとして最も強かったのはあのパフォーマンスでした。
選んだ理由が「ひらめき」なんて理由にならないかもしれませんね。私にはどうもあまりに心地よく、また合理的に整序された風景に亀裂を入れたくなるという悪癖があるようです。日常の亀裂は時に高揚感を喚起してしまいますからね。
ちなみに、タイトルと内容は、ボリス・ヴィアンのひそみに倣って関係ありません。まあ、飯は食ってましたが。
――ネットでパフォーマンスに画像が話題になっていましたが、反響についてどう思いましたか
上村さん 年に1、2回は街角でパフォーマンスをやってきましたが、今回が一番大きな反響を感じてます。たぶんそれは長引くコロナ禍により人々の心が、いえ、街そのものが、弾むこと、浮き立つことに飢えているせいかもしれません。
それから、私はまったくSNSをやらず、パソコンも3日に一度くらいしか開かない不届きものなので、今回のネット上の反響はまったく予想していませんでした。悪事でなくてよかった。
――このパフォーマンスについて詳しく教えてください
上村さん 私は、パフォーマンスは「痕跡」だと考えています。先の例で言えば、2022年3月12日19時から19時20分まで、熊本市の新市街マクドナルドの前に私という人間が存在し、こういう行為を行った。そして、私はパフォーマンスをやるとき、私を起点に空間の外延を無限に広げていきます。
そうすると、私のパフォーマンス空間は、例えば戦禍にあるウクライナも含むことになります。そこまでの広がりをイメージしたうえでの「痕跡」です。
……いよいよ脈絡があやしくなってきました。自分の作品、パフォーマンスなど語らぬ方が、行為をそこにゴロンと投げ出すだけがよいのかもしれません。
画像提供:おったつさん
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.