理化学研究所(理研)がiPS細胞由来の網膜組織を、目の難病「網膜変性」末期にあるマウスに移植。光に対する反応が回復したとの実験結果を発表しました。今後人間の治療への応用が期待されます。
網膜変性は、加齢や遺伝的要因により視細胞が変性・消失し、視機能が失われる疾患。末期においては、人工網膜以外の治療法は確立されていません。2006年のiPS細胞発見以来、これをはじめとする細胞由来の網膜組織を変性網膜に移植する試みが行われてきましたが、移植された網膜組織が成熟し、光を感知できた事例はありませんでした。

理研の研究チームは2014年に、マウスのES細胞やiPS細胞に由来する網膜組織が、移植先のマウスに生着し、高度に成熟した形態になることを報告しています。今回は新開発の評価方法により、網膜を移植したマウスの視機能を解析しました。
研究チームは交配により、網膜変性末期のマウスを実験体として作製。これに、別のマウスから樹立したiPS細胞を用いた網膜組織を移植しました。
実験内容は、自由に行き来できる2つの部屋に実験体を置き、片方の部屋へ不定期に光のシグナルを発したのち、放電する訓練を繰り返すもの。マウスが移植により視機能を回復していれば、学習するにつれてシグナルに気づき、電気ショックを回避できるようになるはずです。

実験の結果、実験体21匹のうち9匹に、光に対する行動パターンが改善したことが確認されました。視機能が回復したとみられるマウスは半分に満たないですが、今回の実験で移植された網膜は、全体の視野の5%未満。網膜のより広い範囲に移植すれば、改善率はさらに向上する可能性があります。
実験後はマウス7匹から網膜を取り出しての、機械による詳細な解析も実行。結果全サンプルにおいて、移植先に網膜全体としての光応答性の反応が検出されたとのこと。脳に視覚情報を送る神経節細胞からも、光応答性の反応が検出されたそうです。

これらの実験により、網膜変性末期のマウスにiPS細胞由来の網膜組織を移植すると、光に対する反応が回復することが分かりました。研究チームは今回の結果を、網膜色素変性患者に対する移植治療における“裏付け実験”として大きな意義があるとしています。
(沓澤真二)
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