「んヴぇ〜」「んヴぇ〜」――オフィスビルが立ち並ぶ渋谷に、ヤギの鳴き声が響き渡る。声の主は「桜丘カフェ」(渋谷区桜丘町)の看板ヤギ「さくら」と「ショコラ」だ。なぜ渋谷のカフェにヤギがいるのだろうか? その謎を解くべく、“ヤギカフェ”を訪れた。

桜丘カフェは渋谷駅から徒歩5分ほどの場所にある。外観は一見したところ渋谷ならではのオシャレなカフェだが、普通のカフェにはないものが1つある。それはヤギ小屋。なんとテラス席の隣にヤギ小屋があるのだ。牧場のカフェなら驚かないが、都内のカフェにヤギ小屋があるのは聞いたことがない。小屋には、白いヤギと黒いヤギが1頭ずつ暮らしている。
ヤギを飼うことになったのはオーナーの“ノリ”

桜丘カフェは、2009年3月のオープン当初からヤギカフェだったわけではない。オープンから1年後、オーナーが広いテラスを使って動物を飼ったらいいのではないかと考えたのがきっかけだ。猫カフェや犬カフェはありふれていて面白くない。渋谷でヤギを飼えば“シブヤギ”になって面白いのではというノリで決定したという。
ヤギたちがやってきたのは2010年5月。白いヤギは地名の桜丘にちなんで「さくら」と名付けられ、黒いヤギはその色と、カフェならではの名前として「ショコラ」と名付けられた。2頭ともメスだ。
ヤギの種類はそれぞれ別で、さくらはシバヤギでショコラはトカラヤギ。一般的にイメージするヤギより小さいのが特徴で、カフェに来てから2年近くたっているが、頑張れば抱っこできるサイズだった。さらに大きくなることはないだろうとカフェのスタッフは語る。


ご飯は干し草。午前中に取材させてもらった際はちょうど食事時で、記者のことなど気にしない様子で一心不乱にもぐもぐしていた。スタッフにお願いすれば直接エサをあげることもできる。なかなか牧場に出かける機会のない動物好きにはたまらないサービスだ。
小屋の隣にあるテラス席では、ヤギの様子を見ながら食事をすることができる。においがあるので、気になる人は店内にある小屋に面した席がオススメ。どちらも席を予約することが可能だ。


記念日の思い出にヤギ席を予約する人はもちろん、ヤギをペットとして飼っている人が、うわさを聞きつけて訪れることもあるという。
老後は田舎でヤギを……
午前中は黙々とご飯を食べていたさくらとショコラだが、夕方に再度訪れた際はヤギらしく「んヴぇ〜」「んヴぇ〜」と鳴いていた。鳴き声が近所迷惑にならないか気になるところだが、これまで特に苦情は来ておらず、それどころか癒しの存在になっているという。近くの保育園の子供たちが散歩で通ることもあり、ヤギたちは大人から子どもまで大人気だ。
オープン前の午前10時から午前11時には不定期でヤギの散歩も行う。店の近くを回る程度だが、運がよければ渋谷の道路をかっ歩するヤギたちに会えるかもしれない。ちなみに2頭は今年4月、桜丘カフェの運営元が出版する、渋谷のお勧めスポットを紹介する写真集の“主役”にもなる予定だという。
ヤギの世話はカフェのスタッフが行っている。スタッフが開店準備と一緒にヤギの世話をしている光景はとても大都会のカフェとは思えない。世話の仕方は独学で、ペットショップからエサのアドバイスをもらうことはあるものの、ほとんどは本で学んだ。
渋谷のカフェで働いているのに、なぜかヤギに詳しくなった桜丘カフェのスタッフたちだが、毎日ヤギに癒やされ、「老後は田舎でヤギを飼ってもいいかも」と思う瞬間があると話していた。


ヤギ好きな人はもちろん、都会で非日常的な体験をして癒やされたい人にもオススメだ。
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