「ムキムキに鍛えている人は水に浮かない」という話を耳にしたことはないだろうか。筋肉は重く脂肪は軽いので、筋肉が多い人は水に浮かびづらいのである。
逆に脂肪が多い人は水に浮く。すると、どこかに「ちょうど水に浮くか沈むかのボーダーライン」があるはずだ。

脂肪の多さを測る基準は、脂肪の重さが体重全体に占める割合を指す「体脂肪率」。水に浮きも沈みもしない体脂肪率はいくつだ?
「浮く」って何だ
そもそも「水に浮く」とはどういう現象なのだろう。
水の中にある物体は、その体積の水の重さ分だけ「浮力」を受ける(アルキメデスの原理)。例えば、水に体積1Lの箱を沈めたとき、その箱は1kg(=水1Lの重さ)の浮力がはたらく。
仮にこの箱自体の重さが0.8kgなら、0.8kgの重力と1kgの浮力の差し引きで0.2kg分の力が水に浮く向きに働き「浮く」のだ。

浮力について、よく「水より密度が小さい物体は水に浮く」という説明がされることがあるが、これも正しい。「水の密度×物体の体積」と「物体の質量」の比較は、「水の密度」と「物体の質量÷物体の体積=物体の密度」の比較と同じだからだ。
計算しよう
浮力のことが分かったところで話を戻そう。身体が沈むか浮くかは、身体の密度が水より大きいか小さいかによって決まる。
人体の密度に関する値はよく知られていて、体脂肪の密度は0.9g/cm3、体脂肪以外の筋肉や骨などの密度が1.1g/cm^3。この値と体脂肪率を用いれば、身体の密度は
0.9×体脂肪率 + 1.1×(1 体脂肪率)
と求められる。
身体の密度が水の密度(1.0g/cm^3)と等しくなる体脂肪率をこれから計算すると50%。よって体脂肪率が50%より大きい人は水に浮く! ってほんとか……?
マジ?
体脂肪率が50%というのは、病的なレベルでの肥満である。そんな人でないと水に浮かばないというのは何かおかしいように思うが、計算が間違っているのか?
水泳が得意な人なら分かると思うが、息をめいっぱい吸った状態で水に潜ると浮くが、水中で息を吐き続けるとだんだん沈んでいく。
身体の密度は肺の中の空気の量によっても変わり、息を吐き切った状態であればほとんどの人が水に沈むが、普通は息を吸った状態なので水に浮く。これが「体脂肪率50%が身体が浮くライン」の違和感の正体である。
死海の謎もバッチリ
ヨルダンとイスラエルの国境にある「死海」は、塩分濃度が高く身体が浮く湖として有名だ。死海で身体が浮く理由も計算できるのでやってみよう。
死海の塩分濃度は平均25%だという。死海の水1Lの中に含まれる塩は計算すると330g。塩水の重さが1L当たり(水1Lの重さと合わせて)1330gなので、密度は1.33g/cm^3となる。
筋肉と骨の比重が1.1g/cm^3だったから、体脂肪率0%のムキムキ超人でさえも死海では浮いてしまうことになる。息をいくら吐こうが浮く、すごい世界だ……。
これからプールに行く機会がある人は、息を吐きながら沈むというのをあらためてやってみると面白いだろう。うまく調整すると浮きも沈みもしない絶妙な息の量が見つけられるかも。
参考文献
脂肪は軽く、筋肉は重い!?実際どれくらい違うの? :タニタ からだクローズアップ
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