小中学校へ携帯電話持ち込み、10年で「原則禁止→解禁」の大転換 ネット上は解禁反対派が6割(1/2 ページ)
どうして真逆の対応に?
「小中学校へのスマホ持ち込み原則禁止」方針、文科省が見直しへ―― 各社が報じているこのニュースが、議論を呼んでいます。
文科省は2009年、「携帯電話は、学校における教育活動に直接必要のない物」などの理由から、小中学校では生徒の持ち込みを「原則禁止にすべきである」と通知。それから10年たった今、なぜ指針見直しの動きが起こっているのでしょうか。
「持ち込み禁止」が生まれた時代背景
先述の通知が行われた当時は「携帯電話を持っている子ども」が珍しくなくなっており、文科省の調査によれば、小学6年生の約25%、中学2年生の約46%、高校2年生は約96%が所有していたとのこと。いわゆる「学校裏サイト(※)」などが問題視されていた時期で、同省はネットいじめの対応事例集を公開するなどの対応を行っていました。
※学校裏サイト:特定の学校の話題を扱う非公式コミュニティーサイト。個人に対する悪口が実名で書き込まれるなどの被害が指摘されている。
また、全国に先駆けて携帯電話持ち込み禁止の方針を打ち出した大阪府の実態調査(2008年度)では「携帯電話依存傾向が高いほど学習時間が短く、いじめ被害者、加害者になりやすい」と考察。さらに、保護者が認識しているよりも「児童生徒はネットをよく利用」「掲示板、ブログで悪口の被害」「携帯電話の使い方について、家庭内での約束を守っていない」とも結論付けられています。
その一方で、「携帯電話を持っていて便利と思いますか」という質問に対しては小学生〜高校生のいずれの年代でも、「とてもそう思う/まあまあそう思う」という回答が大多数で、理由で多いのは「緊急や普段の連絡に便利」というもの。保護者が「子どもに携帯電話を持たせている」理由も「通常及び緊急の連絡手段のため」が最多となっています。
つまり、携帯電話は「連絡などに便利なもの」「いじめ、学力低下などのリスクがあるもの」という二面性があり、うまく扱えれば役立ちそうですが、「大人側が使用状況を把握しがたい」という難しさがあるというわけ。小中学校における携帯電話持ち込み禁止はこういった複雑な問題に行政がとった対処法“の1つ”で、大阪府も文科省も「合わせて『家庭内でのルール作り』『有害情報に関する啓発活動』などが必要」としています。
「携帯電話持ち込み“解禁”=学校で自由に使える」ではない
報道によれば、大阪府は同府北部を震源として発生した地震(2018年6月18日)をきっかけに、小中学校への携帯電話の持ち込みを“解禁”する新ガイドライン案を制作。2019年2月19日、この件に関し、記者から質問を受けた柴山昌彦文部科学大臣は、文科省でも「大阪府の動向を注視しつつ」「(方針の)見直しに係る検討」を行う考えを明らかにしています。
とにもかくにも、大阪府が一足早く“解禁”の方針を明らかにした形になりますが、これは「小中学校で自由に携帯電話を使用できる」というわけではありません。携帯電話持ち込みの許可はあくまで「防災・防犯」のため。毎日新聞の報道によると、大阪府の作成したガイドライン素案は以下のような内容が記載されており、「持ってきても、緊急時以外は使わせない」方針であることが伺えます。
- 登下校の所持の目的は防災・防犯のため
- 校内では使わない
- 登下校時も緊急時以外使わない
- 保護者も災害などの緊急時以外は連絡しない
※毎日新聞「公立小中学校でスマホ持ち込みのガイドライン作成 大阪府教委が素案」より
さらに家庭での使用時間、SNSの利用方法などにルールが設定されており、従来の方針をおおむね踏襲するものともいえそうです。
校内への持ち込みに関しては大きく変わったように見えますが、現行の文科省の方針でも「通学時における安全等の観点等特別やむを得ない事情」がある場合は「居場所確認や通話機能に限定した携帯電話の持ち込み」を例外的に許可してよいとされています。
例えば、南海トラフ地震が発生すると、大阪府では甚大な被害が出てしまう可能性が。大阪府の新方針は、子どもに携帯電話を持たせるデメリットよりも、「安全等の観点」を重視してメリットを生かす方向に舵を切った結果なのかもしれません。
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