【新宿区と豊島区だけ転出超過なのはなぜ?】「転入超過数が少ない区」ランキング! 専門家が語る要因とは?【2023年データ】

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 人口の増減には、人の生死によって起こる”自然増減”と、人の移動によって起こる”社会増減”があります。その地域から出て行った人の数と、入ってきた人の数の差である社会増減を、住民票を基に国が調査したのが「住民基本台帳人口移動報告」。

 この移動人口を見ると、転入超過数が多い地域は人気があるとも考えられますが、さまざまな理由から別の地域へ転出する人も多くいます。

 本記事では、不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」を運営するLIFULL協力のもと、『東京23区の「転入超過総数が少ない区」ランキング』を紹介します。【東京一極集中】はいつまで続く? 「転入超過数が少ない区」ランキング! 専門家が語る要因とは?【2023年データ】では、0~19歳、20~34歳、35~59歳、60歳以上という切り分けでご紹介しましたが、本記事は5歳階層の切り分けを変えたものです。

 「25~34歳」で転出超過となった「新宿区」「豊島区」の2区は「総数」でも転出超過になっていたことがわかりました。果たして、そこから見えてきたものとは?

 集計および分析を担当した副所長かつチーフアナリストである中山登志朗さんにお話をお聞きし、転入超過数が多い、少ない要因について説明してもらいました。

中山登志朗(なかやまとしあき)……LIFULL HOME’S総研 副所長 兼 チーフアナリスト。出版社勤務を経て、1998年よりシンクタンクにて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演を行うほか、年間数多くの不動産市況セミナーで講演。2014年9月にHOME’S総研(現:LIFULL HOME’S総研)副所長に就任。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任。(一社)安心ストック住宅推進協会理事。

画像:LIFULL HOME’S総研

※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

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調査概要

調査期間2023年1月1日 ~12月31日
調査エリア東京23区
集計方法総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告を基に作成

※本ランキングは、総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告を基にLIFULL HOME’S総研が作成したものです。

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【新宿区と豊島区だけ転出超過なのはなぜ?】「転入超過数が少ない区」ランキング!

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第2位:豊島区(-36人)

 第2位は「豊島区」でした。東京23区の北西部に位置する豊島区は、若者に人気の池袋やシニア層に人気の巣鴨、高級住宅街として知られる目白など、さまざまな表情を持つエリアです。

 豊島区の2023年の「転入超過総数」は-36人。つまり36人の「転出超過」となっています。世代別に見ると、25~34歳が-166人と転入超過数が最も少なく、次いで0~14歳が-550人、35歳以上は-1987人。15~24歳の単身若年層のみ、2667人の「転入超過」となっています。

【中山登志朗さんはこう見る】

 大前提として、東京23区は単身若年者層が多い地域です。大学を卒業した人が東京で就職して結婚するまでの十数年間、賃貸物件を借りて都市部に住むケースが多いんですね。それを裏付けるように15~24歳の単身若年者層は、すべての区で転入超過となっています。賃料が高い千代田区以外は1000人以上、大田区は8000人近くとかなり多い数字です。

 一方で35歳以上のファミリー層は、足立区以外すべての区で転出超過となっています。足立区は23区内で最も物件価格や賃料が安価であるといってもいい地域。交通の便が良い割に賃料が安いので、結婚や出産を機にこのエリアに引っ越す人が多いのでしょう。23区内で総数が転出超過になっているのは豊島区、新宿区のみ。かつ、25~34歳が転出超過になっているのも豊島区、新宿区のみです。どちらの区も賃料水準は高めなので、若い人がそれほど入ってこず、ファミリー層の転出が多い。そのため、結果として総数が転出超過になっていると考えられます。

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第1位:新宿区(-2304人)

 第1位は「新宿区」でした。東京23区のほぼ中央、「副都心」とも呼ばれるエリアに位置している新宿区。区内は鉄道をはじめとした交通網が発達しており、JR山手線や中央本線のほか、私鉄・地下鉄の駅が点在しています。

 新宿区の2023年の「転入超過総数」は-2304人。つまり2304人の「転出超過」となっています。世代別に見ると、25~34歳が-702人と転入超過数が最も少なく、次いで0~14歳が-944人、35歳以上は-2714人。15~24歳の単身若年層のみ、2056人の「転入超過」となっています。

【中山登志朗さんはこう見る】

 新宿区は25~34歳の転出超過数が、豊島区よりもさらに多い-702人です。傾向としては豊島区と同じで、若い人がそれほど入ってこず、ファミリー層の転出が多いため、総数が転出超過になっているのでしょう。新宿も豊島も、若年単身者層の転入が多くない理由の一つに「大繁華街で治安が悪い」というイメージがあるでしょう。閑静な住宅地もあるのであくまでもイメージですが、地方から子ども一人を送り出す親御さんとしては心配な部分があるのだと思います。

 新宿区や大田区は、0~14歳のお子さんの転出超過も1000人ほどと、23区内でもトップクラスです。単身で転出するケースもありますが、多くは家族連れで移動するため、お子さんも一緒に転出することになります。0~14歳で転入超過になっている区は文京区、練馬区のみ。このエリアには比較的所得の高いファミリー層が安定的に住んでおり、35歳以上の転出が少ないのでしょう。さらに入ってくる人もある程度いるので、その差分として14歳までのお子さんが増えたということですね。

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【中山登志朗さん総評】

 城西エリア(世田谷区、中野区、杉並区など)や城南エリア(目黒区、大田区など)は、35歳以上のファミリー層が2000~3000人の転出超過になっています。対して、ファミリー層が動きにくいのは城北エリア(文京区、足立区、荒川区など)と城東エリア(中央区、葛飾区など)です。

 文京区や中央区には比較的所得の高いファミリー層が安定的に住んでいるケースが多く、また、足立区や葛飾区は賃料や物件価格が安価なため住みやすく、転出が少ないのでしょう。足立区は35歳以上で唯一転入超過で、同じく葛飾区も-80人なので誤差の範囲といえます。現在は都心以外でも1億を超える物件がザラにあるので、家を購入する際に安価な場所に移るケースは多いでしょうね。23区全体として、物件の価格水準や物価、世帯年収に違いがあることが背景にあると思います。

 ランキングの全順位は、次のページからご覧ください!

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