
Googleのストリートビュー撮影車が昨夏から約半年間、東北を駆け抜けた。ハンドルを握ったのは地元出身のドライバーたち。車体には「がんばろう東北」と書かれた特製ステッカーを掲げた。行く先々で励ましの声を掛けられ、時には被災者からお菓子やコーヒーが差し入れられたという。
走行距離はのべ4万4000キロ。撮影した写真は昨年12月、Google マップと特設サイト「未来へのキオク」で公開した。実際に内陸部から海岸へストリートビューをたどると、がれきの山が増え、何もない大地へと変わっていく。地震と津波の被害の大きさ、広がりが見てとれる。
東北での撮影に際して地元自治体との交渉を担当した、Google日本法人戦略事業開発本部ストラテジックパートナーデベロップメントマネージャーの村井説人さんは「防災は震災を知ることから」と話す。記録による支援――Googleにしかできないプロジェクトは今、走り始めたばかりだ。
「記憶に残しておくべき状況は今」と決断
東北で震災後の街並みを撮影するアイデアは、Google内でかなり早い段階から検討されていた。だが、さまざまな人の感情に配慮し、一旦は議論をストップ。災害関連情報を集めた特設サイト「Google Crisis Response」を始め「ほかにやるべきことにフォーカスしていった」と村井さんは振り返る。
Crisis Responseを担当する1人として震災から2週間後に現地入りした村井さんは、地元の商工会やNPOと話すなかで「Googleマップで今の街並みを残してほしい」という声を何度も聞いた。被災地は広い。「現場の悲惨さを一生懸命伝えようとするが、テレビで瞬間を映すだけでは伝えきれない部分がある。ストリートビューで補完できれば」と語るメディア関係者もいた。だが、住民の反応などリサーチしきれていない部分が多く「慎重にやるべき」と、検討を継続することにした。

この頃、被災地へ通じる道は混雑することが多く、ガソリン不足も深刻。「皆さんの大事なガソリンを使うわけにはいかない。ストリートビュー撮影車が走ることで迷惑かけるわけにはいかない」と、撮影のオペレーションを統括するGoogle日本法人Googleマッププログラムマネージャーの大倉若葉さんも、撮影に入るタイミングを考え続けていた。
プロジェクトが本格的に動き始めたのは昨年5月。「あと半年たったら街並みがどのような状況になっているか分からない。我々が記憶に残しておくべき状況を撮れるのは今なんじゃないか」――村井さんがメールで社内の関係者に呼びかけた。
もちろん撮影するデメリットもないわけではない。「その場所で1万人を越える人が亡くなっている。ストリートビューを見るだけで辛い記憶を蘇えらせてしまったり、我々が意図しない形で画像が使われてしまったり、思っているのもとは違うインパクトを与えてしまうことへの懸念はかなり慎重に考えた」(村井さん)
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