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ツインテールを漢詩で表現するなら? 同人誌『推し漢詩』から学ぶ、“スキを漢詩で”表す方法

イラストや楽曲などとはまた違った良さを感じます。

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同人誌 本棚 図書館 司書 コミケ

 今年の漢字は、今年を一言で表すと……といった話題が聞こえてくるような季節になりました。どんな一年だったかなと振り返るのと同時に、それをどう表現したものか、と頭を巡らせます。今回は、思いを漢詩で表す、創作漢詩の同人誌です。

今回紹介する同人誌

『推し漢詩。スキを、漢詩に。改訂版』A5 124ページ 表紙・本文モノクロ

著者:午睡先生


同人誌『推し漢詩。スキを、漢詩に。改訂版』
伝えたい思いを漢詩で表すには?

語り合いながら漢詩づくりを目指す

 こちらのご本は、漢詩づくりをテーマにしています。漢詩といえば、教科書に載っていた「国破れて山河在り」がかろうじて浮かぶくらい、という私ですが、ご本のタイトルにある「スキを、漢詩に。」の語に、そんなかっこいいことができたらどんなにすてきでしょう! とひかれ、手に取りました。

 本編では「好きな対象を漢詩にしたい」と意気込む高校生と、指導する先生という立場を架空に設定し、そのおしゃべりがメインに書かれています。その対象はゲームのキャラクターや情景、大切な相手といった旅などさまざまです。また、作者さんがこれまでどのように漢詩と関わってこられたかについてはご本では触れられていませんが、コラムとして名詩の解説が差し挟まれており、新しい作品を生み出す折に古典的な漢詩も味わってほしいという、漢詩全体への目配りを感じます。

同人誌『推し漢詩。スキを、漢詩に。改訂版』
漢詩づくりについて、推したい対象や状況を想定して進めます

漢和辞典もネットも駆使して組み上げる言葉

 ご本の中で教わる立場の生徒さんは、学校で少し漢詩に触れた程度という、読み手の私とほとんど同じ条件です。これが先生の導きでとんとん拍子に漢詩づくりの階段を上っていくのですが、実は序盤の展開は私には相当に難しそうに思え、どきどきしました。好きな漢字をただ並べるだけでなく、語尾の響きやその配置など、今まで考えてこなかったルールが立ちはだかっているように感じてしまいました。

 しかし、そこをなんとか読み進め、生徒さんが具体的な情景やキャラクターの特徴をどう表現するかを組み立てるところになると、目の鋭さを表すには? ツインテールを表すには? と、想像しやすい条件が知らなかった言葉に置き換わっていく新鮮な面白さがやってきました。この面白みを組み込むには、そういえば確か条件があって……とページを戻ると、最初は戸惑ったルールも飲みこみやすく振り返ることができました。

 ルールにのっとり、充実した漢詩を生み出すために、漢字辞典を使ったりネットで確認したりするツールも示されます。思えば、ゲームなどでも上級者になるとある程度の“縛り”があると、がぜん面白くなったりしますものね。歴史ある漢詩の世界、縛りのなかでぴったりとする言葉をはめるかっこよさもありそうです。

同人誌『推し漢詩。スキを、漢詩に。改訂版』
ツインテールを漢詩で表現するなら?

漢詩に込める思い、読み解く想像力

 初心者用の教本で、先生と生徒の会話でレクチャーを追うのはよく採用されている形式ですが、どこかなつかしさを感じるようなやりとりは、なんとなくの難しさを感じてこわばりそうな肩の力をやわらかくほぐしてくれます。ご本を読んでいると、生徒さんも先生も自分の思いをどう表したらよいか、頭を悩ませているのですが、それが楽しそうな情景として浮かんできます。また、表記として漢字だけの連なり、かな混じりの書き下し文と違いがあったり、音読するときの読み方など、漢詩の味わい方が複数あるのも示され、知らず知らず、そこに込められた思いの読み解き方も分かってきます。

 なぜ生徒さんはあえて漢詩で表現しようと思ったのか、動機こそ語られませんが、好きな気持ちがあふれているときは、とにかく発露できる方法を求めるのは分かります。人によっては表現方法は作曲だったり、絵やダンスだったりするかもしれません。そんな一つに漢詩という手法を持っているとしたら、それはなんて楽しいことでしょう! もしかして私もできるかも? と思わせてくれるご本でした。

『推し漢詩。スキを、漢詩に。改訂版』『推し漢詩。スキを、漢詩に。改訂版』 おいしいお肉を食べた喜び、漢詩にはなんだって可能性があるのですね

サークル情報

サークル名:鳥蛙舎

入手先:東方書店東京店(東京都千代田区神田神保町1-3)


今週の余談

 限られた文字に意味を含ませ、それを読み取るってかっこいいですよねぇ……! ひとこと一言を読み取っていく、それでいて音やインパクトもあって…と、ここのところ短い言葉の輝きを感じています。

みさき紹介文

 公共図書館、専門図書館に勤務していた元司書。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。

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