皆さんの家にあるクルマのほとんどは、フロントドアの付け根にミラーが付いている「ドアミラー」仕様だと思います。

自家用車ではドアミラー車が主流になって久しいですが、ある用途のクルマではフェンダーにミラーが付いている「フェンダーミラー」が使われ続けています。
それが「懐かしいね/昔はこうだった/親が乗っていたクルマがそうだった」などとと思うか、「ん、そういえばなぜこんな変な場所にあるの?」と思うかで年齢がバレてしまうかもしれませんが、それはさておき。

そのクルマの代表格は「タクシー」です。さまざまな車種を選択できる個人タクシーの車両は自家用車と同じドアミラー仕様のセダンが多い(しかも、たまに驚くほど豪華仕様だったりする)のですが、一般法人タクシーの車両はやはりフェンダーミラー車が多く使われています。
長い間生産され続けたタクシー用車種「クラウンコンフォート」はもちろんそう。古い車両で長く使われているからでしょ? いえいえ、そうとも言い切れません。2017年に登場した最新型の共通タクシー車両「JPN TAXI」(関連記事)もフェンダーミラー仕様です。
一体なぜ、一般自家用車では廃れてしまったフェンダーミラーがタクシーでは支持され続けているのでしょう?

フェンダーミラーは「後方確認がしやすい」 プロのための装備
タクシーがフェンダーミラーを採用する主な理由は3つ。「視線移動が少なくて済む」「乗客への配慮のため」「狭い路地を走りやすいため」です。
ドアミラーよりも前方、ボンネットの先端にあるフェンダーミラーは、相対的にドライバーの視線移動距離を少なくできます。例えば右ハンドル車で左のドアミラーを見るには、大抵の人は頭まで回さないとミラーに映る詳細を確認できません。しかしフェンダーミラーならば目線の移動のみで済みます。
これは後方確認をより行いやすく、長時間運転するドライバーの負担も軽減します。ひいては安全な運行につながります。助手席まで乗客を乗せたフル乗車時でも、乗客の座り方などによって安全確認に支障が出ることもありません。

さらに細かいところでは、知人のタクシードライバーによると「バックミラー越しに後席の乗客と目が合う」ことが減るのもメリットと聞きました。乗客とのコミュニケーションを避けたいのではなくむしろ逆、後席の乗客がドライバーの目線を気にせずリラックスして乗ってもらえることが大きいのだそうです。
地域の道を知り尽くして迅速に乗客を送り届ける使命があるタクシーにとって、「どこでも走れる」ことは重要。フェンダーミラー仕様ならば、わずかながら車幅を抑えられるので狭い路地を通るにも有利です。
プロフェッショナルとして「何より安全運行、正確な運転」そして「効率化」ため。デザイン性のために一般自家用車からは消えたフェンダーミラーは、デザインではない別のことを重視するタクシーやパトカーなどでは根強く残っているのです。



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