編集部一ネコに愛されているのは誰か選手権、開幕です!:負けられない戦い(2/5 ページ)
動かざること山の如し ネコを探すのではない、ネコから寄って来い(戦略:トラップ)
実はネコアレルギーなんです
ある日の編集会議で、「みんな会社を飛び出して、ネコを探しに行こう」と誰かが言いだした。そして「どれだけ多くのネコ写真を撮れたか競い合ったら面白いんじゃない?」とも提案が。編集部員は「面白そう」「それいいですね」とノリノリだ。だがそんななか、1人の記者の顔色が曇っていた。
その記者というのは、わたし笹山。なんというか、つまり、ネコアレルギーなのだ。見てる分には大いに結構なのだが、ネコに近づいたり触ったりすると、くしゃみが止まらなくなり、次第に発疹が出てきてかゆくなってしまう。だが面白そうな企画だし、ゆるく楽しい取材記事ができそうだ。私1人のために、この企画をつぶす訳にはいかない。
さてどうしたものか。ネコに近づかずにネコを撮る方法はないだろうか……。 そうだ! 「おとり作戦」はどうだろう。餌を離れた場所に置いておき、あとは動かざること山のごとし、ネコがやってくるのを待つだけ。そうすればネコに近づかずに写真を撮れる。これは名案だ。そうとなると陣取る場所と禁止されたエサやり行為をどうごまかすか……! なるほど、“許可があれば”いいわけだ。許可、取りに行こうじゃないか。
動かざること山のごとし。おとり作戦の結果はいかに
撮影当日がやってきた。ほかの記者はまたたびを持参したり、事前にネコが多く生息する地域を調べたりとやる気満々(しかも足元はスニーカー)。とりあえず歩き回ってネコを探す作戦らしく、みんな町へと飛び出て行く。一方記者はその見送りを終えると、作戦を実行するため、1人許可をいただいた駅近くのお寺へ。一応辺りをちょっとだけ探してみたが、ネコは見つけられなかった。まあ、そのうちエサにつられて出てくることだろう。
一般の方の邪魔にならないよう、お寺の隅にあるベンチを陣取り、準備を始める。ネコがあまり多くやってきてしまうとアレルギーが出てしまうので、用意したにぼしやネコのエサを遠慮がちに地面に置いた。あとは待つだけなのだが、撮影時間は60分と待っているだけだとちと長い。ううむ、暇だ。
だがこんなこともあろうかと、“念のため”漫画や本を10冊くらい用意しておいたのだ(別にサボろうなんて思ってないからな!)。1冊目、2冊目……おっと、おとりの存在を忘れていた。確認してみるも、ネコはまだ現れていなかった。「まあ朝ごはんでも食べるか」とコンビニで買ったおにぎりを食べる。そしてまたおとりを確認。ネコが現れる気配はまったくと言っていいほどない。
もしかしたら1匹も撮影できないのでは……? だんだん焦ってきた。ううむ、エサを用意したのにネコが出てこないなんて予想外だ。ネコの気持ちが分かっていないからかと、ちょっとにぼしをかじってみる。ぐへっ、人間がそのまま食べるものではなさそうだ。とりあえず落ち着こう。焦ってもしょうがない。そういえば記者がいるお寺は、撮影後の集合場所にもなっている。つまり時間ギリギリまで作戦を実行できるわけだ。冷静に考えてみればそこまで焦る必要はない。気を取り直してネコを待とう。
すると、ついにおとり周辺に何者かの気配が! ネコか!? 読んでいた本から目を離し、顔を上げてみると、先輩記者だった。ガッカリ……。ここでタイムアップとなり、ほかの記者も続々と集まってきた。みんな撮影したネコの写真を見せ合っているが、記者はその輪に入れない。気を使って「どうだった?」と聞いてくれたが、苦笑いすることしかできなかった。「すいません、1匹も撮れませんでした……」。
振り返ってみれば、撮影時間はネコがあまり活動しない午前中。しかも記者がおとりを設置していた場所が日陰で、暖かい日なたが好きなネコが寄ってこないと指摘される。加えて周りには植木や壁に囲まれていたので、死角になっていたと考えられる。そりゃ撮れなくて当然か。とほほ……。
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