第3回 「Google Glass」は何に使えるか:“ウェアラブル”の今(2/2 ページ)
Google Glassをかけての生活
筆者がGoogle Glassを手に入れる前の2013年2月、カリフォルニア州ロングビーチで開催されたTED Conferenceで、Googleの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏がGoogle Glassをかけているのを見たことがある。同氏が会場にある芝生の広場でヨガをしていたときが、実際にGoogle Glassをかけている人を間近で見た、初めての経験だった。
Google Glassはハンズフリーでスマートフォンを利用するという感覚での利用が中心となった。これはブリン氏の印象が強かったこともある。
スマートフォンで我々はメールを読み、写真を撮り、地図で経路案内を見て、友人にメッセージを送る。こうした機能を、メガネ、あるいは視界の中に現れたディスプレイを用いて、声で操作しながら利用するのがGoogle Glassだ。
ナビゲーションは、自分の視界の中に、地図と方向を示す矢印が表示される。これは、頭で考えてみると非常に使いやすいように感じるが、実際に試してみると、筆者にとっては相当な慣れが必要な作業だった。
というのも、視界の上に画面が重ねられていて、画面の部分は当然透過していて実際の景色も見えるのだが、ついその画面に気を取られてしまい、他の視界がおろそかになってしまう。電柱にぶつかりそうになることが何度かあった。これでは、ハンズフリーにも関わらず、歩きスマホと同じではないか。
徒歩ですら少し怖い思いをするGoogle Glassを、クルマの運転中にかけようものなら、そこで起こり得ることにはゾッとしてしまう。カリフォルニア州では、携帯電話などを手に持ちながらの運転や、両耳にイヤフォンを装着した状態での運転は禁止されており、Google Glassをかけての運転でも交通違反に問われたという事例があった。
法令の問題以前に、個人的には危険だと感じてしまった。前述の通り、慣れの問題もあるし、視野の注意力には個人差もある。しかし、Google Glassは、すんなりと使い始めるには用途をいろいろ考え、見付ける必要があった。
ハンズフリーの恩恵を、まずはカメラで体験
筆者がGoogle Glassで最も良く使う機能はカメラだ。
通常、カメラで写真や動画を撮影するには、手に持って構える必要があるが、Google Glassはほぼ人の目と同じ視野で写真や動画を撮影できる。撮影には、「OK Glass, Take a photo / Recode a video」と音声コマンドを使うか、フレームの右側、カメラの上あたりにあるシャッターボタンを押すか、右目をウィンクすれば良い。
ハンズフリーでの撮影は、GoProなどのアクションカメラをヘルメットなどに固定すれば同様のことができるが、Google Glassの場合、自分の意志でシャッターのタイミングを決めたり、目で見えている通りの様子を記録することができるため、より意図的な写真や動画を撮ることができる。
例えば自転車に乗っているとき、料理中、ペットをお風呂に入れているビデオなど、Google Glassならではの写真やビデオを撮影するのは非常に楽しいものだ。Google+のGoogle Glassコミュニティで、「#throughglass」と検索すると、どんな風景が撮れるのかが分かる。
Google Glassのカメラは、その結果が非常に楽しいため、ついのめり込んでしまう。その過程を通じて、ハンズフリーによって、今までスマホでは得られなかった場面や作品、あるいは意味合いを見出すことができた。カメラは、Google Glassの可能性を考え始める、非常に良いきっかけだった。
社会の中での軋轢と、活用の場
Google Glassのメリットは、完全なハンズフリーと、声で操作できるアプリの存在が中心だ。例えば日本航空は、2014年5月から、Google Glassを利用できる米国内のハワイ・ホノルル空港で、航空機整備・貨物搭降載業務に携わるスタッフがGoogle Glassを利用する実験を行っている。
特に整備の場面では、ハンズフリーでコミュニケーションを取ったり、資料を閲覧するなどの効率性が期待できるほか、貨物についても作業中に映像で貨物そのものを映し出せるため、確認などのコミュニケーションがより簡略化できることが期待される。本件については、実際に日本航空を取材する予定だ。
またファッションショーでも、Google Glassとのコラボレーションが行われるパターンが出てきている。モデルがGoogle Glassを装着してランウェイを歩いたり、デザイナーがショーの最中の慌ただしいバックステージをGoogle Glassで録画するなど、今まで記録できなかった「その人の視点」の共有は魅力の1つと言える。
しかしGooge Glassには録画中であることを示すランプがない。そのため、撮影してるかどうかは、相手からは分からないのだ。これによって、不快な思いをする周囲の人の意見も聞かれる。
スマートフォンやカメラであれば、いわゆる「スマホやカメラを構えるポーズ」があるため、撮影しているかどうかは見て分かることが多い。しかしGoogle Glassはただそちらを向いているだけでも、ウィンクひとつで写真が撮れるのだ。特に東京のような集積度の高い都市の中では、敬遠されるデバイスとなった。
新たな用途を考えるためのエクスプローラープログラム
Google Glass用のアプリは少しずつ増えているが、iPhoneやAndroidのような爆発的な増え方に至っていないのは、デバイスの価格によるところも大きいのだろう。カメラ、ハンズフリー、といった要素でGoogle Glassの実際のメリットを言い終えてしまえるあたりも、このデバイスの価値が実生活で高まっていないことの表れだ。
しかし、だからこそ、Googleははじめから一般販売せず、エクスプローラープログラムとして用途の発見や需要について調べようとしてきたのだろう。
おそらく向こう数年、ウェアラブルデバイスの本命は腕時計型のデバイスに収束していく。しかし、例えば医療の現場では、衛生面から腕時計型のデバイスは利用できないため、むしろGoogle Glassのようなデバイスの方がふさわしいだろう。
また、Google Hangoutによる見たままの生中継も、業務でコミュニケーションを活用する際の効率性を大きく変化させてくれるはずだ。もちろん、自分がGoogle GlassからコールしたHangoutに映るためには、鏡の前に行かなければならないが、あるいは鏡の前でHangoutをしながら何か作業をする、というファシリティの変化も面白いかもしれない。
筆者も含めて、Google Glassを購入した人の中には「どうしたものか」と悩む人も少ないくないのではないだろうか。しかし、だからこそ、まだ気づけていない可能性があるのではないか、という期待もある。もちろん、1500ドルという金額を払ったからこそ、期待せざるを得ないという面も、否定はしないのだが……。
関連記事
- 「“ウェアラブル”の今」バックナンバー
- 第1回 ウェアラブルのゴールは、体験の継ぎ目をなくすこと
Apple WatchやAndroid Wearの登場により、普及への助走が始まったようにも見えるウェアラブルデバイス。リストバンド型やメガネ型以外にも、さまざまな形状が登場しているが、その未来、そしてあるべき姿を探る。 - 第2回 改めて考える「Apple Watch」の可能性と課題
ウェアラブルデバイスを考えるとき、Apple Watchの存在は無視できない。Appleはこれを腕時計として世に送り出そうとしているが、果たしてApple Watchは「毎日選ばれる1本」の座を獲得できるのだろうか。 - Google GlassにAndroid Wear同様の通知同期機能が追加
Googleのメガネ型端末「Glass」に、スマートフォンで受信したシステムやアプリからのプッシュ通知を表示する「Notification Sync on Glass」機能が追加された。 - 「Apple Watch」はこれまでのスマートウォッチと何が違うのか?
アップル初の腕時計型ウェアラブルデバイスは、うわさされたiWatchではなく、「Apple Watch」だった。既存のスマートウォッチと比較して、スタンスにどのような違いがあるのかを考察する。 - Google I/O 2014で見えた、Googleとライバル企業の勢力図
Google I/O 2014では、新しいAndroid OSのプレビュー版やウェアラブル端末などが発表された。今回の発表で、Apple、Microsoft、Mozillaといったライバル企業との勢力図に、どんな影響を及ぼすのだろうか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
-
生後5日の赤ちゃん、7歳のお姉ちゃんから初めてミルクをもらうと…… 姉も驚きの反応がかわいい
-
9カ月の赤ちゃん、バスで外国人の女の子赤ちゃんと隣り合い…… 人生初のガールズトークに「これは通じあってますね!」「ベビ同士の会話、とろけます」
-
【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
-
「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
-
大谷翔平選手、ハワイに約26億円の別荘を購入 真美子夫人とデコピンとで過ごすかもしれないオフシーズンの拠点に「もうすぐ我が家となる場所」
-
「ケンタッキー」新アプリに不満殺到 「酷すぎる」「改悪」の声…… 運営元「大変ご迷惑をおかけした」と謝罪
-
「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
-
「ハーゲンダッツ硬すぎ!」と力を入れたら……! “目を疑う事態”になった1枚がパワー過ぎて約8万いいね
-
「そうはならんやろ」をそのまま再現!? 「ガンダムSEED FREEDOM」のズゴックを完全再現したガンプラがすごすぎる
- 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
- 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
- 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
- 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
- “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
- 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
- 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
- お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
- 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
- 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
- フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
- 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
- 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」