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突然ですが「鉄道の線路幅」を意識したことはありますでしょうか。どれくらいのサイズかご存じでしょうか。日本では例えばJRの在来線が1067ミリ、新幹線は1435ミリなどと決められています。一般的に1067ミリは「狭軌」、1435ミリは「標準軌」と呼ばれます。

一方、日本の約45倍の領土を持つ「ロシア」の鉄道は日本の新幹線よりも広い1520ミリ。一般的に「広軌」と呼ばれます。
筆者は何度かロシアの鉄道に乗りましたが、機関車や客車も日本のものより段違いに大きく感じます。その線路幅のためか車内の揺れが少なく、寝台でぐっすりと眠れたりします。
ロシア以外で広軌を採用している国はウクライナやバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、ウズベキスタンなどの旧ソビエト連邦諸国とモンゴル、フィンランドです。モンゴルとフィンランドは歴史的にロシアと結び付きが強い国々です。


なぜロシアは広軌の1520ミリを採用したのでしょう。「戦争で1435ミリのヨーロッパ諸国から列車が侵入できないように、1520ミリを採用した」という文言を見かけますが、これは違います。
線路幅の決定は世界大戦よりも前、国内で鉄道敷設を計画していた19世紀にさかのぼります。当初、6フィート(1828ミリ)での鉄道敷設を計画し、ヨーロッパ諸国で採用されていた1435ミリは不採用という判断が下されました。
1435ミリが不採用となった理由としては、パワーがある蒸気機関車が走行するには線路幅が狭いと判断されたこと。また、線路幅を広げることによるさらなる速達性と安定走行の両立への期待がありました。
最終的には、コスト面の都合などにより6フィートから5フィート(1524ミリ)に。こうして1851年、モスクワ〜サンクトペテルブルク間の路線が開業しました。

開業当時、モスクワ〜サンクトペテルブルク間の線路をヨーロッパ方面とつなげる計画はなく、以降ロシアではモスクワ〜サンクトぺテルプルク間の路線と合わせて1524ミリで鉄道敷設が進められました。第二次世界大戦後に行われた規格の見直しにより、1524ミリから1520ミリに微変更され現在に至ります。
一方、第二次世界大戦前まで南半分が日本領であったサハリンは線路幅1067ミリで敷かれ、日本の気動車も活躍していました。2019年に1520ミリに改軌され、日本統治時代の名残がまた一つなくなりました。

このように「線路幅」にも意外といろいろなドラマや歴史があります。では、線路幅の違うヨーロッパ〜ロシア間の国際列車はどうやって走っているのでしょうね。そんな話も別の機会にしたいと思います。
新田浩之(にったひろし)
1987年神戸市生まれ。関西大学文学部卒、神戸大学大学院国際文化学研究科修了。主に鉄道と中欧、東欧、ロシアの旅行に関する記事を執筆。2018年からチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」を務める。


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