第1回「なぜ、プレイヤーはマニュアルを読まなくてもゲームを遊べるのか?」なぜ、人はゲームにハマルのか?(2/2 ページ)

» 2009年10月23日 12時00分 公開
[鴫原盛之,ITmedia]
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 あらためて「スーパーマリオ」のムービーを見ていただきたい。キノコは出現すると必ず右に向かって動き出す性質があるので、通常はそのまま放置していると画面外へと消えてしまう。しかし、このワールド1-1の場面では画面右側に土管が立っているため、たとえキノコを追いかけなくても途中で土管に必ずぶつかり、左へと向きを変えるようになっている。つまり、マリオのいる方向へとキノコが自然に向かってくるよう、あらかじめ計算したステージ構成になっているのだ。

 画面内にいちいち説明文を表示したり、あるいは音声でルールを案内するような演出を盛り込まなくても、キノコを取るとマリオがパワーアップできることがプレイヤーにきちんと伝わるよう、見事に設計されたステージマップの構成にはあらためて脱帽である。

 同じく任天堂の名作アクションアドベンチャーゲーム、「メトロイド」の第1作目にもこれと似たようなシーンが存在する。

 ゲーム開始直後、主人公のサムスを画面向かって右側にしばらく進めると、やがて通路が狭まっていて通り抜けることができない地点にぶつかる。ここを通るためには、サムスが体を丸めて小さくなる能力が得られるアイテム、「丸まり」を手に入れることが絶対に必要だ。


(C)1985 NINTENDO
※Wiiのバーチャルコンソール版にて作成。

 「メトロイド」のムービーを一度見ていただければ、筆者が何を言いたいのかはもうお分かりだろう。あえて通路を狭めて「通せんぼ」をすることで、どのプレイヤーにも通り抜けるための謎を解く機会を与え、ゲーム全般をとおして重要なアイテムとなる「丸まり」の存在および使用法を自然と教えてくれる仕組みなっているのである。

 このように、ゲーム序盤の一見すると何気ない場面であっても、プレイヤーに基本となるゲームシステムを自然と理解させてしまう仕掛けが随所に散りばめられているのである。こんなところにも、遊んだ人がゲームについつい夢中になり、同時にソフトがたくさん売れる大きな秘密が隠されていると言えるだろう。

 なお、今回紹介した演出については、立命館大学映像文化学部教授のサイトウ・アキヒロ先生とライターの小野憲史氏による著書、「ニンテンドーDSが売れる理由」(秀和システム)の「ゲームニクス理論2」でも詳しく解説が載っている。また、同じくサイトウ先生の著書「ゲームニクスとは何か」(幻冬舎新書)においても、上記のようなマニュアルなしでもルールを理解してもらうための仕組みがで書いてあるので、興味のある方はぜひご一読いただきたい。思わず目からウロコの興味深い分析が満載である。

 それでは、第1回目のお話はここまで。次回以降も「なぜ、人はゲームにハマルのか?」を、テーマを変えていろいろとお伝えしていくのでお楽しみに!

著者プロフィール

鴫原 盛之 Morihiro Shigihara

1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)など。

 「ITmedia Gamez」読者のみな様こんにちは! 今年でゲーム狂い歴30年、仕事歴16年を迎えた業界の「生きた化石」こと、鴫原盛之と申し上げます。

 今回より唐突に始まりました、「なぜ、人はゲームにハマルのか?」はお楽しみいただけましたでしょうか? お読みになったみなさんからのご意見・ご感想などもぜひお聞かせくださいませ。

 これからもゲーム好きのみなさんが「あ、そうだったのか!」とか、「言われてみれば確かにそうだよね〜」などと、目からウロコの分かりやすい&楽しいコラムとムービーをご提供させていただきたいと思います。では、以後ごひいきに!


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