8月9日(日本時間)にリオデジャネイロオリンピックの体操男子団体で、3大会12年ぶりとなる金メダルを獲得した日本代表(関連記事)。表彰台のあとのインタビューで、内村航平選手は国歌「君が代」を歌ったことについて次のように答えた。
「声が裏返るまで歌ってやろうとみんなで言って、(演奏が)すごくゆっくり流れたので、ちょっと歌いづらかったですけれど、すごくみんな大きな声で歌えてよかったと思います」
ネットでは祝福の声が相次ぐ一方、国歌が“すごくゆっくり流れた”という発言に対しても共感の声があがった。「確かにリオで流れる君が代は、通常より遅めのテンポで、内村君が『歌いにくい』と言ったのも分かる」「私も国歌遅いな〜って思った」。Twitterでは体操男子団体の前から、今回のオリンピックの「君が代」はテンポが遅いのでは? という指摘がいくつも出ていた。

表彰台に立つ体操男子団体の日本代表。内村選手は右から2番目(加藤凌平選手のInstagramより)
体操男子団体の表彰台で流れた「君が代」のテンポを計ったところ、約35〜36bpm(※bpmが小さいほどテンポは遅く、大きいほど速い)。2004年アテネオリンピックで体操男子団体が金メダルを獲ったときは約49bpmともっと速かった。NHKでテレビ・ラジオ放送終了時に流れる「君が代」は50bpm……確かにリオ大会での国歌は通常よりもゆったりしているかもしれない。
表彰式の様子
日本オリンピック委員会(JOC)の広報部に問い合わせたところ、「過去のオリンピックに比べてリオ大会の国歌のテンポが遅いのは間違いありません」と、うわさは正しいと認めた。実はJOCでは2014年ソチ冬季大会から、長きにわたって使っていた「君が代」の音源をやめ、2013年に新たに録り直したテンポの遅い音源を用いているのだそう。
もともとオリンピックの国歌の音源は、開催のたびに大会組織委員会が各参加国のオリンピック委員会から集めて使用していた。しかし2012年ごろ国際オリンピック委員会(IOC)が、国旗掲揚のときに統一感を出すためにと、演奏時間を60〜90秒に収めた国歌音源をIOCに提出するよう指示。2016年リオ大会以降はIOCが集める音源を使うことになった。
JOCでは長く使っていた音源に音質の問題も感じていたため、読売日本交響楽団に新たな「君が代」の演奏収録を依頼することに。2013年9月に同楽団は下野竜也さん指揮のもとレコーディングに挑んだ。一度は日本人が歌いやすい普通の速さで演奏してみたものの、指定の60〜90秒より短い。より遅めに演奏し、現在のゆったりとした「君が代」が完成した。

読売日本交響楽団がオリンピック用に新たな「君が代」を収録している様子(読売日本交響楽団のニュースリリースより)
新音源は2014年ソチ冬季大会から使用したが、当時はフィギュアスケート男子シングルで羽生結弦選手が金メダルを獲得したときの一度しか流れなかった。リオ夏季大会では競泳・萩野公介選手が金メダルを獲得したとき、サッカーやホッケーといった団体競技の試合前など、新たな「君が代」が流れる機会が前大会時よりも多い。テンポが遅くなったことに気づく人が増え、内村選手の言葉をきっかけに注目を集めることになったのかもしれない。
「テンポについては『君が代』の演奏上許される範囲で遅くしており、JOCでも特に問題ないと思っています。選手たちの『遅くて歌いにくかった』という意見を踏まえて作りなおす可能性はないとは言い切れませんが、次の2018年平昌冬季大会、ユースオリンピック、2020年東京夏季大会など、当面はオリンピック・パラリンピックで使用していく予定です」(JOC広報部)
(黒木貴啓)
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