「幸せに暮らしていますか」 伊達さん(高橋一生)吠える、怯える ドラマ「プリンセスメゾン」4話ねとらぼレビュー

東京の空の星は、見えないこともないんだな【やわスピ×ねとらぼ】※更新あり

» 2016年11月17日 18時00分 公開
[たまごまごねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 もっさり系女子、26歳の沼越さん(役:森川葵、以下沼ちゃん)が、マンションを買うために不動産屋に通うドラマ「プリンセスメゾン」は、NHK BSプレミアムで放送中。Webでも公開中。マンガ原作はやわらかスピリッツで連載中、スクロールしていくとここでも読めますよ!


プリンセスメゾン ドラマ「プリンセスメゾン」


伊達さんはいつも必死


プリンセスメゾン 伊達さん(高橋一生)

 真面目で、あまり感情が見えないパーフェクト社員伊達さん。

 彼は、自分が住む「武蔵小杉」がものすごく好きな土地のよう。適当な呼び方をされた時、地元民としてのプライドと、自分の熱い思いがほとばしり、キッとなって訂正をします。同じ会社で働く阿久津さん(舞羽美海)いわく「あの人に初めて温度を感じました」

 そして伊達さん、水の上が極度に苦手。船着き場で腰が抜ける始末(かわいい)。沼ちゃんですらも「伊達さんにも怖いものがあるんですね」。ニヤっとしたのは、みんなが伊達さんを、身近に感じたから。


プリンセスメゾンプリンセスメゾン 水が苦手でフラフラな伊達さん

 伊達さんは、本当は強い人じゃないと思う。確かにちょっと発言はおっかないし、バリバリ仕事こなすマシンだし。しかし彼だって人間。苦手なものも、好きな場所もある。むしろ、感情を見せないのは冷淡だからじゃなく、仕事と戦うのが怖いからなんじゃないかなあ。

 初めてマンションを売った時。伊達さん、同じ無口ではあるのだけど、「ビビっている」方の黙りでした。

 今、伊達さんは沼ちゃんという「家を買うことの価値観」を思い返させる人間に出会った。みんなの前で完璧を演じていたのに、自らの中の「怖いこと」「緊張すること」が一気に襲ってきた。

 伊達さんは、最初のお客さんの家に行きます。

 「この家を買ってよかったですか。本当にこんな広い家必要でしたか。……幸せに暮らしていますか」

 伊達さんが今まで絶対見せなかった、感情的な姿。彼の震える声。泣きそうな瞳。お客さんに「幸せに暮らしていますか」なんて、絶対聞いちゃダメだよ。でも「自分がしている仕事は本当に誰かのためになっているのか」は、伊達さんの中の最大の不安だった。

 だって、家って一生がかりの、ものすごい額だもの。無責任にすすめていなかったか? 買ってくれた人は、損をしたと感じていないか? 自分がやっていることは、相手の幸せになれていたのか?

 相手の人生に自分が介入してもいいものなのか?

 沼ちゃんの両親が死んでいるのを聞いて、何も言えなかった無力感。

 伊達さんの心はまるで、水の上でふらふらしているボートのよう。彼の心は波に揺られ、今までとても不安定で、無理やり言い聞かせて押さえ込んできたんだと思う。だから沼ちゃんの一生で一度の買い物に、自分はどう接してどう売るべきか、ものすごく慎重。彼女にだけ、客ではなく生徒のように厳しいのも、きっと心配だから。

 人と接したがらない彼が、顧客だった勝木さん(宮本裕子)を誘ってお酒を飲みながら話し合った。沼ちゃんの働く居酒屋をこっそり、のぞきに行った。

 この回以降、伊達さんは一皮も二皮も向けた、大きな人になると思う。


プリンセスメゾン 沼ちゃんの居酒屋をのぞきに来た伊達さん

プリンセスメゾン この角度です

無表情を作る高橋一生はすごい

 伊達さんを演じる高橋一生が、すごい。「シン・ゴジラ」の安田や「信長協奏曲」の浅井長政、「耳をすませば」の天沢聖司などを演じた人気俳優。今回は感情が全く見えない、というかなり特殊な役柄です。

 表情を変えない演技は、ものすごく難しい。何しろ「同じ顔」で、色んな感情を表現しないといけない。伊達さんの場合「感情を出すのがヘタ」「感情をわざとおさえている」「熱血で情に厚い」「冷静で管理が完璧な上司」「怖いものの前で平静を装う」を、全部同じ顔で演じないといけない。

 今回は過去話で「新入社員でうまくいかずおびえている」シーンも演じる必要が出てきました。顔は今の伊達さんと同じ(やっぱ感情表現自体がうまくない)なんだけど、目線がフラフラしていて、身体の端々がこわばっている。止め絵ならあんまり変わらないのに、動いているのを見たら別人。

 最初のお客さんの家に、不安が止められず訪れたシーン。やっぱり表情は変わらない。ポーズも棒立ちで変わらない。でも、動画で見るとあの厳しいしつけ主のような伊達さんが、まるでおびえる子犬のように必死な動きをしている。声はふるえ、身体中がひきつり、限界の壁に当たって、必死にもがいている。画面から伊達さんの感情があふれてくる。

 家に帰って、フジファブリック「茜色の夕日」を歌うシーン。でもやっぱり表情は変わりません。

 高橋一生はこの時、伊達さんの心の全てをのどで演じました。セリフは少ない。のどの動きで、数多くのことを雄弁に語ります。

 「東京の空の星は 見えないと聞かされていたけど 見えないこともないんだな そんなことを思っていたんだ」(フジファブリック「茜色の夕日」より)



 不安ばっかりだけど、思っているより、物事はうまくいくのかもしれない。そんなことを思ってしまった。毎回キャラにあわせた曲のチョイスが鋭い。今のところ沼ちゃんだけは歌ってないですね。

 5話予告では、要さんと沼ちゃんと伊達さんで兄・姉・妹を演じる、という妙な発言が。な、なにするの伊達さん。一皮むけすぎじゃない。そういうの好きだよ。


プリンセスメゾン マンガ「プリンセスメゾン」

漫画 第4話

11月23日更新:掲載期間が終了しました

(C)池辺葵/やわらかスピリッツ/小学館

たまごまご



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/15/news017.jpg “世界一美しいザリガニ”を入手→開封して見ると…… 絶句を避けられない姿と異変に「びっくり」「草間彌生作のザリガニみたい」
  2. /nl/articles/2405/16/news184.jpg どういう意味……? 高橋一生&飯豊まりえの結婚発表文、“まさかのタイトル”に「ジワる」「笑ってしまう」
  3. /nl/articles/2405/15/news047.jpg 耐火金庫に“溶岩”を垂らしてみたら…… “衝撃の結果”に実験者も思わず「なんだって!!!」と驚愕【海外】
  4. /nl/articles/2405/14/news131.jpg 「泣きそうになった」 くせ毛に悩む中学生が“垢抜けイメチェン” 美容師のスゴ腕に「ここまでできるなんて」
  5. /nl/articles/2405/15/news106.jpg 「二度と酒飲まん」 酔った勢いで通販で購入 → 後日届いた“予想外”の商品に「これ売ってるんだwww」
  6. /nl/articles/2405/16/news021.jpg GW10日間、毎日人間の相手をして疲れ果てたワンコの表情に「爆笑」「まじで愛おしいww」 最終日の異変に4万いいね「蛭子さんみたい」
  7. /nl/articles/2405/15/news133.jpg 複数逮捕&服役の小向美奈子、“クスリ”に手を出した理由が壮絶すぎ……交際相手の暴力で逃亡も命の危機 「バレてバルコニー伝って入られて」
  8. /nl/articles/2405/15/news173.jpg 人の心ないんか……? ピーターラビットの「悲しすぎるガチャ」に反響続々 お父さんの“まさかの姿”がショッキング
  9. /nl/articles/2405/16/news012.jpg 生後3カ月の赤ちゃん、ママの全力「いないいないばぁっ!」に…… 予想外の反応に→ママ「もう謝るしかないです(泣笑)」
  10. /nl/articles/2405/14/news037.jpg こ、これは……! 電子レンジで加熱した豆腐にネット民衝撃 「知らなかった」「えらいこっちゃ」と動揺走る
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評