ソビエト連邦が崩壊して今年(2021年)で早30年。社会主義時代につくられたモノはレトロで、ときにブッ飛んでいることから、一定数のファン、マニアがいます。今回はソビエト連邦が作った「おぉぉ?」な高速電車を紹介します。

photo by Andrey Korchagin
まずは説明抜きで「高速電車ER(ЭР)200形」を見てください。どことなく「0系新幹線」に似ていませんか? 突き出たノーズ、すらりとスマートな白いボディーと青帯、高い位置の運転台。スカートが青だったらもっとソックリな印象が強まったはずです。

photo by Cheng-en Cheng
ER200形は1960年代後半から製造開発が始まり、完成したのは1970年代半ば。日本で0系新幹線がデビューしてから約10年後のことです。最高速度は時速200キロ、1編成14両。こんな仕様も新幹線と少し似ています。
車内は2列+2列のリクライニングシートが並び、エアコンと電熱ヒーターを備えた、当時としてはかなりのゴージャス仕様。先頭車にはビュッフェも設けられていました。しかしずいぶん窮屈だったとか。そのため車内販売の方が好評だったそうです。

ER200形は製造後すぐに定期列車には就かず、長らく試運転が続けられました。製造から約10年が経過した1984(昭和59)年にようやくモスクワ〜レニングラード(サンクトペテルブルク)間で定期列車としてデビューしました。
モスクワ〜レニングラードを約5時間、ノンストップで結んだ
当時のソ連鉄道時刻表を見ると、ER200形はモスクワ12時53分発、レニングラード17時52分着と記録があります。所要時間は約5時間、しかもノンストップでした。
モスクワとレニングラードは約650キロ離れているので、平均速度は時速約130キロ。「健闘」と表現していいでしょう。参考までに他の優等列車は同区間で約6時間かかっていたのですから。

しかしER200形を使った列車は週1便だけでした。
当時、ソビエト連邦は「停滞の時代」。ER200形を本格的に量産する余力はなかったのです。最終的に2編成生産しただけにとどまりました。それでもER200形はモスクワ〜サンクトペテルブルク間の特急に使われ続け、つい最近、2009年まで活躍しました。

2021年現在、モスクワ〜サンクトペテルブルク間にはドイツ製の高速電車「サプサン」(関連記事)が運行されています。これはこれで近代的で格好いいですが、あのような姿のロシア製高速電車をもう一度見たい! と思うのは筆者だけでしょうか。
新田浩之(にったひろし)
1987年神戸市生まれ。関西大学文学部卒、神戸大学大学院国際文化学研究科修了。主に鉄道と中欧、東欧、ロシアの旅行に関する記事を執筆。2018年からチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」を務める

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