最後の戦いは駆逐艦らしく水雷戦(だったらしい)
駆逐艦「卯月」(うづき)は、睦月(むつき)型4番艦にして1926年9月14日石川島造船所の生まれ。新造当初の名前は第25号駆逐艦だった。新造当初は姉の睦月と如月(きさらぎ)、弥生と一緒に第30駆逐隊を構成していたが、太平洋戦争開戦時は、同じ睦月姉妹の「菊月」「夕月」とともに第23駆逐隊を編制して第2“航空”戦隊に所属していた。これは、空母「蒼龍」「飛龍」の護衛、というよりは、発着艦に失敗して海上に不時着した搭乗員を救出するのを主な任務としていた。このような任務を持つ駆逐艦を搭乗員たちは「トンボ吊り」と呼んでいた。

しかし、「蒼龍」「飛龍」が参加した真珠湾攻撃には、航続距離の不足から参加できず、その代わりにグアム攻略やその後のラバウル攻略、ニューギニア北岸攻略、ブーゲンビル攻略、そしてポートモレスビー攻略(の準備作戦として行ったツラギ攻略)と、同じ睦月姉妹で構成する第30駆逐隊と同じ戦歴を重ねていく。ツラギ攻略で菊月が沈むと、第23駆逐隊は解散して卯月は第30駆逐隊に移籍。しかし、実質的にはソロ活動で、7月にはガダルカナル島に飛行場を建設する設営隊を輸送している。8月になって米軍がガダルカナル島に上陸して戦闘が始まり、第8艦隊が米上陸部隊泊地に突入して敵重巡4隻を撃沈した第一次ソロモン海戦では、帰投中に敵潜水艦の雷撃で沈んだ重巡「加古」の救助に出撃している。
第二次ソロモン海戦では、輸送船団護衛中に敵航空機の爆撃を受けて損傷。修理から復帰した後も輸送船団の護衛作戦に参加しては損傷して修理するということを繰り返している。しかし、何度も損害を受けながら沈むことなく護衛任務で戦歴を重ねた卯月は、1944年10月末のレイテ沖海戦敗北後も睦月姉妹で2人だけ生き残っていた「夕月」、そして、松型駆逐艦「桐」(きり)とともに、敵艦隊が包囲しているレイテ島オルモック湾輸送作戦(第9次多号作戦)に輸送艦と輸送船を護衛して参加する。卯月は61センチ三連装魚雷発射管と2門の主砲を降ろし、代わりに対空機銃と電探を増設してスペック的には“時代が求める護衛艦”となっていた。
日本海軍の公式記録では、卯月は損傷した輸送船を護衛して、本隊から分離してパロンポン湾で揚陸作業中警戒にあたり、作業終了後、本隊に合流すべく単独で向かったのち消息不明となっている。米軍記録によると、卯月は魚雷艇「PT-490」「PT-492」から雷撃を受けて、両艇が射出した6本の魚雷のうち2本が命中して沈没したとある。
開戦から攻略部隊、輸送船団と護衛任務で奮戦した“影の武勲艦”卯月は、みとる仲間がいない海に沈んでいった。生存者に関する記録は今に伝わっていない。
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