ねとらぼ

プラモデルになるまでも、紆余曲折の連続でした。

「エンジン屋」本田技研のコア、入魂のV8が詰められたプラモデル

中島 僕はプラモデルを作らないから全然わからないけど、そういうことがマックスファクトリーさんのお客さんには大事なんだろうということが過去の2回でわかってたから、それなら今回はマリン事業部と研究所の協力が必要だろうと。

高久 戦車にしろ飛行機にしろクルマにしろ、エンジン自体にエピソードがあるようなマシンには当然のように「エンジンまで再現しました」というプラモデルがたくさんあります。だから、こちらとしては「船外機の中身を作る」というのはそんなに不思議なことをやっているつもりもなかったし、メカとして面白いポイントを再現しているだけだったんですが、そこが実物を作っているメーカーさんに驚かれるポイントになる……というのは面白かったですね。

中島 でも監修の時にこれを見せてもらって、「ああ、組ませるというのはこういうことか」って初めて僕も理解できたんです。言ってることは正しいんだろうからいろいろと協力しないと、と思ってやってきましたが、具体的に「中身のエンジンを組ませる」というのはどういうことなのか、そこでようやく理解できたんです。

エンジンを取り外したところ。まわりの部品もほぼ実物通りの分割となっており、組み立てるだけで船外機の面白さが理解できます

高久 でも、「本田技研というのはエンジン屋である」というのは、みんな叩き込まれるわけじゃないですか。

中島 そうそう。僕が入社した時は二輪に配属されたんだけど、その状態で「ホンダは二輪メーカーです」って言ったらめちゃくちゃ上司から怒られるんですよ。「俺らはエンジンメーカーなんだ!」っていう。

高久 だからというわけでもないですが、「エンジンがあってシャフトがあって、ギアがあってスクリューが回る」という、船外機のシンプルな構造はプラモでもわかるようになってます。とにかく実物の船外機が持っているタフな魅力や、「そんなことある!?」って言いたくなるような構造は伝わるように作ったんで、プラモデルを作りながらそこを感じ取ってもらえると嬉しいですね。

中島 もう、このプラモデルの影響で広報用の素材も追加しましたから。

──どういうことですか?

中島 監修でカバーを取った状態を見せてもらってから、BF350の試乗会をやったんですよ。その時に「あれ? 広報用のカットでエンジンそのものを見せてる写真ってあったっけ?」と思って、担当者に聞いたら「ない」っていうんですよ。そりゃいかんと思って、カメラマン連れてもう1回細江まで来て、バシバシ撮って宣材に加えました。

高久 そういえば、最初に見せてもらった資料にも、エンジンだけの写真ってなかったですね……。

中島 我々はエンジン屋で、しかもホンダ初のV8なのにね(笑)。ちゃんと8気筒写ってないとダメじゃないですか。そこはもう、プラモデルに教えられました。

──いやほんと、聞けば聞くほど、今まで船外機のちゃんとしたスケールモデルがほとんど存在していなかったのが不思議になってきましたし、「ホンダのV8エンジン」がプラモデルになったことの意義がよくわかりました。ありがとうございました!

カラーバリエーションも今後展開されるかも……?


 船外機プラモに詰め込まれたこだわり、おわかりいただけましたでしょうか。実際にハイパワーな船外機を搭載したボートに乗り、そしてその仕組みを(ちょっとだけ)知った上でプラモデル化の経緯を聞くと、「なんで船外機をプラモデルにしたのか」という疑問が解けたように思います。

 というわけで、「minimum factory みのり with ホンダ船外機 BF350」は1月下旬に発売予定。船外機という特殊すぎるメカに興味が湧いてきたぞ……中身がどうなってるか気になるぞ……という人は、プラモ屋さんに足を向けてみてもいいかもしれません。エンジン屋と模型メーカーがタッグを組んだ前代未聞のキットを、ちょっと味見してみるのも一興ですよ!

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