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退化したヒトはなぜまだ服を着ているのか 「猿の惑星」の気になる“不思議”を最新作監督にぶつけてみた 「猿の惑星/キングダム」来日インタビュー(1/2 ページ)

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 1968年から続くシリーズの最新作「猿の惑星/キングダム」が5月10日から全国で公開中です。舞台は今から300年後の世界。人類が退化する一方で、進化した猿たちは荒廃した世界で王国=キングダムを築こうと争っていました。

 主人公はオーウェン・ティーグ(「IT」シリーズ、「To Leslie トゥ・レスリー」)演じる若き猿ノア独裁者プロキシマス・シーザーに故郷を襲われたノアが、フレイヤ・アーラン(「ウィッチャー」「ガンパウダー・ミルクシェイク」)演じる人間の女性と出会ったことで、物語は大きく動き出します。

「猿の惑星/キングダム」
「猿の惑星/キングダム」

 新たな物語のメガホンを取るのは、「メイズ・ランナー」三部作で知られるウェス・ボール監督。1980年生まれと、1968年から1973年まで展開されたオリジナルシリーズをリアルタイムで知らない世代ながら、歴代の作品が共通して訴えかけてきた社会的なメッセージを現代にフィットしたものにアップデートして打ち出しています。また、技術の進歩に伴い、作品ごとに見せ方を変化させる猿たちや荒れ果てた世界のビジュアルも引き続き注目ポイントです。

 ねとらぼでは来日したボール監督へ単独インタビュー。1作目の衝撃的なラストシーンを思い出すエンディングや、どうしても気になってしまう“衣装”まで幅広く聞きました。

「猿の惑星/キングダム」
ウェス・ボール監督

キャストも言葉を失った 圧倒的説得力ある映像

「猿の惑星/キングダム」
圧倒的ビジュアル

―― 映像の進化はシリーズで一貫して注目されるポイントです。主な登場キャラは当然ながら猿ばかり。個人的に、リアルな映像に当初は感情移入できるかと不安でしたが、物語が進むにつれ見分けがつくようになっていくのが自分でも面白いと感じました。

ウェス・ボール監督(以下、WB) それがこの映画にかけたマジックです。私は映画作りの“クラフト”部分が好きなんです。

―― “ものづくり”としての映画ですね。キャストの皆さんは、自分が猿になった映像を見てどんな反応でしたか?

WB みんなびっくりしていました。ケヴィン(・デュランド、プロキシマス・シーザー役)はアフレコブースで初めてスクリーン上の自分を見たんです。その途端、一時停止して「(ぽかんとして)……あぁ! すまない、とちった」といった具合に自分のせりふを忘れてしまったんです。それほどいい出来になったし、面白い出来事でした。

「猿の惑星/キングダム」
ケヴィン・デュランドが演じるプロキシマス・シーザー、とちるようなキャラじゃないのに

 ホームビデオとしてリリースする際には、形式は未定ですが実際に役者が演じている姿を公開する予定なのでぜひ見てみてください。

―― 企業秘密とまではいかないかもしれませんが、“マジック”の裏側を公開するには勇気がいるのでは。後進の育成を意識しているのか、単純にファンを喜ばせたいのか、どういった意図があるのでしょう?

WB 裏側の公開は誰もが喜ぶものではないでしょうね。ただ、クリック1つでCGが出来上がるイメージを持たれているようで、アートへのリスペクトが欠けていると感じていたんです。しかし現実はそうではない。背後にはたくさんのアーティストがいて、細かなこだわりがあり初めて映像が完成する。そのことを知ってほしい気持ちがあります。

 秘密のベールをちらっとめくることにはなっても、それはマジックのタネを全部ばらすことにはなりません。全部を見せることはできないけれど、それでもすばらしさの一端は感じてもらえるはずです。

―― 非常に素朴な疑問なのですが、この機会にうかがわせてください。なぜすっかり退化した人はまだ服を着ていて、進化した猿は裸のままなんでしょうか……?

「猿の惑星/キングダム」
なぜヒトはまだ服を着ているのか

WB PG13!(笑) もともとは人間にも服を着せないことを想定していたんです。実際、目立ってはいないけれど服を着ていないキャラも出ています。幼い観客にもこの映画を見てほしかったから強調は全くしていませんが、ちょっとくらいなら許されるでしょう。結果的には1968年のオリジナル版のビジュアルとも似通った状態にできたので、いいオマージュになりました。

―― 大人の事情だ……! ありがとうございます、長年の疑問が解消しました。

WB オリジナル版では、ウイルスによって人間の知性は退化したけれどヒトとしての本能は備わっているという描写でした。歩くとか食べるとか、皮膚を何かで覆い隠して保護しようとすることもその1つです。川辺のシーンでは、猿やヒトが泥を身体に塗り付ける描写があります。衣服を身に着けるのも同じ本能が根本にあるとの理屈です。

あまりに衝撃的だった初代のエンディング 若き売れっ子監督が感じていたプレッシャー

―― 今回のプロダクションをスタートしたのがコロナ禍、また歴史あるシリーズということでプレッシャーもあったのではと想像します。監督にとって、制作プロセスで最も困難だったことは?

WB 歴代の作品クオリティーに見合う作品を作ること。皆さんの期待値も高いため、過去作品を超えられなくても、少なくとも同等のクオリティーを誇る作品にすることが絶対でした。

 あとは技術ですね。本当に困難でテクニカルなプロセスなんです。この作品を作るのはとても大変でした。

―― 仰るとおり、第1作のエンディングは映画史に残る衝撃として現在も語り継がれています。今回のエンディングもなかなかの衝撃度だと感じましたが、ネタバレのない範囲で語っていただけますか?

WB ちょっとだけ(笑)。もちろん68年版と同じ結末は作れません。あの「オーマイガー!」というべきシーンや衝撃は既存のものですからマネは厳禁。この作品のエンディングでは、世界観がグッと大きくなるんです。オープンな状態で締めくくったのは意図的な構成ですよ。

―― すでに三部作にするとの構想が明かされていますが、オープンになっているというだけで具体的なアイデアはこれからなのでしょうか?

WB 機会があれば実現させたいアイデアはもうあります。実は、続編が作られれば「こういうことだったのか!」と発見、回収できるネタを各所に仕込んでいるんです。物語を完結させるには、序章、半ば、終章と三部作が必要です。

―― 今後、人気ゲームシリーズ「ゼルダの伝説」を元にした作品を監督すると発表済みで、これはもちろん日本人として気になるところです。その上で「猿の惑星」三部作となると……。

WB 忙しくなるのは間違いないですね(笑)。実際のところ次に何をするのかはまだ分かりません。「猿の惑星」のプレスツアーが今日で終わり。ちょっと一息ついたら、というところです。

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