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【漫画】猫の殺処分を減らすために、飼い猫にこそ避妊去勢手術を 一体なぜ? 獣医師に話を聞いた

たとえ1匹の完全室内飼いの猫にも、避妊去勢手術を。

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 「猫の殺処分を減らすために、飼い猫にこそ避妊去勢手術の徹底を――」。獣医師が描いた注意喚起の漫画がInstagramに投稿され、400件以上のいいねを集めています。作者は一般社団法人「猫総合相談センターハッピータビー」(@happy_tabby_clinic)の獣医師、橋本恵莉子さん。猫の殺処分数と飼い猫の避妊去勢手術には、どのような関連があるのでしょうか。ねとらぼ編集部は橋本さんに取材しました。

 近年、犬猫の殺処分数は減少傾向に。その理由は殺処分への否定的な意見の広がり、動物保護団体の増加による保健所の引き取り数の減少、保護犬・猫の譲渡数の増加などがあげられます。しかし、環境省の統計資料 「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によると、2021年4月1日〜2022年3月31日の猫の殺処分数は合計で11718匹にも及び、今もなお多くの猫たちが殺処分の対象になっていることが分かります。

 橋本さんが描いたのは、殺処分の対象になる野良猫たちを増やさないため、「たとえ1匹で完全室内飼いしている猫でも避妊去勢手術の徹底が必要である」というテーマの漫画です。

飼い猫の避妊去勢手術の徹底を
飼い猫の避妊去勢手術の徹底を
野良猫を増やす原因になる
野良猫を増やす原因になってしまう

 雌と雄の猫が暮らしている家庭での避妊去勢手術は、むやみな繁殖を防ぐために必要であることは分かりますが、なぜ1匹だけ室内飼いしている猫にも避妊去勢手術が必須なのか。橋本さんは漫画で、猫が脱走して迷子になってしまうケースをあげて警鐘を鳴らします。

脱走して迷子になったら?
万が一、猫が脱走して迷子になってしまったら

 橋本さんによると、何らかの理由で脱走してしまった雌猫が妊娠して帰ってきてしまうケースは珍しくないとのこと。また、脱走後の猫が戻ってこられずにそのまま野良猫になってしまうと、新たな野良猫を増やしてしまう原因になるといいます。

脱走した雌猫が妊娠してもどってきた
脱走した雌猫が妊娠してもどってきたケースは珍しくないそうです
脱走しないと本当に言える?
私の猫は大丈夫、と思っても……

 もちろん、愛猫の脱走を望む飼い主はおらず、「うちの猫は大丈夫」と自信がある飼い主が多いでしょう。しかし、もし地震などの災害で突然家が倒壊したら? パニックになった猫が家から飛び出して戻ってこられなくなったら……。橋本さんは「予想外の防ぎようがない脱走もあり得る、本当に絶対大丈夫なのかな?」と問いかけています。

災害で家が倒壊して脱走したケースも
災害で家が倒壊して脱走したケースも
災害時に家から離れ、戻れなくなった猫
災害時に家から離れ、戻れなくなったケースも

 脱走や災害で家を離れてしまい、戻ってこられなかった猫たちが手術を受けていなければ、繁殖し野良猫増加の原因のひとつになります。橋本さんによるとこの現象は東日本大震災や熊本地震でも確認されたのだとか。漫画の最後で橋本さんは「平常時に飼い猫に避妊去勢手術をしておくことが、万が一の脱走や災害時への備えとして重要なのです!」とつづっています。

飼い猫の避妊去勢手術の徹底を

 編集部は、橋本さんに話を聞きました。

――「飼い猫にこそ避妊去勢手術を」というテーマで漫画を描こうと思ったきっかけを教えてください

橋本さん:野良猫を減らす活動として、TNR活動が知られてきていますが、それよりも大切なのが、実は飼い猫の手術の徹底なのです。なぜなら、飼い猫が外に出たりして、野良猫を増やしてしまっている事実があるからです。

 しかし、一頭で完全室内飼いの飼い猫への不妊去勢手術には、まだまだ飼い主さんのご理解とご協力が必要です。獣医師という立場からそのことを説明したくて、漫画にしました。

※TNR……Trap・Neuter・Return(トラップ・ニューター・リターン)を略した言葉。捕獲器などで野良猫を捕獲(Trap)し、避妊・去勢手術(Neuter)を行い、元の場所に戻す(Return)こと

――漫画にあったように「脱走したメス猫が妊娠して帰ってきた」というケースは多いのでしょうか。印象的なケースがあれば教えてください

橋本さん:一頭のメス猫が妊娠して帰ってきて、その後繁殖を繰り返した結果数十頭までに増え、エサが足りず、共食いと出産を繰り返す地獄のような多頭飼育崩壊になった、という例があります。その現場からレスキューされた1頭が、譲渡型保護猫カフェの「Happy Tabby Room」のカール君です。

――読者や猫と暮らす方へのメッセージがありましたら教えてください

橋本さん:正しく繁殖予防をして、行き場のない可哀そうな命を産ませないことが、動物愛護の基本の「き」です。それは1頭だけで飼っているご家庭も無関係ではありません。不妊去勢手術をすることで、猫ちゃん自身の生殖器疾患の予防にもなります。必ず、手術をしてあげてくださいね!

(了)

 獣医師の橋本恵莉子さんが代表理事を務める「猫総合相談センター ハッピータビー(Happy Tabby)」は、猫の不妊去勢手術専門クリニックと譲渡型保護猫カフェ「ハッピータビールーム」を運営し、猫の過剰繁殖とTNR活動に関する相談受付やサポート、啓発活動などを行っています。Instagram(@happy_tabby_clinic)には、活動内容や里親募集中の猫たちの情報、ずっとのお家を見つけた猫たちの幸せそうな姿が投稿されています。

画像提供:猫総合相談センター ハッピータビー Happy Tabby(@happy_tabby_clinic)さんのInstagramアカウント

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