海賊版サイト問題に子どもの漫画離れ――日本の漫画産業の行方に注目が集まる中、国内漫画誌で発行部数1位を誇る『週刊少年ジャンプ』(集英社)はデジタル領域にどのように取り組んでいくのか。
そんなジャンプの“未来”について語り合うトークイベント「ジャンプのミライ2018」が5月9日、東京都内で開催されました。IT関係者、開発者を招いてジャンプのデジタルサービスの「これまで」と「これから」について紹介するだけでなく、編集長たちがトークセッションを繰り広げるという異例な催しに。

「ジャンプのミライ2018」トークセッションの模様
トークセッションでは『週刊少年ジャンプ』の編集長・中野博之さん、「少年ジャンプ+」の編集長・細野修平さん、両誌の編集長を経て現在は集英社第3編集部部長を務めている瓶子吉久さん、「少年ジャンプ+」「ジャンプBOOKストア!」などの運営業務を担当したICE取締役の渡邉一弘さんが登壇。


左から渡邉一弘さん、細野修平さん、中野博之さん、瓶子吉久さん
今のジャンプに足りないもの、脅威に感じているコンテンツ、集英社内で横断的な漫画アプリは作る予定はあるのかなど、ジャンプの課題と展望について赤裸々に語りました。司会は集英社デジタル事業部の漆原正貴さん。
広告収入100%還元は他のジャンプアプリでもやってみたい
「実はジャンプグループはかなり早い段階からスマホアプリに取り組んでいました」とジャンプのデジタル分野の歩みについて細野さん。
『ONE PIECE』『NARUTO』といった作品単体のアプリをいくつか出したあと、2012年にはジャンプの電子書籍販売アプリ「ジャンプBOOKストア!」を、「Kindle」が上陸する前に配信開始。さらには「ジャンプLIVE」といった前身サービスを経て2014年に「ジャンプ+」をローンチしました。

「ジャンプ+」
細野: 「ジャンプ+」は今はアクティブユーザーが週間200万〜250万くらい、累計売上が84億円。『終末のハーレム』に『カラダ探し』、現在ドラマも放映中の『花のち晴れ』といったヒット作品も出し、われわれとしてもかなりうまく行っていると思っています。
ジャンプに関係するアプリはすでに15点も存在しています。中でも7日に配信されたばかりの漫画投稿アプリ「ジャンプルーキー!」は、投稿者に広告収入が100%還元されるという異例な高設定ぶりが大きな話題となりました(関連記事)。

『ONE PIECE』を超える大ヒット作品をジャンプで作るには“新人と出会う機会”を多く生み出すシステムが必要。そのために「ジャンプルーキー!」では環境をデジタルへと変えつつある描き手・読み手に集まってもらおうと、「ジャンプらしくないジャンルも募集」「縦スクロール漫画も大歓迎」など、“オープンな場”を意識してサービスを制作したそうです。
司会: こうした広告収入100%という試みは、他のジャンプアプリにも広げていく予定はあるのでしょうか?
細野: 「ジャンプ+」にも広げていければとは思います。正直われわれが作りたいものはヒット作であって、媒体として広告収入を得ることに大きなモチベーションはありません。広告収入が作家さんの意欲につながるのであれば積極的に還元して、ヒット作を作ってもらえる流れになればと考えています。『ONE PIECE』を超えるためには少しのお金はいい、という姿勢でやっていきたい。
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