【「ソウルハッカーズ2」否定寄りレビュー】取捨選択を間違えて差別化しきれず、女神転生とペルソナを継承するには力不足 ターゲティングも誤ってしまった(1/6 ページ)
悪魔や神話、前作に対する無邪気さと続編としての在り方が信頼を損ねている。
はじめに
今回レビューする「ソウルハッカーズ2」(公式サイト)は、既に各メディアや一般ユーザーの評価、動画レビューなどで賛否渦巻く評価となっている。個人的な感情としても肯定したい思いと否定したい情動。評価に値する部分と評価できない部分があるため、通常のレビューを書くことがどうしてもできなかった。
そこで今回は、あえて肯定寄りと否定寄り両方の意見でレビューを書き、世界のアトラスファンの間で起きている反発や評価、問題点を考察することにした。順番としては肯定寄りのレビューの後で否定寄りのレビュー(こちらの記事)を読んでいただくと、本作の楽しみ方や問題となっている部分、発売までの騒動などが把握しやすいだろう。なお、どちらも本音であるため、片方だけを取り上げ、どちらかの意見を叩く材料にすることだけは避けていただきたい。肯定、否定、両方のレビューを読むことで、本作が掲げたテーマ「相互理解」が進んでほしいと願っている。
ライター:するめ(以下)マン
挑戦的な方向で世に出た「真・女神転生III」や「ペルソナ3」のような大幅な変化、「幻影異聞録」も楽しめたライター。シナリオが薄いと言われがちな「真・女神転生V」には未完成の部分を感じつつも、それでも女神転生らしさと挑戦する志を感じたので評価している。
なぜここまで拒否反応が出てしまったのか
肯定寄りのレビューでも書いたが、25年ぶりの続編となる「ソウルハッカーズ2」をレビューすることは、簡単なようで非常に難しい。私自身、クリアした直後に肯定寄りの楽しめた感覚と、怒りと悲しみを越えた否定寄りの激情がないまぜになり、大いに荒れた。本作の発表時、様相を変えた作品に対して古参の中では拒否反応を示す動きがあったが、私自身は変わることを歓迎していた。信頼していたからだ。しかしながら、アトラスのゲームとして個人的に期待していた一線を下回り、その期待は裏切られてしまった。純粋に1つの新作JRPGとして見れば楽しめた部分もあるのだが、あまりにも大きい失望を抱いたのも事実だ。だからこそ今回は、現状の「ソウルハッカーズ2」を巡って起きているユーザーの反応と、肯定、否定の双方を考察しながら両方の意見でレビューを書くことにした。
なお、否定的なレビューを書くうえで、私の感情を乗せるだけでは偏りかねない危惧もあったので、執筆を行う前に軽く調査を行った。日本のユーザーコミュニティーの意見からは見えてこないものもあると考え、執筆前にreddit、4chといった英語圏の掲示板、metacriticなども調べて評判を精査していたことが、今回の記事を書くまでに時間がかかった理由でもある。しかし、これらの掲示板はユーザーの購入証明がないため、やや信頼性に欠けていた。また、Amazonレビューは日本以外だとレビューそのものの総数自体が少なく、ゲームの評価としても出しにくい。そこで、最終的にはSteamレビューを全ての言語圏に変更して確認。肯定、否定の両方のレビューを最新(9月1日0:00時点)の状態から自分用にリスト化して調査し、世間の意見がどのようなものであるかを確認してから、不評にまで至った理由を調べてみた。そのなかから世界的な不評(好評レビュー内の不満を含む)をくみつつも、私自身の意見としてなぜ本作が反発を受けたのかを考察していきたい。
ちなみに、購入者しか書けないSteamのユーザーレビューを見ると、数としてもっとも多かったのが中国語圏だった。調べた時点でも130件を超える不評レビューがあり、次いで英語が100件を超える程度。日本語レビューは67件、韓国語が25件となり、そこにフランス語やドイツ語、ポルトガル語などのレビューが少数書かれている状態だ。中国語圏は簡体字と繁体字を明確に区別せずに調査してしまったので正確とは言い難いが、好評、不評ともにPC版のレビューをする層では、東アジアで最も多い。リスト化して調べたのは9月1日0:00の時点だが、その中身は意外なことに日本と似たような内容が目立っていた。
Steamのストアでは購入したユーザーがレビューできる機能が備わっており、好評or不評をつけることができる。その割合によってステータスが変化する仕組みが導入されており、500件以上のレビューで好評率が95%以上なら「圧倒的に好評」。50件以上で85%以上ならば「非常に好評」。80%以上ならば「好評」。好評率が70〜79%の場合は「やや好評」。好評率が40〜69%のタイトルは「賛否両論」となる。今回の「ソウルハッカーズ2」に関しては、全ての言語で検索すると「やや好評」、日本人のみのレビューに絞ると「賛否両論」となっているが、全ての言語で調べても現在71%と70%を行き来している状態であり、最終的には賛否両論にまで落ちる可能性は高い。今回、海外の不評も多いからだ。
実際に中身を見ていくと、「決してオススメはしないが、普通がないので好評寄りにつけた」というものもいくつか存在していた。10点中6点や、10点中7点と評しているレビューもあり、手放しには褒められていない。褒めている内容でも、大絶賛とはいえないようだ。
簡単な傾向としては、英語圏は「ペルソナ5」との比較が多い。中国語、韓国語の東アジアは前作「ソウルハッカーズ」の続編としての比較で、日本の古参ユーザーにも近い意見が目立った。もちろん、単体としての出来に言及するものもあれば、「(主人公の)リンゴがかわいい」といった一言レビュー。古参への罵倒に終始しているものなど、一概にはまとめられないが、一貫しているのは本作が期待に応えきれてないことだった。そして、続編としての意義を問われている。海外受けを狙ったと思える要素が、海外からも拒否された結果だ。
なぜ、ここまで拒否反応が出たのか。肯定寄りのレビューでも少し触れているが、私は評判を総括した結果、本来あるべき「ソウルハッカーズ」としての進化を見誤ったことだと見ている。「真・女神転生III」や「ペルソナ3」のようにシリーズとしての変遷や進化とはいえないものであり、最新作である「真・女神転生V」や「ペルソナ5」のように、シリーズとしての差別化ができなかったことが、主な失敗の原因といえるだろう。
なお、私自身は本作が刺さる層に届いて欲しいと考えており、肯定、否定、両方の感情を持ち合わせている。「ソウルハッカーズ2」が好きな方は肯定寄りのレビューに納得していただけるとありがたく、否定寄りの意見は参考程度に留めていただけるとありがたい。拒否反応を示す方々は、否定寄りのレビューを読んで言語化できていなかった感情に折り合いをつけていただけると幸いだ。そこから肯定寄りのレビューを読み、遊ぶきっかけとなって良い面にも目を向けていただけるなら、ファンである私としてもうれしい限りである。
両方のレビューを読むことで少しでも相互理解が進めば、本作をきっかけに起きたファン層の分断のなかでも、お互いの気持ちを少しは理解して納得できるのではないだろうか。なお、先ほども書いたが私自身は今回取り上げる肯定寄り、否定寄りの両方の意見を持っており、どちらも本音である。片方だけを取り上げて叩くことは避けていただきたい。肯定、否定のどちら側でも、本作が掲げるテーマの1つ「相互理解」の一助になれば幸いである。
それでは否定寄りのレビューとして、まずは本作の発表時の反応から振り返っていこう。
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