ネット銀行を利用する人が多い時代とはいえ、通帳に着々と増えていく預金残高を見るのがたまらないという人も多いはず。人とは、時折思い出の記録を懐かしみ余韻に陶酔するのが好きな生き物。さらに、ひとたびコレクションをスタートさせてしまうと、集める快感をむさぼるものだ。
そんな人間の心理をつくサービスが図書館で導入されている。その名も「読書通帳」。銀行の預金通帳のように、自分が借りて読んだ書籍の履歴が記載されるというもの。
2010年3月、全国に先駆けて日本初の「読書通帳」をスタートさせたのは山口県下関市の「市立中央図書館」。「下関市細江町三丁目地区整備事業」の一環として、以前からあった公共施設を含む周辺の再開発事業が行われた際、指定管理者制度により民間企業の運営がスタートした。そこで内田洋行が提案する読書通帳を採用したのがきっかけだという。ちなみに「読書通帳」という名称は、その後、内田洋行が商標登録を取得。この企業によるシステムにのみ使用されている。また、スポンサーには書店の紀伊國屋が入っている。


記帳するマシン
実施からまもなく6年目を迎えようとしている市立中央図書館について、教育委員会 図書館管理課の課長・高原さんは導入に関しこう評価する。
「小学生をはじめ、今まであまり図書館を利用してこなかった方にも読書意欲を向上させていると、ある一定の手応えを感じています」
しかしその一方で、「このサービスは行政区域が狭く人口密度が高いところで有効だと感じています。また運営コストなども検討の余地がありますね」と、先駆者としての課題点ものぞかせた。
とはいえ、現在では全国に読書通帳は飛び火。通帳のデザインもそれぞれ独自で展開している。中には銀行の通帳さながら、本の金額が印字される機械もあり、後から見て「こんなに本代が浮いたのかぁ」などとにんまりできる。

埼玉県鴻巣市立図書館
岐阜県海津市立海津図書館
さらに読書通帳は図書館だけではなく、なんと中学校の図書室でも実施がスタート。全国初となったのは、東京都江戸川区立上一色中学校。同校はもとより入学から卒業まで100冊読破を推奨していた学校であったこともあり、2013年度・14年度の奨励校として指定された際に導入した。全国に先駆けたモデル校として現在も活用されている。副校長も「子どもたちが積極的に読書をするようになってくれました」と喜ぶ。


自分が読んだ記録がすべて印字される読書通帳。本と歩んできた人生がつづられた一冊になるなんてなんともステキだ。現在は導入している自治体がそう多くはない上、自治体内でも主となる1施設のみなどまだまだ目に触れる機会は少ないもよう。しかし今後はこれが当たり前になってほしい、と本好きの1人として願う。
(浅井由起子/LOCOMO&COMO)
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