「君の名は。」外伝小説は“もう1人の主人公”を描いた名作 三葉のブラジャーの好みが知りたいやつも読め!ねとらぼレビュー

映画本編では詳しく描かれなかったシーンがここに。

» 2016年09月16日 19時00分 公開
[青柳美帆子ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 新海誠監督の長編アニメ映画「君の名は。」が、累計動員数500万人・興行収入65億円突破の大ヒットとなっています。都会の少年・立花瀧と田舎の少女・宮水三葉が、“入れ替わる”という奇跡的なきっかけで出会い、惹かれ合う――というピュアで爽やかなラブストーリーに、これまで新海作品を見たことがない人々も惹きつけられました。


君の名は。 映画「君の名は。」ピュアピュアなラブストーリーに「まぶしい……」と震える

 圧倒的な「めっちゃいい話だったな……」という感覚にひとしきり浸ったあとに、「もっと2人のイチャイチャが見たい」「宮水家って結局なんなの?」などなど、要望や疑問が沸いてきた人も多いのでは。もちろん「それは薄い本で見ればいい」「こまけえこたぁいいんだよ!」としてもいいのですが、ここでオススメしたいのが外伝小説として発売された「君の名は。 Another Side:Earthbound」(角川スニーカー文庫)です。


君の名は。 “もう1人の主人公”を描いた外伝小説「君の名は。 Another Side:Earthbound」

 同書は全4話の短編集。「君の名は。」の世界がより広がるエピソードぞろいです。


デュフフ三葉ちゃんブラジャー何色?

 1話のタイトルは「ブラジャーに関する一考察」。三葉ちゃんの下着の色の好みが分かる短編です。……というと語弊が出てくるので、ネタバレなしにご紹介していきましょう。

 多くの男性が装着したことのないブラジャー。瀧くんも、ブラをつけたこともなければ外したこともありませんでした。そんな瀧くんがやらかしてしまったトラブルとは……!?

〈ちょっとおおおお! ブラくらいちゃんとつけてよ! だけど女の子の下着をまじまじ見たりしたらそれは変態行為だから報復するから!〉

 ――なんて叫んじゃったりする、正統派なラブコメ展開。その中にも、三葉という女の子のマジメさや、一生懸命さ、入れ替わった2人の生活の一端が描かれています。

 「君の名は。」の魅力の1つは、瀧と三葉のキャラクター。真っすぐで、キラキラしていて、一生懸命で、「みつはー、がんばえー! たきくーん、がんばえー!!」と(プリキュアを応援する女児のように)応援したくなる。

 特に三葉ちゃんは、作中で(入れ替わった瀧に)胸を何度も揉まれ、パンチラし、(入れ替わった瀧の体において)男子の朝の生理現象を体験させられ、“口噛み酒”という非常にフェチなアイテムを作らされ……と、これまでの新海作品にはないくらいエッチな目に遭っているヒロインです。でも「エロ」というより「スケベ」って感じにとどまっている素晴らしいバランス感覚が、「ブラジャーに関する一考察」でも発揮されています。



もう1人の主人公、宮水俊樹

 2話「スクラップ・アンド・ビルド」は、三葉の友人勅使河原(テッシー)が主人公。

〈しかし。時おり。この町をまとめて爆破したくなる。ぶっこわして、更地にしてしまいたいと、思うときがある〉

 土建屋の息子という自身の環境に複雑な感情を抱く彼の姿から、糸守で生活している人々のイメージが広がっていきます。

 3話「アースバウンド」のメインは妹の四葉。

〈「なるほど、宮水の神楽を舞うならば、いずくより来たりしものにせよ、そなたも宮水であるな」〉

 四葉が垣間見るのは、宮水家の秘密。「結局、宮水家ってどういう役割なの?」という疑問を晴らすような短編です。

 そして最後の4話は「あなたが結んだもの」。これは、三葉の母・二葉と、父・俊樹の物語です。

 「君の名は。」で大きなポイントになっているのは“父と三葉の関係”。母の死をきっかけに確執が生まれた――ということは本編中でも読み取れるのですが、心が離れてしまった経緯や、父の感情、そしてクライマックスでかたくなだった父が“動いた”理由というものは、はっきりとは語られませんでした。そんなファンの疑問に応えるのがこの4話です。

 映画本編では糸守の町長として、瀧と三葉の前に立ちふさがる存在である俊樹。しかし実は彼はもともとは、糸守の伝承を調査するべくやってきた研究者でした。彼はそこで、二葉と運命的な出会いを果たします。

〈宮水二葉はにこやかなまま、ほんのかすかに、困った顔をし、すさまじいことを言った。「どうしてだかわからないのですが、初めてお会いしたとき、私はあなたと結婚するような気がしたのです。どうしてでしょう。ふしぎですね」〉

 こんなことを言われて、オチない男がいるのか!?(反語)彼女の予言の通り、俊樹は二葉に惹かれ、恋に落ちます。

〈自分は、他人というものにほとんど心動かされないのだと、溝口俊樹は思っていた。状況に応じて、いくらでも愛想良くなることはできるのだが、すべて演技だ。他人と関係を結ぶということが、基本的にどうでもよかった。特にそれで不都合を感じたこともなかった。そういう生き方が、楽だった〉

 「秒速5センチメートル」の遠野貴樹のように、1人の女性によって世界の何もかもを変えられてしまった俊樹(そういえば名前も似てますね)。「君の名は。」の物語の中で、“宮水家に最も人生を動かされた人”は、瀧くんではなくて俊樹でしょう。

 映画本編では詳しくは描かれませんが、作中の悲劇は、俊樹の行動によって回避されます。なぜ彼が、“町長としての常識的な判断”を捨てて行動することができたのか。それを描いた「あなたが結んだもの」を読むと、俊樹お父さんは、ある意味ではもう1人の主人公なのだ――と思うかもしれません。


新海誠小説新海誠小説新海誠小説 新海作品のノベライズ

 「Another Side:Earthbound」を描いたのは、加納新太さん。加納さんはこれまでも「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」のノベライズを担当しており、おなじみのタッグです。

 これまでの新海作品の小説版は、映画が発表された後に作成されていました。そのため、映画とは微妙にラストが変わっていたり、“その後”が描かれたり……といった“ファンサービス”的な要素もあったのです。

 しかし、今回の「君の名は。」はほぼ同時に発売。「小説 君の名は。」(KADOKAWA)は、細かいやりとりやエピソードが変わってはいるものの基本的には映画と同じ。その分の“お楽しみ”が「Another Side:Earthbound」には詰まっています。

青柳美帆子

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた