国土がデカいから線路幅も広い? 日本は狭軌か標準軌、なぜロシアの鉄道はでかい「広軌」なのか

サハリンではかつて日本の狭軌な気動車も活躍していました。

» 2021年05月12日 19時00分 公開
[新田浩之ねとらぼ]

 突然ですが「鉄道の線路幅」を意識したことはありますでしょうか。どれくらいのサイズかご存じでしょうか。日本では例えばJRの在来線が1067ミリ、新幹線は1435ミリなどと決められています。一般的に1067ミリは「狭軌」、1435ミリは「標準軌」と呼ばれます。

photo モスクワ〜サンクトペテルブルク間を結ぶロシアの高速列車「サプサン」。こんなかっこいい列車も運行している。ロシア語で「ハヤブサ」を意味するそうで、「はやぶさ」が走る北海道・東北新幹線H5系好きもちょっと親近感(写真:新田浩之、以下同)
photo photo photo photo photo

 一方、日本の約45倍の領土を持つ「ロシア」の鉄道は日本の新幹線よりも広い1520ミリ。一般的に「広軌」と呼ばれます。

 筆者は何度かロシアの鉄道に乗りましたが、機関車や客車も日本のものより段違いに大きく感じます。その線路幅のためか車内の揺れが少なく、寝台でぐっすりと眠れたりします。

 ロシア以外で広軌を採用している国はウクライナやバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、ウズベキスタンなどの旧ソビエト連邦諸国とモンゴル、フィンランドです。モンゴルとフィンランドは歴史的にロシアと結び付きが強い国々です。

photo ロシアの鉄道は広軌の1520ミリを採用
photo ラトビアの線路幅も1520ミリ

 なぜロシアは広軌の1520ミリを採用したのでしょう。「戦争で1435ミリのヨーロッパ諸国から列車が侵入できないように、1520ミリを採用した」という文言を見かけますが、これは違います。

 線路幅の決定は世界大戦よりも前、国内で鉄道敷設を計画していた19世紀にさかのぼります。当初、6フィート(1828ミリ)での鉄道敷設を計画し、ヨーロッパ諸国で採用されていた1435ミリは不採用という判断が下されました。

 1435ミリが不採用となった理由としては、パワーがある蒸気機関車が走行するには線路幅が狭いと判断されたこと。また、線路幅を広げることによるさらなる速達性と安定走行の両立への期待がありました。

 最終的には、コスト面の都合などにより6フィートから5フィート(1524ミリ)に。こうして1851年、モスクワ〜サンクトペテルブルク間の路線が開業しました。

photo ロシアの蒸気機関車

 開業当時、モスクワ〜サンクトペテルブルク間の線路をヨーロッパ方面とつなげる計画はなく、以降ロシアではモスクワ〜サンクトぺテルプルク間の路線と合わせて1524ミリで鉄道敷設が進められました。第二次世界大戦後に行われた規格の見直しにより、1524ミリから1520ミリに微変更され現在に至ります。

 一方、第二次世界大戦前まで南半分が日本領であったサハリンは線路幅1067ミリで敷かれ、日本の気動車も活躍していました。2019年に1520ミリに改軌され、日本統治時代の名残がまた一つなくなりました。

photo (参考)日本の気動車はサハリンでも働いた (photo by Peter)

 このように「線路幅」にも意外といろいろなドラマや歴史があります。では、線路幅の違うヨーロッパ〜ロシア間の国際列車はどうやって走っているのでしょうね。そんな話も別の機会にしたいと思います。

新田浩之(にったひろし)

1987年神戸市生まれ。関西大学文学部卒、神戸大学大学院国際文化学研究科修了。主に鉄道と中欧、東欧、ロシアの旅行に関する記事を執筆。2018年からチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」を務める。




Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/22/news047.jpg 刺しゅう糸を20時間編んで、完成したのは…… ふんわり繊細な“芸術品”へ「ときめきやばい」「美しすぎる!」
  2. /nl/articles/2412/18/news207.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」【大谷翔平激動の2024年 現地では「プレー以外のふるまい」も話題に】
  3. /nl/articles/2412/21/news040.jpg 友達が描いた“すっぴんで麺啜ってる私の油絵"が1000万表示 普段とのギャップに「全力の悪意と全力の愛情を感じる」
  4. /nl/articles/2412/22/news034.jpg 後輩が入手した50円玉→よく見ると…… “衝撃価値”の不良品硬貨が1000万表示 「コインショップへ持っていけ!」
  5. /nl/articles/2412/21/news019.jpg 毛糸6色を使って、編んでいくと…… 初心者でも超簡単にできる“おしゃれアイテム”が「とっても可愛い」「どっぷりハマってしまいました」
  6. /nl/articles/2412/22/news036.jpg 「これは家宝級」 リサイクルショップで買った3000円家具→“まさかの企業”が作っていた「幻の品」で大仰天
  7. /nl/articles/2412/21/news023.jpg 「人のような寝方……」 “猫とは思えぬ姿”で和室に寝っ転がる姿が377万表示の人気 「見ろのヴィーナス」
  8. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  9. /nl/articles/2412/17/news042.jpg 山奥で数十年放置された“コケと泥だらけ”の水槽→丹念に掃除したら…… スッキリよみがえった姿に「いや〜凄い凄い」と210万再生
  10. /nl/articles/2412/22/news020.jpg 余りがちなクリアファイルをリメイクしたら…… 暮らしや旅先で必ず役に立つアイテムに大変身「目からウロコ」「使いやすそう!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」