プラモデルになるまでも、紆余曲折の連続でした。
INDEX
「プラモにしてください!」と直訴したマリン事業部が全面協力
──具体的に設計に協力したのは、ホンダのどの部署だったんでしょうか?
中島 マリン事業部と細江船外機工場、あと朝霞にあるマリン事業部の研究所が協力してます。
高久 そういったご協力もあって、非常に実物に近い、正確なものができたと思います。
中島 これだけマリン事業部が協力的だったのは理由がありまして。というのも、今まで出たのが耕運機と除雪機でしょ。このふたつはホンダのパワープロダクツの60年以上の歴史において、初めて出たプラモデルなんですよ。第一弾の耕運機では「へえ〜」「出るんだ〜」くらいの感じだったけど、二弾目の除雪機となると「また出たの!?」という驚きもありまして。
──1回だけじゃなかった、ということになりますもんね。
中島 そうなってくると社内的にもけっこう「すごいじゃん」という感じになってくるんですよね。それで、ある時高久さんから僕の方に電話がかかってきたんですよ。「中島さん、ちょっとお聞きしたいんですけど、ホンダのマリン事業部の人から電話がかかってきて」と。まだBF250をやろうかなって言ってた頃の話ですが。
──いきなり直でですか。
中島 そうそう。「こうこうこういう人から電話が」っていうから、「いいよ、引き取るよ」って。それでマリン事業部に連絡して「事業企画の中島ですけど。あの、マックスファクトリーさんに電話した?」って聞いたら、「しました……」と。「船外機のプラモ作ってくれって言った?」「言いました……」「あのさあ、あんまり大きな声じゃ言えないけど、今やってるのよ」「え! もうやってるんですか! わかりました!」って(笑)。
──なんと。マリン事業部からプラモ化を直訴されていたとは。
中島 今までパワープロダクツの製品って全然プラモになってなかったから、社内的にはそのくらい盛り上がっちゃってたんですよ(笑)。だからもう、船外機がプラモになるならということで、マリン事業部は全面協力です。
高久 そういう感じでご協力いただいたんで、今回は前の2ネタに比べると設計はずっと早く終わりました。なんせフラッグシップマシンなので素材がたくさんあるし、外形を追うのはそんなに時間かからなかったです。ただ、エンジンを中に詰めるのが大変で。
──中身が詰まってるというのは、このキット最大の見せ場ですもんね。

カバー内にギッチギチにエンジンが詰まっているBF350。余裕はほとんどありません
高久 エンジンのサイズをできるだけ縮めず、カバーの中にパツパツに入ってる感じを出さないと、実物の雰囲気が出ないんです。でも、タイトすぎてなかなか閉まらないし、さらに誰が作っても閉められるようにしないといけない。4月にはほとんど図面ができてたんですが、そこからちゃんとカバーが閉じる試作品が出てくるのに11月までかかりました。
中島 監修しようと思って待ってるけど、全然物ができてこない。そもそも、僕は船外機の外形を再現したものを作るんだと思ってたんですよ。なのに高久さんが「エンジンを作ってカバーの中に入れて、という工程を踏むことで、船外機というものの構造を理解できるキットにしたい」と言い出したから「そこまでやるの?」となったんです。
高久 今までは耕運機とか除雪機とか、フィギュアと一緒にポンとおけば情景が浮かんでくるような題材でした。けど、今回は「大型でタフなエンジンが入ってる、超単純でパワフルでラグジュアリーなメカ」という船外機自体の面白さにフォーカスしたキットです。だから「これがV8エンジンです」「この巨大なエンジンがケースの中にミチミチに入ってます」というのがわからないと面白くない。メカ自体の面白みに注目しているという点では、ある意味今までで一番プラモデルらしいモチーフだし、モデラー向けかもしれないです。
──スーパーパワーを秘めたものがプラモになってると、無条件でうれしくなりますもんね。
高久 そういう部族ですからね、モデラーは(笑)。