ジャガイモなら「メークイン」「男爵」、トマトなら「桃太郎」「りんか409」など、品種ごとにさまざまな名前が付けられている野菜たち。そのなかでも住化農業資材が開発しているホウレンソウの品種名が飛び抜けて“強そう”だと、先日Twitterで注目を集めた。

住化農業資材のホウレンソウたち。バハムートにチェックメイト、だとぉ!?(住化農業資材公式サイトより)
品種名を並べると、「バハムート」「イフリート」「ルーク」「ビショップ」「チェックメイト」「ペルセウス」「アルデバラン」……神話の魔獣やチェス用語、星座の名前。ゲームやマンガに出てくる召喚獣や敵の幹部みたいで、確かにめちゃくちゃ強そうだ。8月末にあるTwitterユーザーが「ホウレンソウの品種名は皆やたら強そうなのだが、その中でも住友化学は飛び抜けて強い」と指摘したところ、1万5000回以上リツイートされるなど大きく共感を呼んだ。
話題のきっかけとなったツイート。「勝てない」、めっちゃ分かる
野菜の名前ってこんなに自由に付けていいものなの? 住化農業資材に聞いてみたところ、「特に品種の名前について、法律や業界ルールは存在しません。住化農業資材では、品種を開発した担当者がそれぞれのセンスで名付けるようになっています」。
名前の理由はいずれも、病害への抵抗力や暑さへの耐性など、栽培する上での品種の強さを連想できるものにしているそう。例えば「バハムート」は病害への抵抗性が高い上に茎が折れにくいため、神話の怪獣・バハムートから命名した。「イフリート」も耐暑性が抜群という特長から、炎の魔獣として知られるイフリートに結びついている。確かに、暑さに耐えるどころか炎属性はすべて吸収しそうなイメージ。


「バハムート」に「イフリート」。病害も暑さも跳ね飛ばしそうだ
にしても、ホウレンソウだけ妙にゲームやマンガっぽい。ほかの住化農業資材の野菜でいうと、にんじんなら「紅ひなた」「愛紅」と和風だし、レタスなら「アスレ」「デローサ」「モデナ」と統一性があまり見られない。業界のなかで知らずの内に「ホウレンソウはかっこよく!」みたいな野菜ごとの暗黙のルールがあったりするのだろうか。
住化農業資材によると「野菜ごとに名前の方向性が違うのは、最初に付けられていた品種名を参考に、似たような名前を後の開発担当者が名付けている可能性が高いです」とのこと。ホウレンソウでは初期の段階では「ルーカス」という品種を開発していたが、それから開発者の趣味趣向が働き、「バハムート」や「ルーク」のような方向性になったのではないかと推測していた。


病害への強さをイメージした「スタウト」は「stout(丈夫な、頑丈な)」から、厳寒期の栽培に適した「ノルディック」は「nordic(北欧の)」から命名するなど、シンプルな名前もちゃんとある


似たような名前は同時期に開発されたもの
また同時期に品種を複数開発したとき、その当時の開発担当者がまとめて同じような名前を付けることが多いのだそう。「バハムート」「イフリート」、「ルーク」「ビショップ」「チェックメイト」はそれぞれの同じ時期に開発。ホウレンソウは今まで神話や星などロマンチックな名前で来ているから、今度の3種は全部チェスから名付けよう! みたいな発想で、「強そうなホウレンソウ」グループが形成されていったようだ。
企業ごとにルールは違うだろうが、命名の自由度がかなり高い野菜の品種名の世界。ユニークな名前を見つけるたび、名付け親の意図に思いを張り巡らせると楽しそう。とりあえず先ほどのホウレンソウを使って「バハムートのおひたし」とか「イフリートのごまあえ」を作ってみたい。
(黒木貴啓)
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