“何も残せない私”を描いた漫画が、心にぐっさりと刺さります。歴史に残る何かができなくても……それでいいのだ。

私は“何も残せない人間”だと思う
主人公の優菜はごく普通の規則正しい生活を送っている会社員。しかしチーズを見ると思い出すことがあります。それは、大学時代に憧れていた先輩のこと。彼女はいつも酒を片手に持っているなど“だらしなさ”を象徴するような人物でしたが、“何者かになれる”オーラを持つ人なのでした。

優菜は滑り止めの大学に進学したため、敗北感を抱えていました。周囲は学力の低いばかなヤツという気持ちもあり、孤立してしまいます。そんなとき飲み会に誘ってくれたのが先輩でした。先輩は話がおもしろく“学力と関係ない才能がある”と優菜は感じていました。そして先輩の話を聞いているだけで自分も特別な存在になれている気がしました。

ある日、酔った先輩は「人間はチーズかもしれない」と言い出します。チーズはたいていお酒など他の食べ物と一緒に消費されます。そぎ落とされて、他のために身を滅ぼす存在だと言うのです。先輩は「そぎ落とされて食べられて、失われたあとも、何か残っているのが人間なの」と語ります。優菜は、ずっとこの言葉が忘れられずにいました。

何も残せない自分と、きっと何かを残せる先輩。一緒にいたときは自分も特別だと感じていたのに、卒業して会うことがなくなるとみじめに思うようになります。そんな先輩から8年ぶりに連絡があり、久しぶりに会うことになりました。しかし先輩は、何者にもなっていませんでした。普通の服装で、普通の会話をする先輩に優菜はショックを受けます。けれども心の内を聞くうちに、先輩も自分も「何も残せなくてもいいのだ……」と少し思えたのでした。
この作品のリプライ欄には、「切ないけどそれが良い。そう思わせてくれるマンガだと思った。好き。」「後味が強いタイプのチーズでした…好きです」「不思議と共感できる部分がありすぎてグサグサ胸に刺さりまくる漫画でした、大好きです」といった声が寄せられています。
漫画を投稿したのは四方井 ぬい(@yomoi__)さん。大学時代の先輩と大人になった先輩の描き分けが、実に見事です。自分の周囲にもこんな人いたなと感じる人もいるのではないでしょうか。
(高橋ホイコ)
作品提供:四方井 ぬい(@yomoi__)さん
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