「いや、それは、そういう努力をしないと簡単に切れる関係だからですよ。結婚とか、簡単に別れられない社会的な契約も責任も何もないですからね、俺たちは」
「なるほど! でも、別れないための努力を惜しまないって素敵よ。夫婦ってそういうのないんだから」
2週間も間が空いてしまったドラマ24「きのう何食べた?」。禁断症状が出ているファンも多かったようだが、そのぶん終わるのが先延ばしになったと考えると気が紛れる。永遠に続いてほしいよ、このドラマ。

やっと放映日が来た、長かった、もう永遠に続いてほしいドラマ イラスト/たけだあや
先々週放送された8話は、登場人物の感情の機微の積み重ね、巧みな原作エピソードの組み合わせによって、シリーズの中でも屈指のドラマティックなエピソードになっていたと思う。
冒頭の会話は、シロさん(西島秀俊)と彼の良き理解者、主婦の佳代子さん(田中美佐子)によるもの。「別れないための努力を惜しまない」って、どんなカップルにも言えることだと思う。佳代子さんの言葉が胸に迫った既婚者、カップルの人も多かったのではないだろうか。
佳代子さんの慎み深さと優しさ
レストランで食事をするシロさん、ケンジ(内野聖陽)、そして鉄さん(菅原大吉)とヨシくん(正名僕蔵)の2組のカップル。一見、ふつうにおじさんたちが食事をしているだけのように見えるが、シロさんは周囲の目が気になって仕方がない。
原作では鉄さんとヨシくんとの食事のほうが、小日向さんとジルベールとのダブルデートより先であり、ドラマでは順序が逆になっている。人気者の小日向さんとジルベールを早めに出したいという事情もあっただろうが、逆になったことで新宿二丁目の店での食事なら問題ないが、普通のレストラン(しかも、居酒屋などではなくカップルが多い小じゃれた店)での食事でピリピリしてしまうシロさんの感情が際立つようになっていた。
帰り道、ケンジに激高するシロさん。怒気でケンジのピンクのシャツが揺れているように見える。原作ではこの直後、周囲を気にしすぎてしまう自分の小ささに苛立っているシロさんの内省があるのだが、ドラマではそれが飛ばされていた。それが後々効果を発揮する。
その代わり、佳代子さんの家で桃を入手する。ちょっとお高い桃を6個も買うのはケンジのため。それだけ反省しているということだ。これは原作ではまったく別のエピソード。シロさんの恋愛観(新しい出会いは面倒くさい)についての会話は原作通りだが、そこにケンジとの感情の行き違いがうまく練り込まれている。
2人の間に何かあったことを察するが、口に出さずにずけずけと立ち入らない佳代子さんは、陽気でおしゃべりだが、同時に慎み深く、優しい人だ。そういう人だから、シロさんは心を許すのだろう。
鉄さんとヨシくんが自宅に来ることになったシロさんは慌ててオーガニックな食材を売っているスーパーに行くが、バカ高い食材を見て考えを改めて、いつもの中村屋へと出向く。このとき、「こういうことにうろたえるからダメなんだ」とシロさんの心の声が響くが、ここでの「こういうこと」はレストランで会食することを気にしてしまう自分の小ささにかかっている。

ちょっとお高い桃を6個も買うのはケンジのため イラスト/たけだあや
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