FitbitのPebble買収に見る、ウェアラブル市場の世代交代(2/2 ページ)

» 2016年12月23日 06時00分 公開
[松村太郎ITmedia]
前のページへ 1|2       
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 69ドルという価格がつけられた、Pebbleの文字盤よりもやや大きなデバイスは、GPS、3G、Wi-Fi、Bluetoothの無線通信を備え、位置情報付きで緊急通報が行える仕組みを備える。またSpotifyを外出先で楽しむ事ができ、スマートフォンなし、単体でPebbleとの連携を行うことができる。

 スマートフォンなしでランニングに出掛けられるウェアラブルホストデバイス、という位置付けだ。ウェアラブルデバイスが3G通信を行えるという点、そしてスマートウォッチの親機になれる点が面白かった。

 しかし、このアイデアは、2016年5月にGoogleの開発者会議「Google I/O」で披露されたAndroid Wear 2.0において、LTE通信をサポートするスマートウォッチの姿としてより踏み込んだ機能性を実現していた。

 また、Appleは2016年9月に発売したApple Watch Series 2で、GPSを内蔵し、ランニング向けの欠点を補っている。

惜しまれる声と、製造に関する難しさ

 Pebbleは、2016年のホリデーシーズン(11月末の感謝祭からクリスマス)に向けて、Pebble 2、Time 2、Pebble Coreという3つの製品をリリースした。これらが感謝祭の前に店頭に並ぶようなタイミングであれば、11月末に会社を売却する判断をしなくて済んでいたかもしれない。

 また、Kickstarterで多くのファンを集めてきただけに、Pebbleとしての存続がなくなった点に、残念がる声も多い。

 ただ、スマートウォッチの問題は、Pebbleだけの話ではない。現在のスマートウォッチ市場全体が、販売台数面、そして機能面で、停滞期に入っているからだ。

 Appleは、Apple Watch Series 2こそ、予定通りに出荷するに至ったが、これをリリースする直前の2016年第3四半期には前年同期比51.6%減と急ブレーキがかかった。2016年10月からの3カ月間、新製品効果も期待されるが、需要が高まるかどうかは不透明だ。

 Pebbleを買収するFitbitも、欧米のホリデーシーズンに向けての販売予測を下方修正し、株価はこれまでで最も低い水準に沈んでいる。

 当初の発売から6週間遅れ、初回分もすぐに完売してしまったAppleのAirPodsの例もあり、これまでのように購買が最も活発になるホリデーシーズンをめがけた新製品の発売、というサイクルでの製造が、難しい世界になってきたように思う。サプライチェーンマネジメントに定評があるAppleですら、こうなのだ。

 ハードウェアメーカーは、世界中のスマートフォンユーザーが顧客となる際、世界的なトレンドに対して、製品の製造が追い付くことも、トレンドが消えたときの急激な落ち込みへの対処も、既にできなくなっている。2017年以降、製造の問題が顕著になっていくだろう。

データか、デバイスか

 他方、Pebbleが企業をスタートさせる際に活用したアクセラレータY Combinatorでは、現在、「データ至上主義」の企業が大半だ。ハードウェアの有無にかかわらず、ユーザーからのデータを集め、ここから新たな価値を生み出す、というモデルが流行っている。

 例えば、小石のようなマインドフルネス・アクティビティートラッカー「Spire」は、人々の活動とともに呼吸数のデータを1日中取り続け、リラックスや集中力の状態をユーザーにリアルタイムで伝え、トレーニングを提供し、また統計的なデータや分析は、個別の疾患を察知、あるいは改善するために活用されるという。

 現在存在しないデータを集めて、データプラットフォームをビジネスの中心にする、というアイデアだ。これは、アクティビティー計測のFitbitにとっては都合の良い未来だ。

Spire Spire

 しかしPebbleは、Pebble Coreを登場させているあたり、もう少しデバイスとしてのスマートウォッチについて深く考えていく姿勢が見られる。コンピューティングとは何か、身につけたデバイスでの可能性は何か。Pebble Coreにハッカー向けの機能が用意されている点も、そうした思想の表れだろう。

 その点で、デバイスからビジネスを組み立ててきたAppleの方が、Pebble買収によって良い未来が描けたかもしれない。ただ、AppleはPebbleを買収しても、Beatsのようには扱わず、すぐに製品ラインからサポートまでをストップさせていただろう。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/15/news106.jpg 「二度と酒飲まん」 酔った勢いで通販で購入 → 後日届いた“予想外”の商品に「これ売ってるんだwww」
  2. /nl/articles/2405/16/news184.jpg どういう意味……? 高橋一生&飯豊まりえの結婚発表文、“まさかのタイトル”に「ジワる」「笑ってしまう」
  3. /nl/articles/2405/16/news185.jpg “ジョジョ婚”じゃん! 結婚報告の「岸辺露伴」高橋一生&飯豊まりえ、“連名サインの本名”に集まる驚きの声「直筆見て初めて知った」「これが正解」
  4. /nl/articles/2405/17/news026.jpg トリミングでシーズーを「ハムスターにしてください」とお願いしたら…… インパクト大の完成形に「可愛いーーー」「なんて愛おしい鼻毛カール」
  5. /nl/articles/2405/17/news019.jpg リモート会議中の“マナー違反”に共感の声が殺到 「全く同感」「マナー講師はなぜこれを教えないのか」
  6. /nl/articles/2405/16/news123.jpg “1K8畳”の新居を一人暮らし男子が模様替え→“ホテル”みたいに大変身する様子に「シャレオツ」「センスよー!」と称賛
  7. /nl/articles/2405/17/news054.jpg 「これは罠」「本当に紛らわしい」 現役清掃員が教える「保冷剤」を捨てる際の“落とし穴”が話題
  8. /nl/articles/2403/21/news104.jpg 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. /nl/articles/2405/17/news046.jpg 北陸新幹線に空のペットボトルを持って乗ると…… “あるもの”が見える実験に「知らなかった」「教科書よりわかりやすい」
  10. /nl/articles/2405/16/news194.jpg 牛丼チェーン「松屋」、深夜料金を導入 一部の店舗で
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評