第7回 百花繚乱のフィットネスデバイスは、いかに生き残るか?“ウェアラブル”の今(1/2 ページ)

ウェアラブルデバイスといえば、今身近なのは健康管理に利用するフィットネスデバイスだろう。しかし、一部の機能はスマートフォンでも利用できるようになっている。専用デバイスの存在意義を考えてみる。

» 2014年12月08日 08時00分 公開
[松村太郎,ITmedia]

 皆さんは、ウェアラブルデバイスと聞いて、何を思い浮かべるだろうか。あるいは、ウェアラブルデバイスとして体験した初めてのデバイスは何だっただろうか? 経験がある方は、フィットネス系のデバイスが初めて、という人も多いのではないだろうか。

UP by Jawbone 初期バージョンのUP by Jawboneを、iPhoneのイヤフォンジャックを経由して同期しているところ。非常にシンプルなデバイスで、10日間のバッテリー持続日数は、非常に便利だ

 こうしたデバイスは百花繚乱状態だ。先駆けとしてリリースされたのは「UP by Jawbone」。そしてもともとスポーツギアを扱ってきたNikeは「Fuelband」をリリースしているし、日本でも人気がある「FitBit」、デザイン性の高い「Shine」など、よりどりみどりの状態だ。

 これらのデバイスのほとんどは、加速度センサーとバッテリー、そしてBluetoothを内蔵し、収集したセンサーのデータをスマートフォンに送り込む。スマートフォンのアプリは、これらのデータを集計・分析し、可視化する。

 米国ではさらにファッション性を高めたり、新たなセンサーを搭載するものも登場している。例えば、FitBitは、ファッションブランド「トリバーチ」とのコラボレーションモデルを用意した。また、「Muse」は脳波をセンシングするヘッドギアだ。

 前回ご紹介した「JINS MEME」は、眼電位と加速度センサーにより、体の状態をより詳細に取得するが、限りなく普通のデザインのメガネとして仕上げている。

 スマートフォンと連携するスマートウォッチよりも、こうしたフィットネス系のウェアラブルデバイスの方が先行しているのは、明確な用途を示すことができたからかもしれない。

ウェアラブルデバイスの原体験

UP by Jawbone UPを装着すると、自分について分からなかったことがいろいろ見えてきた。最新版ではレム睡眠や深い眠りの状態などまでアルゴリズムで判定してくれる。自分では無意識で寝ている睡眠について、眠りの深さを計測してくれる機能には驚かされた

 筆者のウェアラブルデバイスの原体験をふりかえると、2012年に購入した、リストバンド型デバイス、UP by Jawboneだった。

 2013年6月にサンフランシスコにあるJawboneを訪問し、当時プロダクトマネジメント担当役員を務めていたブラッド・キットレージ(Brad Kittrage)氏は、24時間・7日間の人々の暮らしをサポートするデバイスとして、シンプルでデザインを優先して作っていると語っていた。

 UPを装着すると、自分について分からなかったことが、色々見えてきた。特に驚いたのは、自分が寝ているときの状態が分かることだった。UPには、睡眠計測モードがあり、切り替えると睡眠時間中のレム睡眠、ノンレム睡眠、起きている状態を計測してくれる。例えば夜トイレに立った時間も克明に「起きている状態」と記録される。

 そして、深い眠りの長さを知ることが可能で、毎日統計を取っていくことができる。例えば、お酒を飲んだ夜は深い眠りが少ないだとか、睡眠時間が短くても深い眠りが半分以上であれば、さほど眠気を感じないだとか、自分の体調と照らし合わせることもできるのだ。

 ウェアラブルデバイスは常に身につけているため、自分の無意識の行動を記録してくれる。今まで“なんとなく”で、よく歩いた、よく寝た、と考えて来たことが、データとなって現れるのだ。

 データを取るだけでも、感動できるほど、自分について知らなかったことが分かるようになる。そして、「その次」にも注目すべきだ。

 例えば、眠りの質を高めるにはどうするか?

 これは個人によって差があるが、筆者の場合、1日に8000歩以上歩いた日は、相対的に深い眠りが長く、よく寝られることが多い。しかし曇っている日や、午前中出かけなかった日は、もう少し歩かないと、深い眠りが長くならない。

 2年間毎日計測を続けていくと、こうした「次の行動」を考える事ができる。もちろん上の例は素人がつかんだ感覚的な相関関係だが、スポーツ医学や生活習慣のトレーナーや医師が、データを活用したアドバイスを行ってもよいだろう。

ウェアラブルデバイスの必須条件とは

 自分の日々について、いろいろな気づきを提供してくれるリストバンド型デバイスだが、UPを使っていて、いくつかの気づきがあった。

 まず、UPは2年間ですでに3回交換してもらった。初期バージョンは特に、バッテリーが上手く充電されなくなる問題を抱えていて一時発売中止になっているが、その後も何度かうまく充電されなくなってしまったことがあった。

 毎日使い続けるという点で、耐久性は最も重要な要素であり、軽くシンプルに作ることと、壊れにくいこと、水に強いことが必要だ。電子機器としては非常に厳しい環境にさらされデバイスであることが分かる。

 加えて、さらに難しい問題は、バッテリーの持続時間だ。幸いなことに、UPは液晶ディスプレイやBluetooth・Wi-Fiといった無線通信など、バッテリ消費が多くなりがちな機能をそぎ落とし、スマートフォンとの同期もイヤフォンジャックを通じて行う形式を取った。

 そのおかげで、1度充電するとおよそ10日間、バッテリーが持続した。つまり、1カ月に3回充電すればよかったのだ。後に、Bluetoothの省電力化が進んで、後継モデルであるUP 24 by Jawboneが登場し、Bluetoothでの同期も可能になったが、JawboneがUPで優先したのは、デザインとバッテリーの持続日数だったことが分かる。

 ウェアラブルデバイスの場合、できるだけ身につけていた方が良いこともあり、充電の頻度は少なければ少ない方が良い。充電のたびに体から取り外す必要があると、かなり面倒なのだ。

 充電しながら出かけてしまって、その間のトラッキングができない、ということが、UPの1カ月3回の充電頻度ですら起きてしまったからだ。

 もちろん、ブランドやデザイン、センサーの種類、アプリの便利さなど、各製品で違いはある。しかし、実際に使っていて最も重要なポイントは、耐久性とバッテリー持続日数だった。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/01/news138.jpg イオンモールで販売「シフォンケーキ」にカビ発生、5000個回収へ “下痢”の報告で調査中……出店企業が謝罪
  2. /nl/articles/2402/21/news158.jpg 業務スーパーの“高コスパ”人気冷凍商品に「基準値超え添加物」 約1万5000個販売……自主回収を実施
  3. /nl/articles/2405/01/news092.jpg “スケスケ成人式コーデ”が物議のモデル、「3度見される服」を披露 「コレは見ちゃうわ」「洗っても大丈夫なのか」の声
  4. /nl/articles/2405/01/news095.jpg 秋元康、AKB48卒業の柏木由紀に送った手紙が物議 “冒頭の一文”に「昭和丸出し」「嫌すぎる」
  5. /nl/articles/2405/01/news013.jpg IKEAの新作カーテンが「家中これにしたい」ほどすてき!→どうやって付けているの? 垢抜けインテリア術に視線集中「すっごいかわいい」「色味が最高」
  6. /nl/articles/2405/01/news093.jpg 500円玉が1つ入る「桔梗のお花ケース」が100万件表示超え! 折り紙1枚で作れる簡単さに「お小遣いあげるときに便利」「美しい〜!」
  7. /nl/articles/2404/30/news015.jpg 【今日の計算】「500×99」を計算せよ
  8. /nl/articles/2404/30/news165.jpg 「これは変態だ」 職人が“鉄の塊”から作った「はぐれメタル」がガチすぎる 狂気の手作業に驚き「いかれてるw」
  9. /nl/articles/2405/01/news104.jpg 「そっち使うの?!」「これは天才」 さびだらけの鉄くぎをぐつぐつ煮込むと……? DIYに役立つ“まさかの使い道”が200万再生
  10. /nl/articles/2405/02/news013.jpg 2歳娘、自分のバースデーフォトをセルフタイマーで…… プロ顔負けの仕上がりに「すごーーーーーーー!!」「天才すぎます」と称賛の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  2. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  3. しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  4. 天井裏から変な音がする→スマホを突っ込んで撮影したら…… 映った“とんでもねぇ”モノに「恐ろしい」「何これ」と騒然の196万表示!
  5. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  7. 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  8. 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
  9. 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  10. スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評