【「ソウルハッカーズ2」肯定寄りレビュー】文化が停滞した未来像とリンクする「続編としての在り方」 素直な続編ではないが、単体のJRPGとして見れば悪くない(1/5 ページ)
アトラス作品のシステムを混ぜ合わせて、ライトに生まれ変わったJRPG。
はじめに
今回レビューする「ソウルハッカーズ2」(公式サイト)は、既に各メディアや一般ユーザーの評価、動画レビューなどで賛否渦巻く評価となっている。個人的な感情としても肯定したい思いと否定したい情動。評価に値する部分と評価できない部分があるため、通常のレビューを書くことがどうしてもできなかった。
そこで今回は、あえて肯定寄りと否定寄り両方の意見でレビューを書き、世界のアトラスファンの間で起きている反発や評価、問題点を考察することにした。順番としては肯定寄りのレビュー(こちらの記事)の後で否定寄りのレビューを読んでいただくと、本作の楽しみ方や問題となっている部分、発売までの騒動などが把握しやすいだろう。なお、どちらも本音であるため、片方だけを取り上げ、どちらかの意見を叩く材料にすることだけは避けていただきたい。肯定、否定、両方のレビューを読むことで、本作が掲げたテーマ「相互理解」が進んでほしいと願っている。
ライター:するめ(以下)マン
「真・女神転生 STRANGE JOURNEY」「ラジアントヒストリア」など、主にリメイク前のタイトルを好むライター。「幻影異聞録♯FE Encore」のように、遊びやすさはリメイク版が圧倒的だが、どれもシナリオのテーマや一貫性は無印が完成形だと思っている。
世界的に賛否両論な状態にある「ソウルハッカーズ2」
「ソウルハッカーズ2」のレビューをすることは、簡単なようで難しい。現に、私は今回の作品に限って肯定寄りの感情と、否定寄りの感情という両方の感覚を持ち合わせているからだ。アトラスのゲームとして個人的に期待していた一線を下回ってしまった部分と、純粋に1つのRPGとして楽しめた部分が両立している。故に、ただ褒めることも罵倒することも容易だ。何が原因なのかといえば、単純にターゲティングとマーケティングのズレによるものが大きいのだから。だが、それでは今この作品をめぐって起きているユーザー間の確執や、作品自体の評価すべき点、事の本質を見誤ってしまうのではないだろうか。
現在、ネットを見回すと「ソウルハッカーズ2」は世界的に賛否両論の立ち位置にある。Amazon.co.jpのレビューでも日本の購入者のみに絞ると平均評価は★3を割り、レビュー数も極端に少ないため、これまでの作品と比べても注目度も評価も低めだ(9月1日現在)。
米国のAmazon.comの方が評価は高いがレビュー数が少なく、海外のレビュー集積サイト「Metacritic」でもPS5版以外はあまり高い評価とはいえない(ユーザーレビューは購入せずとも書けるため、信頼性は下がるが)。実際に購入した人しかレビューできず、海外の評価が確認しやすいSteamでは、現状で「やや好評(賛否両論よりも1つ上)」をギリギリ保っているというアトラス作品にしては相当に厳しめの評価となっている。日に日に評価の割合が下がっているので、いつ賛否両論まで落ちるのかも分からない。PCでリリースされて以降「圧倒的好評」か「非常に好評」しかない近年のアトラス作品では異例の事態だ。
アトラスのファンによる高評価が付きやすい日本のAmazon.co.jpにおいても、これは非常に珍しい。これまでのアトラス作品において、Amazonレビューで低評価がついて荒れた作品としては「世界樹と不思議のダンジョン2」と「ペルソナQ2 ニューシネマラビリンス」が挙げられる。どちらもゲームとしては問題なく遊べるもので、いわゆるクソゲーではない。
この2作品は発売直後からしばらく平均評価が2.8を下回ったあと、価格が大幅に暴落した。逆に安くなったことで作品自体が広がり、再評価が進んで現在は平均値も上昇。今ではそれなりの評価である3.8以上をキープしている。特に「ペルソナQ2」は、最終的に20円まで下がったことで四捨五入されて99%を下回り、割引率が100%OFFと表示されるまでに価格が下落した。あまりにも安くなったことで、現在は「ペルソナ5」のファン層を中心に発売当時遊べなかった層がプレイして再評価しており、正しくターゲットとするべき層に届いた結果ともいえるだろう。近年のアトラスに限れば、人を選ぶものや気になる部分があるとしても、「クソゲー」といえるほどにひどい作品は出ていない。ただし、発売日に限定版まで飛びつくほどの層が期待した物からズレていると、厳しい評価を受けやすくなっている。
それは、本作も同様だ。「ソウルハッカーズ2」は、セガの完全子会社になって以降のアトラスタイトルのなかでは、購入者からの評価がもっとも低い。それはAmazonに限らず、Steamのレビューを読んでも同様で、世界的に賛否が分かれている。言語別に調べても、面白いくらいには賛否両論真っ二つなのだ。その理由はいくつか挙げられるが、もっとも大きいものとしては単純な出来不出来よりも、需要との食い違いを起こしていることだろう。本作は世に言う「クソゲー」ではない。むしろ、良いか悪いかで言えば悪くはない作品だ。JRPGとしてはそれなりの完成度を持ち、客観的に見れば平均点から良作ぐらいの評価には落ち着く作品でもある。それがここまで発売前から荒れ、購入した層の半数から拒否反応が出てしまったのは、ターゲティングとマーケティングの失敗といえるかもしれない。
新規層に届きにくく、保険としていたであろう古参層の半数を激怒させたことも原因の1つであるが、海外に目を向けると、そちらへの狙いもうまくいっていないように見える。主に(簡体字と繁体字までは正確に区別して調べられてはいないが)中国語圏でも英語圏でも「ペルソナ5」と比較されており、そことの差別化が薄いことで失望している層もいる。
そのため、私は今回に限り、肯定・否定どちらかのレビューだけを載せるべきではないと判断した。古参と呼ばれるアトラスのファンとして、「ソウルハッカーズ2」を巡って起きているファン層の分断の原因や、届くべき層への届かせ方を見誤りかねないからだ。そこで変則的だが、今回はあえて肯定寄りレビューと否定寄りのレビューを書くことにする。
肯定寄りのレビューでは、現状どのような層に刺さるものなのか。作り手の狙いも含めて、どの点が成功しているのかを考察しながら、遊びたいと思っている層、遊んで楽しめる層に届くように、本作の魅力的な部分を語るつもりだ。一方で否定寄りのレビューでは日本の古参ユーザーだけが叩いているという誤解を解くべく、海外ユーザーの反応などをひもときながら、なぜ本作がそこまで拒絶されてしまったのかを考察していく。
「ソウルハッカーズ2」が好きな方は肯定寄りのレビューに納得していただけるとありがたく、否定寄りの意見は参考程度で留めていただけるとありがたい。拒否反応を示している方は否定寄りのレビューを読んで言語化できていない感情に折り合いをつけつつ、肯定寄りのレビューで遊ぶきっかけとなれば、アトラスファンとしてこれほどうれしいことはない。
両方のレビューを読むことで少しでも相互理解が進めば、本作をきっかけに起きているファン層の分断も避けられるのではないだろうか。なお、あくまでも私自身は今回取り上げる肯定寄り、否定寄りの両方の意見を持っており、どちらも本音である。片方だけを取り上げて叩く材料にすることだけは避けていただきたい。肯定、否定、両方のレビューを読んだことで、本作が掲げるテーマの1つ「相互理解」の一助になれば幸いである。
それでは、まず本作がどの層に受けるのか、肯定寄りの意見を語っていこう。
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