『アホガール』『カノジョも彼女』などの作品で知られる漫画家のヒロユキさんが、「書店特典のイラストは基本的に原稿料が出ない問題」を解決するために行った実験が反響を呼んでいます。
ヒロユキさんの言う「書店特典のイラストは基本的に原稿料が出ない問題」とは、漫画などの新刊発売時に描き下ろしのイラストカードなどが付く書店特典のための作業が、基本的に無償での作業となっていることを指しています。
そこでヒロユキさんが考えたのは、「そのイラストを色紙に描き、販売することで原稿料を発生させる」というもの。『週刊少年マガジン』で現在連載中の『カノジョも彼女』は、テレビアニメ2期の制作も決まり、コミックス12巻が発売されたばかりですが、書店特典のイラストカードと同じイラストを色紙に描き、それを販売することで金銭的メリットを創出させようという試みです。
販売の場に選んだのは、Yahoo! JAPANが運用するインターネットオークションサービス「ヤフオク!」。ヒロユキさんは書店特典のイラストカード(4種)と同じ原画を色紙に描き、オークション形式で出品。オークション形式を選択したのは、適正価格が判断できず、安価に販売すると転売目的の人に買われる可能性が高いと判断したため。適正価格の見極めにもつながると踏んでのことでした。
この結果、開始価格3万円で出品された4種の色紙はそれぞれ17万8000円(佐木咲)、15万1000円(水瀬渚)、14万1000円(星崎理香)、17万円(桐生紫乃)といずれも10万円以上の値で落札。ヒロユキさんはコミックスの新刊発売ごとに繰り返すとこの価格は下がっていくだろうと予想しながらも、「購入された方もとても喜んでいただき、個人的にはとてもよかったと感じました」とよい手応えがあったことを報告。「次の巻が出るときもやる予定」だとつづっています。
文字面だけを追えば、お金への執着が強い漫画家とみる向きもありそうですが、実際のところは、ヒロユキさんも「原稿料が出ないことで出版社とかに文句があるわけではない」と単にお金の問題ではないことを強調。「忙しい連載の中でさらに無償のイラストを描く時間をスケジュールに組み込むというのは精神的にキツいときがある」ため、作業の合理性をどこかに見いだしたい心情をつづっています。
書店特典のような販促物の制作が、基本的に作家の善意により無償で行われていることは、以前から話題に上ることもありました。2011年に行った、漫画家で現参議院議員の赤松健さんと、『サルまん』などで知られる編集家の竹熊健太郎さんとの対談では、赤松さんが『ネギま!』の限定版OADを例に、次のように話しています(関連記事)。
3700円のOADパッケージの中で私の取り分は単行本の部分だけなんです。(中略)アニメOPの絵コンテもタダで描いてますし、表紙も描き下ろしでタダでやってますから。しかも、通常版と限定版で別の表紙を描いています。そうやってグッズを作ることで盛り上げて売っていくという。 (引用は雑誌でなくコミックスで利益を得る構造は、オイルショックがきっかけから)
ヒロユキさんの作品はオリジナルで、コミカライズや原作付きのように複数の権利者が絡まないため、スムーズに実験が行えた側面もありますが、この実験結果にネットでは「原作者自身から出品されると安心感が違う」「コミックスの特典がネットで転売されるなら作者自身が本物のサイン色紙売った方が良いよね」「本当はちゃんと原稿料が出るのがいいのだろうけど出ないのならこうやって漫画家さんにお金が還元されるシステムがあるととても嬉しい」と好意的に評価する声が続出。同業の漫画家からも「ヒロユキ先生の方法が許容される流れになると良いな」など共感する声も見られます。
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