1月28日、仏ルーブル美術館で2人の女性がレオナルド・ダ・ヴィンチの名画「モナリザ」にスープをかけるという行動を起こしました。2人が所属する、気候変動や持続可能な農業、地産地消などを訴える活動団体「Riposte Alimentaire」は、全ての人が持続的に食物を手にするための保障制度を望んでのことだとコメントを出しています。

モナリザには被害なし
現在のルーブル美術館では、「モナリザ」から数メートル離れた位置にパーテーションが設置され、来館者はその位置から同作を鑑賞するようになっています。さらにパーテーションを超えた先には「モナリザ」をぐるりと取り囲む木製の手すりも存在し、同作が展示されている壁の下部にはカウンターテーブルのような分厚い板も取り付けられているという徹底ぶり。警備の目を盗んで直接手を触れることは困難な状態です。
今回標的になった「モナリザ」
活動団体がSNSに今回投稿した動画では、おとなしく絵画を鑑賞しているように見えた2人の女性が突然パーテーションをくぐり抜け、木製の手すり越しに缶入りのスープを「モナリザ」へ思い切りかける様子が捉えられています。
周囲の人々があ然とする中、2人は木製の手すりも越えて、上着を脱いで団体名の書かれたシャツをのぞかせながら主張を開始。ルーブルの職員らが活動家ごと「モナリザ」を来館者から隠すように黒いしきりを立てかけ始めるところまでが撮影されています。
スープですが、「モナリザ」の顔が隠れるほどべったりとかけられ、周囲の壁にも大きく広がっているのが確認できます。
しかし幸いにも、同作自体がガラスで守られており、ルーブル側はすぐに汚れを落とす作業を開始するとともに、作品は無事であると表明。また同日、パリ検察庁は女性2人を登録有形文化財破損により逮捕し勾留中だとしています。

スライド2枚目は活動家が飛び出しスープをかける動画
活動家の直接行動に賛否「感動した」「愚かな矛盾」
活動団体はスープ投げつけの行動について、「非暴力的な行動を通じ、持続的な食物の社会保障制度導入」を訴えたものだと主張。フランス人の3人に1人は満足な食事がとれていないとして、全ての人が食物に困らないよう毎月150ユーロ(約2万4000円)を保障し、民主的に選定された特定の食物を購入できるようにすべきであると述べています。
この主張に対し、同団体の活動に賛同する人からは「よくやった」「感動した。勇気をありがとう」「市民による不服従の力が物事を動かすんだよ」など勇気ある行為であるとするコメントが。
しかし多くの人からは、「えっ、食糧難を訴えて、スープを無駄にしたってこと?」「厳密には食べ物を無駄にしてるんだよね。困ってる誰かを助けられたかもしれない、環境資源を使った食べ物。愚かな矛盾に満ちている」「芸術を攻撃することでしか抗議できないとは」など、彼らが訴えていることと行動にはあまりに大きな矛盾があるとして、あきれや怒りを示すコメントが殺到しています。
世界中で広がる絵画襲撃の動き
ここ数年、活動家が名画にスープやペンキをかけるといった方法で主張を広めようとする事件が相次いでおり、ゴッホの「ひまわり」やフェルメールの「真珠の首飾りの少女」、モネの「ジヴェルニーのモネの庭」なども被害に。
こうした事件の中には塗料などをかけた後、作品の上に手を置くといった行動に出るケースもみられたものの、現在の「モナリザ」は容易に近づけない状態で展示されているため、大きな被害と混乱は免れたようです。
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