米フロリダ州のタラハシー・クラシカル・スクールで、11歳から12歳の生徒にミケランジェロの代表作「ダビデ像」を用いた授業を実施したため、校長が「子どもにポルノをみせた」として辞任に追い込まれる事態へと発展。このニュースを受け、ダビデ像を所蔵する伊フィレンツェのアカデミア美術館セシリー・ホルバーグ館長が、この出来事は「ひねくれた心」と「大きな無知」の産物であるとコメントしています。
ホープ・カラスキヤ校長は、保護者全員にミスで通知が行き届かない状況のもと、ダビデ像の画像をルネサンス美術の授業で使用。一部の保護者から「子どもがポルノをみせられたと言った」などと苦情が寄せられたことから、校長の職務を降りることに。
タラハシー・クラシカル・スクールは、ある共同理念をもとに保護者や教師、地域団体が特別認可を受け作り出すチャーター・スクールであり、今回の騒動を受け同校のFacebookは、問題となったダビデ像全体の画像を掲載し、「私たちはいつでもダビデ像をシェアしてきましたし、これからもそうします」と作品自体を問題視しているわけでは決してないと説明。
「私たちの方針では、事前に通知することで自分たちの子どもの年齢に適切なものかどうかを保護者自身が判断できるようにするのです」と主張しています。
ホルバーグ館長はフランス通信社(AFP)を通し、「これは本当に思いがけないこと。我々が今話しているのはルネッサンスの象徴であり、何世代にも渡り世界中で認知されているミケランジェロのダビデ像なのですから」と驚きを表明しました。そしてこの彫刻の評価はその美しさ、特に“純粋さ”によるものだとし、「ヌードとポルノは全く違うものなので、2つを混同するためにはひねくれた心を持っていないといけません」とチクリ。
今回の出来事は歴史や芸術史についての「大きな無知」が原因としたうえで、「何よりもとても悲しいこと」と“事件”への率直な気持ちを述べました。
旧約聖書に登場する古代イスラエルのダビデ王を巨大な大理石の塊から彫り出したダビデ像は、ルネサンス美術が花開いた1501年から1504年の間に制作。
「ピエタ」に並ぶミケランジェロの代表作であるだけではなく、芸術史全体でみても傑作であり最も有名な芸術作品の1つであるだけに、ホルバーグ館長はさらに「この作品に心をかき乱されるような人は、西洋文化のルーツに深刻な問題を抱えている」とし、今回の事態を引き起こした人々は聖書についても完全に理解していないと指摘しました。
今回の騒動はフィレンツェのダリオ・ナルデラ市長も自身のSNSで取り上げ、「芸術をポルノだと勘違いするのは、単にばかげている」とコメント。続けて「個人的に先生をフィレンツェに招待し、市を代表して賞を贈るつもりです。芸術は文明であり、それを教える人は尊敬に値します」とカラスキヤ校長を市に招待する意向を示しています。
なお、事件の舞台となったフロリダ州は近年、保守傾向の支持者が多い共和党の強さが際立つ州。2018年にアンドリュー・ギラムへ圧勝しフロリダ州知事へ当選したのはドナルド・トランプと近い急進的な保守でありつつ政治経験が豊富な共和党のロン・デサンティスであり、2人はライバルかつ盟友とされています。
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