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読者の皆様、いかがお過ごしでしょうか。僕は今、冬の浜名湖の上で凍え死にそうになりながら、時速70キロ以上で爆走するボートから落っこちそうになってます。上下にバッコンバッコン揺れる船体。容赦なく吹き付ける真冬の風。そして目の前では、めちゃくちゃでかい船外機2機が唸りをあげております。マジで船から落ちそう。死ぬかも。
……うそです。浜名湖からは帰ってきて、家でこの原稿を書いています。が、寒風吹き荒ぶ浜名湖で「死ぬかも……」と思ったのはマジ。「大袈裟かよ」と思うかもしれませんが、吹きっさらしの船の上で時速70キロ、しかも冬の湖上というのは、海のない岐阜県出身の自分には結構ハード。おまけに、そのくらいの速度で波が立っている水面を激走すると、波の一段一段がほとんど固体みたいな硬さになって船体にぶつかるため、洗濯板の上を70キロでかっとばしている感じになります。本当に振り落とされて浜名湖に落ちて、ウナギの餌になるかと思った。おれは泳げないんだよ〜!

生きて帰ってまいりました。寒かったしすごかった。語彙力死んでます

エンジン2機がけ。合計16気筒の700馬力!

こちらがBF350。シュッとしててかっこいい
そしてこの激烈な速度を生み出していたのが、ホンダの船外機としては最大最強を誇るモンスターマシン、BF350。V8エンジンを搭載し、350馬力を叩き出すという、ホンダ製船外機のフラッグシップモデルです。V8といえば『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でウォーボーイズが拝んでたやつとしておなじみ。8つの気筒(燃料が送り込まれて爆発する、エンジン内の筒状の部位のこと)を4つずつV字型に配置したスタイルのエンジンで、「でっかくてハイパワー」なことが最大の特徴です。ちなみに、一般的な乗用車が積んでいるエンジンの馬力は50馬力から、大きくても300馬力くらいに収まるそうです。350馬力というのが、いかにドカ盛りな数字であることがお分かりいただけますでしょうか。そりゃ浜名湖も洗濯板みたいになるって。
しかし、この記事はなんでいきなり船外機の話を始めたのか。というのも、これがそもそも「船外機のプラモ」の取材だからでして……。
「乗れば船外機がプラモになった理由が分かる」と言われ、冬の浜名湖へ……!
遡ること数カ月。ことの発端は、2024年10月に開催された第62回全日本模型ホビーショーでした。新しいプラモデルがたくさん発表されたこのイベントで一際目立っていたのが、マックスファクトリーの「minimum factory みのり with ホンダ船外機 BF350」。会場には実物のBF350がドーンと置かれ、場を圧倒していたのです。

こちらが発表されたBF350のプラモ。なんで船外機がプラモに……?

実物のBF350もドーンと展示。でかいな〜
これまでにも耕運機や除雪機など、ホンダのパワープロダクツ部門の製品をプラモデル化してきたマックスファクトリー。耕運機のプラモについては、ねとらぼでも過去に取材しております。しかし、用途や絵面が分かりやすい耕運機や除雪車と比べると、船外機、しかも船体抜きで船外機のみのプラモデルという製品内容はいささか攻めているように思います。
ちょうどそのホビーショーにいたのが、耕運機のキットの時に取材したパワープロダクツ事業統括部の中島茂弘さん、そしてマックスファクトリーの高久裕輝さん。その場で「なんでこんなプラモを作ったんですか?」「船外機だけのプラモってどういうこと?」と聞いたところ、「乗れば分かる」「現物を見た方が早い」「説明はその後でする」「ぜひ細江の船外機工場に来てください」とお二人から口々に言われ、そうまで言うなら行ってみるか……と、ねとらぼ編集部のOKをもらい、真冬の浜松を訪ねたわけです。

ここが本田技研工業 細江船外機工場なのだ

こちらが実際に船外機を組み立てている工場。これ一棟でホンダの船外機全種を作っていると思うと、意外に小さい

工場施設は浜名湖に隣接。実際に船外機をつけて試験走行をしたりするので、船を懸架できるクレーンや桟橋なども整ってます

工場内では組み立て中のエンジンを取り付けた台が回転寿司のように回っており、ちょっとずつ前進するエンジンに工員の皆さんが少しずつ部品を取り付けていきます。ちなみにこちらはBF350とは別のエンジン。BF350の組み立てラインは別になっています

ラインが進むにつれて船外機が完成していき……

水槽を使った試験工程を経て……

隣の部屋で組み立て用の台から取り外されて……

そのまま梱包して出荷! 工場直送!
ということで話は冒頭に戻るのですが、実際に乗るとBF350がいかにとんでもないパワーで船を走らせるエンジンなのか、骨身に染みてよく分かりました。とにかくパワフル。あんな加速で水上を移動する乗り物、初めて乗りました。速い、デカい、エンジンがV8ということで、これはまさにスーパーマシン。
しかし、それだけでは「船外機」というメカのヤバさと面白さを理解したとはいえない様子。ということで、細江船外機工場の中も見せてもらいつつ、パワープロダクツ事業統括部 マリン事業部部長の福田蔵磨さんに、「船外機とはいったいどのようなメカなのか」を聞かせてもらいました。
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