“ウェアラブル”の今:第7回 百花繚乱のフィットネスデバイスは、いかに生き残るか? (1/2)
ウェアラブルデバイスといえば、今身近なのは健康管理に利用するフィットネスデバイスだろう。しかし、一部の機能はスマートフォンでも利用できるようになっている。専用デバイスの存在意義を考えてみる。
皆さんは、ウェアラブルデバイスと聞いて、何を思い浮かべるだろうか。あるいは、ウェアラブルデバイスとして体験した初めてのデバイスは何だっただろうか? 経験がある方は、フィットネス系のデバイスが初めて、という人も多いのではないだろうか。
こうしたデバイスは百花繚乱状態だ。先駆けとしてリリースされたのは「UP by Jawbone」。そしてもともとスポーツギアを扱ってきたNikeは「Fuelband」をリリースしているし、日本でも人気がある「FitBit」、デザイン性の高い「Shine」など、よりどりみどりの状態だ。
これらのデバイスのほとんどは、加速度センサーとバッテリー、そしてBluetoothを内蔵し、収集したセンサーのデータをスマートフォンに送り込む。スマートフォンのアプリは、これらのデータを集計・分析し、可視化する。
米国ではさらにファッション性を高めたり、新たなセンサーを搭載するものも登場している。例えば、FitBitは、ファッションブランド「トリバーチ」とのコラボレーションモデルを用意した。また、「Muse」は脳波をセンシングするヘッドギアだ。
前回ご紹介した「JINS MEME」は、眼電位と加速度センサーにより、体の状態をより詳細に取得するが、限りなく普通のデザインのメガネとして仕上げている。
スマートフォンと連携するスマートウォッチよりも、こうしたフィットネス系のウェアラブルデバイスの方が先行しているのは、明確な用途を示すことができたからかもしれない。
ウェアラブルデバイスの原体験

筆者のウェアラブルデバイスの原体験をふりかえると、2012年に購入した、リストバンド型デバイス、UP by Jawboneだった。
2013年6月にサンフランシスコにあるJawboneを訪問し、当時プロダクトマネジメント担当役員を務めていたブラッド・キットレージ(Brad Kittrage)氏は、24時間・7日間の人々の暮らしをサポートするデバイスとして、シンプルでデザインを優先して作っていると語っていた。
UPを装着すると、自分について分からなかったことが、色々見えてきた。特に驚いたのは、自分が寝ているときの状態が分かることだった。UPには、睡眠計測モードがあり、切り替えると睡眠時間中のレム睡眠、ノンレム睡眠、起きている状態を計測してくれる。例えば夜トイレに立った時間も克明に「起きている状態」と記録される。
そして、深い眠りの長さを知ることが可能で、毎日統計を取っていくことができる。例えば、お酒を飲んだ夜は深い眠りが少ないだとか、睡眠時間が短くても深い眠りが半分以上であれば、さほど眠気を感じないだとか、自分の体調と照らし合わせることもできるのだ。
ウェアラブルデバイスは常に身につけているため、自分の無意識の行動を記録してくれる。今まで“なんとなく”で、よく歩いた、よく寝た、と考えて来たことが、データとなって現れるのだ。
データを取るだけでも、感動できるほど、自分について知らなかったことが分かるようになる。そして、「その次」にも注目すべきだ。
例えば、眠りの質を高めるにはどうするか?
これは個人によって差があるが、筆者の場合、1日に8000歩以上歩いた日は、相対的に深い眠りが長く、よく寝られることが多い。しかし曇っている日や、午前中出かけなかった日は、もう少し歩かないと、深い眠りが長くならない。
2年間毎日計測を続けていくと、こうした「次の行動」を考える事ができる。もちろん上の例は素人がつかんだ感覚的な相関関係だが、スポーツ医学や生活習慣のトレーナーや医師が、データを活用したアドバイスを行ってもよいだろう。
ウェアラブルデバイスの必須条件とは
自分の日々について、いろいろな気づきを提供してくれるリストバンド型デバイスだが、UPを使っていて、いくつかの気づきがあった。
まず、UPは2年間ですでに3回交換してもらった。初期バージョンは特に、バッテリーが上手く充電されなくなる問題を抱えていて一時発売中止になっているが、その後も何度かうまく充電されなくなってしまったことがあった。
毎日使い続けるという点で、耐久性は最も重要な要素であり、軽くシンプルに作ることと、壊れにくいこと、水に強いことが必要だ。電子機器としては非常に厳しい環境にさらされデバイスであることが分かる。
加えて、さらに難しい問題は、バッテリーの持続時間だ。幸いなことに、UPは液晶ディスプレイやBluetooth・Wi-Fiといった無線通信など、バッテリ消費が多くなりがちな機能をそぎ落とし、スマートフォンとの同期もイヤフォンジャックを通じて行う形式を取った。
そのおかげで、1度充電するとおよそ10日間、バッテリーが持続した。つまり、1カ月に3回充電すればよかったのだ。後に、Bluetoothの省電力化が進んで、後継モデルであるUP 24 by Jawboneが登場し、Bluetoothでの同期も可能になったが、JawboneがUPで優先したのは、デザインとバッテリーの持続日数だったことが分かる。
ウェアラブルデバイスの場合、できるだけ身につけていた方が良いこともあり、充電の頻度は少なければ少ない方が良い。充電のたびに体から取り外す必要があると、かなり面倒なのだ。
充電しながら出かけてしまって、その間のトラッキングができない、ということが、UPの1カ月3回の充電頻度ですら起きてしまったからだ。
もちろん、ブランドやデザイン、センサーの種類、アプリの便利さなど、各製品で違いはある。しかし、実際に使っていて最も重要なポイントは、耐久性とバッテリー持続日数だった。
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