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「Webコミック」というものが出現してからかなりの時間がたちました。人気作品のスピンオフ、暴力的あるいは肌色的なデスゲーム、RPGライクな異世界転生、ゴール手前で永遠にイチャつき続ける青春ラブコメ……。
2020年現在、実に多くの出版社からそれぞれのマンガアプリがリリースされており、数多の作品が毎日更新され続けています。それは同時に無数の作品が生まれ、Webでバズり、またはバズらずに、消えていくことを意味します。1月8日にコミックスが発売された「マイ・ブロークン・マリコ」は、Webマンガのそのサイクルを、アクセル全開の最大瞬間風速で駆け抜けました。

「女性が読む青年誌」COMIC BRIDGE onlineにて全4話の短期集中連載、若干150ページにわたり炸裂し続ける感情。胸を鷲づかみにする爆弾のようなセリフをコマごとに勢いよくたたき込む鮮烈なエモーショナル。現在のWebコミックで主流となっている形態、ジャンルとしてもまったく「異色」といって差し支えないでしょう。本作は、またたく間にWeb上で話題になり、2020年1月現在、著者による第1話の更新告知は1万4000いいねを超える反響を巻き起こしています。
ガラの悪いOLである主人公・シイノはある日出先の定食屋のニュースで、先週遊んだばかりの幼なじみ「マリコ」の突然の自殺を知ることになります。出ていった母親、父からの壮絶な暴力と非情な環境にさらされていたマリコを、友人としてできる限り守っていたシイノ。彼女は学生時代と同じようにタバコをふかしながら、マリコのために「今からでもできることは何か」と考えます。そんななか、自分の中から自然に漏れでた言葉は「遺骨…」のひとことでした。

懐に刃物をたずさえ、彼女の実家にたどり着くシイノ。幼い日、マリコをボロボロに虐待し続けていた父親は4年前に再婚。おばさんを懐柔し言葉たくみに侵入したシイノは、父親がしんみりと仏壇に向かう姿を目にし激昂(げっこう)。遺骨をひっつかむと、震えながら彼に包丁をつきつけ、慟哭(どうこく)しながら「マリコ」の言葉を代弁します。言葉少なな少女であったマリコとは似ても似つかないシイノに娘の姿をダブらせた父親は、自失しながらも必死に遺骨を取り戻そうとします。
窓から飛び降り遺骨を奪取したシイノは「マリコ」に会えたように思いながら、そのマリコの遺骨を胸に、涙を流しながら走り出します。こうしてシイノの逃亡、いやマリコとシイノの短い旅が始まります。
本作のメインはなんといっても、既に死んでしまっている「マリコ」に向けられた、その空虚を取り戻そうとするシイノのすさまじい感情にあります。ギャグとシリアスの間を高速反復横飛びし続けるようなぶっ壊れたテンション、交互に描かれる現在と過去との間に徐々に明かされていくマリコの真実。「ポリ公呼ぶぞコラァ!!! ぼけオイ開けろ!!」「ブルっちゃいねえさ……こちとら懐にドスを飲んでんだ」乱打される言葉の弾丸に翻弄され、ふとページをめくる手が早まりはじめるところに、的確に撃ち込まれるシイノの胸のうちにある静寂。笑っていいのかいけないのか分からない絶妙なギャグが、のちのち行き場のない感情の塊となって読者に返ってきます。

本作の主人公はシイノであり、彼女の言葉と記憶を通してしかわれわれ読者は死んでいる「マリコ」がどのような人物なのかを知ることはできません。そのため第一話で描かれたマリコの情報は断片的で、あくまでも読者にとっては「悲劇の被害者」であるわけです。そして二話以降、彼女たちの過去が描かれていくにつれ、マリコがどのような人物だったのか、彼女がシイノについて、そしてシイノが彼女について、本当はどのように思っていたのか? シイノの畳み掛けるような独白がふたりの不器用な生き様を明かしていくにつれ、行間に隠されていた彼女たちの関係性もまた、単なる友情や親愛にとどまらない、その複雑さを深めていくことになります。

一人の女の人生を賭け、全てをなぎ倒しながらフルスピードで駆け抜けていくシイノ。その情動の行き着く先はどこなのか。是非見届けてください。
(将来の終わり)
『マイ・ブロークン・マリコ』第1話












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