災害への備えが叫ばれる昨今、電気やガスを使わずに新聞紙を燃料にごはんを炊ける、タイガー魔法瓶の「魔法のかまどごはん」が好評を博しています。発売から約4カ月で年間目標数の196%を達成したという、注目の商品が生まれた経緯を聞きました。

「魔法のかまどごはん」は、なべとかまどの機能をコンパクトにまとめた製品。下部へ新聞紙を定期的に入れては燃やすことで、簡単にごはんが炊けるといいます。必要な新聞紙は、3合あたり36ページ。白米は1合から5合、炊き込みごはんなら3合まで炊飯できます。


企画は社内公募制度で採用されたアイデアをもとに、同社の創業および、関東大震災発生から100年の節目を迎える2023年に向けて進行。被災者への聞き取り調査を行うなどして、被災時に必要とされる製品を目指して開発されたといいます。


完成した「魔法のかまどごはん KMD-A型」は、「防災の日」が翌日に控える2023年8月31日に発表。5日間で1000件を超える予約が入る人気となりました。同年10月の発売から約1カ月で年間目標数を上回り、増産をかけた2024年2月14日時点で、通算5900件を超える受注が入っているといいます。
この反響を受けて、アウトドア施設や公共団体向けのBtoBモデル「魔法のかまどごはん KMD-B101」も4月22日に発売されます。編集部はタイガー魔法瓶を取材し、開発にかける思いや今後の展開など、詳しい話を聞きました。


「いつでも温かく、おいしいごはんを届ける」が使命
―― 100周年記念モデルとして、防災を意識した製品を出した経緯を教えてください
タイガー魔法瓶 タイガー魔法瓶は、炊飯器に「炊きたて」のブランドネームをつけていますが、「いつも温かいごはんを食べてほしい」という思いが常にあります。アウトドアではもちろんのことですが、例えばもしものとき、電気やガスが使えない状態であっても、温かくておいしいごはんを食べてもらいたい、と考えています。
また、創業年の1923年は、史上最大の地震災害として記録に残る関東大震災が発生した年であり、くしくもその関東大震災で商店に保管されていた「虎印魔法瓶」100本すべてが無傷で残ったとして、当社製品が注目を集めた年でもありました。祖業である魔法瓶は、創業者の「母親がいれてくれたような温かいお茶が飲みたい」という思いから生まれ、それ以後家庭に「温もり」と「幸せなだんらん」を届けるべくさまざまな製品を世に送り出してきました。100年の時を経て「いつでも温かく、おいしいごはん」を届けることは使命のように感じています。
―― 開発に当たり、「被災者のかたへの聞き取り調査を行った」とのことですが、調査でどのような意見が出て、この製品に至ったのでしょうか
タイガー魔法瓶 「魔法のかまどごはん」の開発に当たり、社員や社員の家族で過去に実際に被災されたかたひとりひとりにインタビューを行いました。被災状況はさまざまですが、「食事が唯一の楽しみだった」「温かいものを食べたときは心がほっとした」という声がありました。やはり「温かい食事、温かいごはん」に対しての重要さを再認識しました。
―― ごはんをおいしく炊くためにどのような工夫をされていますか
タイガー魔法瓶 電気やガスを使わないのが最大の特徴で、新聞紙1部(3合なら36ページ分)さえあれば「炊きたて」のごはんを炊くことができます。かまど下部の2つの穴に交互に新聞紙を入れ、火をつけます。その繰り返しによって、「はじめチョロチョロ、なかパッパ」のおいしい火かげんを再現し、慣れれば簡単に炊くことができます。
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