“IWGP”から23年、窪塚洋介の現在地 民放から20年離れている理由も明かす、最新作は日韓共作「ナックルガール」(2/2 ページ)
「自分探しって、どんどん自分に近づいていく作業なのかな」
2002年を最後に、俳優として民放の作品、いわばテレビからは距離を置いている状態の窪塚さん。近年はマーティン・スコセッシ監督映画「Silence -沈黙-」(2017年国内公開)でハリウッドに進出し、2019年には英BBCが共同制作し翌年に全世界配信したドラマ「Giri/Haji」出演と海外に活躍の場を広げ、最新出演作は11月2日からAmazon Primeで独占配信がスタートする日韓共同制作のAmazon Original映画「ナックルガール」です。
同作は韓国発の同名コミックが原作で、妹のためナックル=拳だけで命を懸けた闘いに挑む若き主人公を三吉彩花さんが熱演。窪塚洋介さんは三吉さんと敵対する組織のボス・白石役で、三吉さんと戦う伊藤英明さん演じる二階堂とは対照的に、知力を武器に裏社会で組織を操っています。
最新作ではインテリヤクザを好演 「エレガントに、ちょっと貧欲に、虚勢がうまく見えたら面白い」
―― 出来上がった作品をご覧になっていかがでしたか?
窪塚 さっきちょうど見終わりました。率直に面白かったです。漫画原作アニメみたいで見やすいし、(監督)チャンさんの感性で撮ったから、俺からしたら見慣れた場所がすごく新鮮に映りました。
一番は三吉彩花ちゃんがすごくよかったこと。アクションシーンも激しくて、シャドーボクシングもすごくサマになっていてかっこよかった。ご本人とはハイブランドのパーティーで会ったことがあって、華やかな場で女性の美しさを体現する役割を担うことが多い方じゃないですか。だからそんな普段の姿とのギャップでよりワイルドに、パワフルに見える。役者の幅としてすごく良いと思うし、良い仕事をされたなと思います。
―― 白石という役を演じるにあたって、どんな役作りをしましたか?
窪塚 実は近いタイミングで取り組んでいた別作品でもヤクザの役でした。そっちは本当に野蛮で下劣、鬼畜なヤクザだったので、すごく対照的なキャラ作りでした。
白石はヤクザというか起業家ノリみたいな。温室育ちで頭が良いだけ、そこへ悪さが入ってきちゃった。エレガントに、ちょっと貧欲に、だからこそ持っている弱さもあり調子に乗っている空気感や小物感、虚勢がうまく見えたら面白いかなって微調整していました。最後にめちゃくちゃめくれてバレるんだけど。
―― 伊藤英明さんが演じる二階堂との絡みが多くありましたね。画面に映らないような設定を2人で話しあうようなこともあったのでしょうか?
窪塚 プロデューサーと監督と俺と伊藤くんとで、白石も二階堂もあのグループに10年くらい前、同じようなタイミングで入ってきて……とお互いのバックボーンの話はしました。二階堂はファイターとして、俺(白石)は運営とか会社側に。お互い疎ましく思いながら、俺からすればケンカになったらかなわないから権力マウントしかできることがなくて、歯止めが効かなくなっちゃった。ざっくりとしていた話の内容は、二階堂とのシーンでずっと出ていますね。
―― 伊藤さんとの関係も興味深いです。仲良くやっていたのか、役作りを優先して距離をとっていたのか。
窪塚 なんか俺が思ってるよりも、近い距離感で来てくれる人だった(笑)。役へのアプローチ、現場の居方とか全然違うタイプの役者さんだったので、「こういう人がいるんだな」って言うと語弊があるけど、なかなか会えないタイプの人でいい刺激になりました。
22年テレビを離れている理由 「いろんな理由はあるんですけどテレビから離れとこう」
―― そもそもこの作品のオファーを受けようと思った理由は何だったのでしょうか?
窪塚 日韓合作で、Prime Video さんっていうのも気になった。民放のテレビドラマは20年以上やっていなくて、「Giri/Haji」で久々のいわゆる連ドラをやったんですけど、バジェット(予算)感によっては全然ありだなと思いました。「ロンドンともまた違う、じゃあ韓国ってどんな感じなのかな? しかも合作で」と、そこへの興味が一番大きかったけど、もちろん脚本ありき。漫画原作の痛快アクションエンターテインメント。ストーリーに重い部分もあるけど、ポップな楽しみ方ができるかな。
―― 映画「Silence -沈黙-」でハリウッド映画にも出演されていますが、韓国のスタッフとの撮影現場はどういった印象でしたか?
窪塚 チャン監督はチャーミングな人。すごく仲良くなってご飯も一緒に行くような関係になりました。波長が合って、すごくやりやすかった。やる・やらないは別にしてこっちのアイデアも受け入れてくれる、まず話ができる人。監督として撮りたい画が明確にもありつつ、こちらにも余白を空けて待っていてくれる人でした。
国籍というより人によると思うんですよ。日本でも同じことができない人も、できる人もいるし。マーティン・スコセッシ監督に関しては、監督の撮りたいものを撮るだけの作業だった。もちろん演じる側のアイデアを聞いてはくれたけど、それで画が変わることはなかったと思う。
そういう意味で、チャン監督はすごく柔軟で余白のある監督だったし、プロデューサーのトーマスさんも話しやすくざっくばらんにぶっちゃけた話もいろいろできました。これをきっかけにいい関係性が築けたかな。
―― 近年は海外作品や、ストリーミング作品への出演がメインです。配信作品の制作は、民放と比べて自由度が高いと聞きますし、「ナックルガール」にも地上波での放送は厳しいのではと感じる激しいシーンもありました。窪塚さんは両者の違いをどう捉えていますか?
窪塚 22年近くやっていない俺が今のテレビ業界を語ってはいけないと思うから、現状については分からないとしか言えないんですけど、20年以上民放のテレビドラマに出ていない大きな理由はそれも1つ。バジェットと、自由度だったり情熱だったり。熱い思いを持ったディレクターやプロデューサーがいたとしても、その情熱に見合う仕事ができていないことは多々あると思うんです。あとは違う作品でもいつも同じ人が出ていて、顔ぶれが全然変わらない部活みたいな感じ。
いろんな理由はあるんですけど、そのままテレビから離れておこうって感じは変わらずです。新しくAmazonさんや他のサブスクに映像を作れるタフな企業がどんどん出てきているから、面白い作品は出演していきたいなと思うし、変わらず映画も出ようと思うし、いい作品があれば舞台もやりたいなと思ってます。
―― これには出たいと思える作品の条件はどんなものなのでしょうか?
窪塚 脚本。一番大事なのは。堤(幸彦)さんであろうが、「出てよ」「出ます」とはならない。「じゃあ本も送ってください」から。楽しそうって思えるかどうか、胸のドキドキでしかない。日韓合作、出演者とか追加要素も見てバランス的に楽しそうか。反対に楽しくないかもって思えば断るし、ご縁がなかったってこともあります。今回は台本が非常に良かったですね。
Amazon Original映画『ナックルガール』
キャスト:三吉彩花
前田公輝 細田佳央太
栄信 納谷幸男 松田るか
南 琴奈 有森 也実 八十田 勇一 三浦 誠己
近藤芳正 神保悟志
窪塚洋介 伊藤英明
脚本:ユ・ガビョル
監督:チャン
アクション監督:チェ・ボンロク
原作:『ナックルガール』 JGstreet (Sangyoung Jun)原作、 Daywalker(Sangjin Yoo)作画
作品視聴ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CGKG97XJ
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むしろ芝居でよかったとすら思う。