ロアルド・ダールの作品に削除&修正、カミラ王妃も批判で出版社「原文も出版」 「チャーリーとチョコレート工場」仏翻訳版は“現代風”の編集を拒絶
「太った→巨大な」などに修正されていました。
英出版社パフィン・ブックスは2月24日(現地時間)、英作家ロアルド・ダール著作最新版への修正に批判が噴出したことを受け、原文をそのまま残したコレクションも出版することを発表。映画化された「チャーリーとチョコレート工場」原作を含むダールの著作最新版では、出版社と著作権を有する会社によって体形・性別・肌の色に関する描写などが削除・修正され、各方面から当該判断を危険視する声が巻き起こっていました(関連記事)。
今回の改訂ではダールの著作から現代の価値観にそぐわないと判断されたもの、例えば「太った(fat)」「狂った(crazy)」「醜い(ugly)」といった単語が削除・修正され、その結果「チャーリーとチョコレート工場」に登場する食いしん坊のオーガスタス・グループは「とても太った9歳の少年」の代わりに「巨大な9歳の少年」と形容されるように。
編集は「こんにちでも全ての子どもたちに楽しんでもらえるように」行われたとされていましたが、作家らは「ばかげた検閲」「物語の力を弱める」など問題点を指摘していました。
また、読書家で知られるイギリスのカミラ王妃は2月23日、オンラインで全ての人へ読書体験を提供する自身の慈善団体、「The Queen's Reading Room」2周年を記念するスピーチで今回の騒動に言及。
出版社やダールの名前は出さなかったものの、「表現の自由を抑制し、想像力を制限しようとする人々に邪魔されることなく、これからも自分の天職を貫いてください。これだけ言えば十分ですね!」とにっこりすると、その場に居合わせた人々からは共感するような笑いが起こっていました。
2月24日付の発表によると、出版社はダール作品について2通りの出版をするとのこと。ペンギン・ブックスの児童書部門であるパフィン・ブックスからは、出版社と著作権を有する「ロアルド・ダール物語社」が編集を担った最新版が出版され、本体のペンギン・ブックスからは「The Roald Dahl Classic Collection」として改訂前の17作品が2023年中に出版されるとのことです。
パフィン・ブックスは2月24日に発した声明で、「私たちは先週から、ロアルド・ダール著作の並外れた力を再認識し、またどのようにして各世代へ別時代による物語の価値を保持するかというとても現実的な疑問について、討議に耳を傾けてきました」と騒動について熟考してきたことを告白。
その結果、児童書出版社としての役割は「子どもたちと物語の魔法を共有し、最大限の配慮と細心の注意を払うこと」だとし、今回の決断に至った職業的使命を説明した上で、「私たちはまた、ダールの原文を出版し続けることの重要性を認めている」とも。
2通りの出版をすることで「ロアルド・ダールの不思議なすばらしい物語をどのように体験するか、読者に選択肢を提供することができる」としています。
なお、フランスで「チャーリーとチョコレート工場」をはじめとするダール作品の翻訳版を出版する、ガリマール・ジュネス社はイギリスでの改訂を受け、「この書き替えはイギリスだけに関係することです。私たちはロアルド・ダールの文章を修正したことはありませんし、これからもするつもりはありません」ときっぱり述べています。
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