INDEX
- 1.「Songwriter」 ピアノを叩き、存在の意義を叫ぶ
- 2.「永遠」 痛みは僕が引き受ける、究極のラブソング
- 3.「Oxxane-愛しのオクサーヌ-」 “近所の奥さん”想うギターロック、桜井和寿と歌い上げ
- 4.「REGIKOSTAR 〜レジ子スターの刺激〜」 めっちゃPerfume
- 5.「カサナルキセキ」 別々の2曲を1つに「合体」 秦基博との共作
- 6.「回奏パズル」 スキマスイッチの20曲以上を分解・再構成して1曲に
- 7.「よければ一緒に」 君を誘う優しいポップス
- 8.「エキストラ」 “KAN最後のラブソング”は、途方に暮れるような片思い
- まだまだまだまだあります! ダイジェスト動画も是非
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音楽家のKANさんが2023年11月12日、お空に旅立っていきました。
「『愛は勝つ』の一発屋でしょ?」。私を含むKANファンの多くは、こんな言葉に傷ついた経験があるかもしれません。1987年のデビューから36年。発表した楽曲はゆうに150を超えます。彼が遺した名曲が、「愛は勝つ」だけのはずがないのに。

私がファンになったのは「愛は勝つ」の7年後、1997年のシングル「Songwriter」からでした。流れるようなピアノの旋律に、苦悩する青年の心情を乗せたこの曲は、歌詞も曲調も「愛は勝つ」とあまりに違ってびっくりしました。
KANさんの作品は、1人でここまでできるのか! と驚くほどバリエーションが豊かです。悩んで考え抜かれた歌詞には、辛いときや迷った時……どんな気持ちにも寄り添う優しさと意思が込められています。ライブも面白すぎて(音楽面でも笑いでも)、夢中で追いかけました。
KANさんが旅立ってから、「『愛は勝つ』以外のおすすめの曲を教えてほしい」と言われる機会が増えましたが、すべてが名曲だからとっても難しい。アルバムにもシングルのB面にも、“捨て曲”がないんです。
でも今回はあえて、頑張って選んでみました。私はKANさんの歌詞世界とピアノ、J-POPコラボが好きなので、その観点から8曲をご紹介しますね。
1.「Songwriter」 ピアノを叩き、存在の意義を叫ぶ
一番好きな曲です。流れるようなピアノのアルペジオで始まり、ストリングスが絡んでどこまでも広がっていく音楽世界がキャッチーで切ない。詞では、行く手が見えない苦しみの中、ぐっと踏ん張り進んでいく強さが歌われています。
「転んでも 叫んでも 答えなどどこにもないのに」「I’m a songwriter ピアノをたたき 繰り返す表現のみが唯一存在の意義です」。KANさんが自分を追い込み、転んで叫んでたどりついた「存在の意義」。
この曲に出会った当時の筆者は19歳、浪人生の冬でした。第一志望の前期入試で不合格を確認した帰り道、この曲が入ったアルバム「TIGERSONGWRITER」を買い、繰り返し聞きました。何者でもなかった自分がさらに何者でもなくなった日。「生きる意味、存在の意義って何だろう」と泣きながら、ただずっと聞いていました。
2.「永遠」 痛みは僕が引き受ける、究極のラブソング
ゆったり優しいピアノが染み入る究極のラブソング。愛することのどうしようもない重みと深さを描いています。
「たとえば僕がちょっと痛がっていても少しの間だけむこう向いててください」「たとえば僕の存在が君の重荷になるなら その荷物も僕が持ちます」
ラブソングにありがちな「君が好きだから一緒にいたい」なんて言葉はエゴだと僕は思っている。僕は僕、君は君。隣にいられればうれしいけど、もしそれが君の人生を邪魔するならば、遠くからずっと思いを寄せている。永遠に、命尽きても、永遠に。
3.「Oxxane-愛しのオクサーヌ-」 “近所の奥さん”想うギターロック、桜井和寿と歌い上げ
辛い片思いの詞が多いKANさんですが、こちらは一転、超ライト。近所の奥さん(子持ち)への秘めた想いを軽快なギターに乗せて歌います。ポップでロックなメロディと下心丸出しのズッコケ歌詞にKANらしさが爆発。歌詞の内容は「実話」だそうです。
タイトルはポリスの名曲「Roxanne」のもじり。コーラスとギターには、KANさんをリスペクトするMr.Children桜井和寿さんが「キヌガサマコト」名義で参加しており、「おくさああああん!!!」と歌い上げます。
ライブで盛り上がる定番曲でもありました。曲中に「おっ○いバルーン」という巨大な丸い球体が客席に投げ入れられ、総立ちのファンが大玉転がしのようにタッチしまくる。コロナ禍以降、バルーンは姿を消してしまったけれど、もう一度触りたかったな。
4.「REGIKOSTAR 〜レジ子スターの刺激〜」 めっちゃPerfume
タイトルは「ラジオ・スターの悲劇」(バグルス/1979年)のもじりですが、楽曲はきわめてPerfumeっぽいガーリッシュテクノポップ。KANさんが心から尊敬していた中田ヤスタカさんの楽曲を分析・再構築した曲調に、「近所のスーパーのレジで働いている君に一目惚れ」という歌詞を載せ、楽しく切ない作品に仕上がっています。
この曲についてKANさんは、「企画ものでもなんでもなく、今私が最もやりたいことをハッキリ提示するという意味も含めてアルバム1曲目に入れた」とのことです。ご本人が、「納得度の高い曲」によく挙げられていました。
歌詞の内容はこれまた実話。後日、レジの彼女は同じスーパーの鮮魚担当と結婚していたことが判明したんだとか。片思いの多い人生です。
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